The Indicator 解説:米消費者の怒りと苦情が過去最高に──大学調査・企業利益・規制の行方
昨年実施された消費者調査によると、製品やサービスに問題を経験した消費者の3分の2が「怒り」を感じたと回答しました。この調査を手がけたのが、企業の顧客対応を支援するCustomer Care Measurement and ConsultingのCEO、Scott Broetzmann氏です。Broetzmann氏が率いる会社は約25年にわたり顧客の声を企業に届ける仕事をしてきましたが、自身もまた、タキシードレンタル会社との誤請求をめぐり1カ月以上も解決しない状況に苛立ちを募らせているといいます。
ミシガン大学の顧客満足度調査が捉えた異変
ミシガン大学のAmerican Customer Satisfaction Indexのリサーチディレクターエメリタス、Forrest Morgeson氏は、約45の消費者向け産業を対象に30年以上にわたって消費者の満足度を追跡してきた調査の最新結果を説明しました。今週発表された報告書では、顧客満足度が2年連続で低下しただけでなく、消費者が企業に直接問題を訴える苦情件数が調査開始以来の最高水準に達したことが明らかになりました。わざわざ労力をかけて企業に連絡する消費者の苦情が記録的な水準に達していることは、深刻な兆候だとMorgeson氏は指摘します。
消費者の変化と製品・サービスの複雑化
同じ調査では、過去1年間に製品やサービスで問題を経験した消費者の割合が77%に達し、50年前の同様の調査と比べて倍以上になっています。もっともBroetzmann氏は、この数字は消費者が以前より短気になったことや製品の品質が絶対的に悪化したことを示すわけではなく、消費習慣そのものが変化した結果だと分析します。第一に、スマートフォンから自動給餌器に至るまで、現代の多くの製品にはマイクロチップやセンサーが搭載され、故障してもガムテープで応急処置できるような単純な構造ではなくなりました。消費者が使い方を理解できず、適切なサポートも得られないケースが増えています。第二に、支出がモノからサービスへとシフトしており、フードデリバリーのDoorDashやオンデマンドの犬の散歩代行など、数十年前には存在しなかったサービスが一般化しました。サービスの品質や提供者の態度など、問題が発生する余地が物理的な製品よりも格段に広がっているのです。
企業の利益優先が消費者を追い詰める
Morgeson氏は、マクロ環境の変化だけでなく、企業側の「利益重視の姿勢」も消費者の不満を増幅させていると指摘します。実際に数字を見ると、パンデミック前には国民所得に占める企業利益の割合は約13%でしたが、現在は約17%と過去最高を記録しています。利益の最大化を最優先にする企業は、顧客満足のために必要な投資を惜しみ、隠れた手数料を課したり、複雑なカスタマーサービスを強いり、少ない提供内容で高い料金を取る、いわゆる「スキムフレーション(skimpflation)」に走りがちです。航空業界からエンターテインメント業界まで主要産業の寡占化が進み消費者の選択肢が狭まっていることも、不満に拍車をかけています。
規制の後退と州レベルでの動き
英Guardian紙で消費者権利を担当するHeather Timmons氏は、アメリカ政府が大企業への規制強化にもっと関与できるはずだと主張します。しかし、トランプ大統領の2期目の間に食品医薬品局(FDA)や消費者金融保護局(CFPB)などで数百人規模の人員削減が行われ、連邦政府の監督機能は低下しました。連邦取引委員会(FTC)はFacebook上の詐欺やStubHub、Instacartの問題に取り組んでいるものの、大企業やロビー団体に対抗するには組織として不十分だとTimmons氏は指摘します。一方で、州や地方政府のレベルでは新たな消費者保護策が生まれつつあります。ニューヨーク市はいわゆる「ジャンクフィー(不当手数料)」の広範な禁止を提案し、サブスクリプションを容易に解約できる「クリック・トゥ・キャンセル」ルールも導入しました。カリフォルニア州でも同様の動きがあり、両州の経済規模と消費者人口の大きさから、企業はこうした規制を無視できなくなっていると説明します。
求められる消費者目線のジャーナリズム
Timmons氏はまた、日常の消費者問題に目を向けるメディアの役割が縮小していることを憂慮しています。かつては地元テレビ局の「消費者を守る」といったコーナーや地方紙の調査報道が一般的でしたが、地方紙の衰退とともにそうした報道は激減しました。Consumer ReportsやProPublicaのような非営利団体、ソーシャルメディア上で活動する市民ジャーナリストが一部で重要な役割を果たしているものの、まだ十分とは言えません。Timmons氏は例として、ジョージア州のWalmart店舗で肉の量り売り重量を検証し、ほぼすべてがわずかに規定量を下回っていることを発見した男性の活動を紹介し、「本来は、企業が顧客をどう扱っているかに焦点を当てた報道メディアの役割を取り戻すべき時だ」と強調しました。
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