本当の悪魔は、竜王ではなく王様だった【SUNmaruのゲーム解説「ドラゴンクエスト1」】
はじめに
子どもの頃に夢中になったゲームも、大人になってから振り返ると、まったく違う物語に見えることがあります。
当時は疑問にも思わなかった登場人物の行動に、
「いや、これ普通におかしくない?」
と気づくこともある。
そこには、仕事や組織、人間関係にもつながる学びが隠れているのかもしれません。
そこで今回から、過去の名作ゲームを現代の視点で勝手に読み解く、「SUNmaruのゲーム解説シリーズ」を始めます。
第1回は『ドラゴンクエスト』、通称ドラクエ1です。
悪の象徴といえば竜王ですが、大人になった今、改めて考えると疑問が浮かびます。
本当に恐ろしかったのは、竜王だったのでしょうか。
もしかすると、本当の悪魔は、最初に会った王様だったのかもしれません。
※作品を仕事や組織に重ねた、個人的かつ少しふざけた読み解きです。
目次
ドラクエ1はどんな物語なのか
世界を救うのに、なぜ一人なのか
味方は来ないのに、敵は一対一
王様は命令し、竜王は交渉した
「任せる」と「孤立させる」は違う
本当の悪魔はどこにいるのか
ドラクエ1はどんな物語なのか
物語の舞台は、アレフガルドという世界。
世界は竜王によって脅かされ、ラダトームのローラ姫もさらわれてしまいます。
そこへ現れたのが、伝説の勇者ロトの血を引く主人公。
主人公は王様から、竜王を倒し、世界に平和を取り戻すことを期待されます。
そして、たった一人で冒険へ旅立ちます。
子どもの頃の僕は、何の疑問も持ちませんでした。
勇者なのだから、一人で戦うのは当然。
王様は正義。
竜王は悪。
そういうものだと思っていました。
しかし、現代の仕事に置き換えると、王様の対応はかなり理不尽です。
世界を救うのに、なぜ一人なのか
王様は、一人の若者に世界の命運を託します。
ところが、仲間は用意されません。
城には兵士が何人もいるのに、誰一人として、
「私も一緒に行きます」
とは言いません。
世界が滅びそうな緊急事態なのに、勇者だけが外へ送り出されます。
もしかすると王様から、
「これは勇者の仕事だから、誰も手を貸してはならぬ」
という指示が出ていたのでしょうか。
もしそうなら、育成ではありません。
完全な丸投げです。
しかも、強力な武器や防具を支給してくれるわけでもありません。
必要な装備は自分で購入。
宿屋代も自己負担。
移動手段もなく、世界を徒歩で移動します。
現代の職場で例えるなら、
「この世界規模のプロジェクトを一人で成功させてほしい。必要なパソコン、交通費、宿泊費は自分で用意してくれ」
と言われているようなものです。
それでも勇者が世界を救えたから、王様の判断は正しかったように見えます。
しかし、それは勇者が異常なほど頑張ったからです。
誰かの過剰な努力によって成立している組織は、その人が成功している間だけ、問題が見えなくなります。
味方は来ないのに、敵は一対一
さらに不思議なのが、敵側の対応です。
スライムも一匹。
ドラキーも一匹。
ゴーレムも一体。
最後に待つ竜王も、基本的には一対一で勇者と戦います。
勇者が一人だから、敵も一人で出てくる。
大勢で囲んだり、後ろから襲ったり、仲間を何十体も呼んだりしません。
もちろん、ゲームの仕組みと言ってしまえばそれまでです。
ただ、現代の視点で読み解くと、敵側には敵側なりの礼儀があるようにも見えます。
勇者の味方であるはずの人々は、誰も隣に立ってくれない。
しかし、倒すべき敵は、一人ずつ正面から向き合ってくれる。
敵は一対一で向き合ってくれた。
味方は誰一人、隣に立ってくれなかった。
ここまでくると、どちらが誠実なのか分からなくなってきます。
王様は命令し、竜王は交渉した
さらに竜王は、最後の戦いの前に勇者へ取引を持ちかけます。
自分の味方になれば、世界の半分を与えるという提案です。
もちろん、怪しい。
信用していい相手ではありません。
世界の半分といっても、どちら側をもらえるのか分かりません。
海ばかりの地域を渡されたら困ります。
それでも、竜王は条件を提示しました。
そして、勇者に選ばせようとしました。
一方の王様は、
「世界を救いに行くか?」
とは聞きません。
「どんな支援が必要だ?」
とも聞きません。
王様は命令する。
竜王は交渉する。
王様は責任を渡す。
竜王は条件を提示する。
正義と悪という立場を外して対応だけを見ると、竜王のほうが取引先の事情を考えてくれるクライアントに見えてしまいます。
竜王が善人だと言いたいわけではありません。
世界を脅かしている以上、倒すべき敵です。
ただ、敵である竜王のほうが、王様よりも正面から勇者と向き合っていたようにも見えるのです。
「任せる」と「孤立させる」は違う
仕事やスポーツの現場でも、
「成長してほしいから任せる」
ということがあります。
自分で考え、判断し、行動する経験は、人を成長させます。
しかし、任せることと孤立させることは違います。
本当に任せるのであれば、
目的を共有する。
必要な情報を渡す。
権限や資源を用意する。
困った時に相談できる場所をつくる。
そして、失敗した時には上司も責任を引き受ける。
そこまであって初めて「任せた」と言えるのだと思います。
ところが、理不尽な上司は、
「君ならできる」
「成長のためだ」
「期待しているぞ」
と耳触りのよい言葉を使いながら、支援も権限も与えません。
成功すれば自分の判断を誇り、失敗すれば任せた相手の力不足にする。
それは信頼ではありません。
期待という言葉で包んだ、責任の丸投げです。
本当の悪魔はどこにいるのか
私たちは、肩書きで相手を判断してしまうことがあります。
王様だから正しい。
勇者だから立派。
竜王だから悪い。
しかし、人や組織の本質は、肩書きではなく、相手をどう扱ったかに表れます。
必要な支援を渡したか。
本人の意思を確認したか。
選択肢を残したか。
失敗した時の責任を、一緒に背負う覚悟があったか。
本当の悪魔は、角や翼を持って現れるとは限りません。
立派な服を着て玉座に座り、必要な支援もせずに大きな仕事を押しつけながら、
「期待しているぞ」
と笑っているのかもしれません。
子どもの頃の僕は、王様の命令に疑問を持たず、一人で城を出ました。
でも、大人になった今なら、王様に一つだけ聞きたい。
「城にいた兵士たちは、その間ずっと何をしていたのですか?」
勇者が命懸けで旅をしている間も、彼らは同じ場所に立ち続けていました。
悪の竜王は、勇者と一対一で戦った。
正義の王様は、勇者を一人で戦わせた。
竜王は条件を提示した。
王様は命令だけを与えた。
本当の悪魔は、竜王ではなかった。
もしかすると、最初に訪れた城の玉座で、ずっとこちらを待っていたのかもしれません。
ちなみに今の僕なら、竜王から、
「わしの味方になれば、世界の半分をやろう」
と言われても、すぐには返事をしません。
まず確認します。
「その世界の半分、所有権は僕にありますか?」
なぜなら、せっかく世界の半分をもらっても、報告のために城へ戻った瞬間、
「勇者よ、その土地は国のために使う」
と、ブラック上司の王様に全部持っていかれそうだからです。
考えてみれば、竜王は条件を提示してくれました。
戦う時も一対一。
王様よりも、よほど誠意があります。
時代によっては、勇者は竜王を倒すのではなく、
株式会社竜王へ転職していたかもしれません。

最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この【SUNmaruのゲーム解説】では、子どもの頃に遊んだ懐かしいゲームを、仕事や組織、人間関係などの現代的な視点から、少し笑いを交えながら読み解いていきます。
当時は疑問に思わなかったことも、大人になって振り返ると、まったく違う景色が見えてくるかもしれません。
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