鳴らせ!豚鼻
「豚鼻って、どうやって鳴らすの?」
「いびきをかく感じでさ。がぁ〜って感じ」
「いや、口を閉じた方がやりやすいかも」
「わかった、やってみる!」
山田と佐藤のアドバイスを、そのまま実践する理美。
素直というか、恥じらいがないというか。
ふがっ、ぐがっ、ふぐっ、ぶひぃ〜
「うまいぞ、理美!」
「指で鼻を押して、豚さんになるんだ!」
「ちょっと、茶化さないでよ」
彼らは豚鼻をどう鳴らすのかを研究していた。
平時にはくだらないことが、有事には生死にかかわることもある。
理美は練習の成果もあって、みるみる上達していった。
私は彼らのように上手に鳴らせなかった。
平静に戻ったサトミが、私に尋ねてきた。
「こんなことで、本当にペロペロから逃れられるの?」
「試す価値はある」
「とにかく豚がいると思わせることだ」
佐藤が鼻を触りながら、こう続けた。
「鼻の形だって、豚鼻のやつがいい思いをしている」
「逆整形が流行っていたしな」
山田はおどけた表情で。
「そんなに奴らに鼻の穴を見せたいんかい」
「みんなして、ブヒブヒ言って、世も末だよ」
「末なんだよ」
いつもなら山田の冗談に乗ってあげるところだが、寸止めした。
すこしでも、豚の鼻に近づきたい。
本気でそう思っている理美を見ると、軽口は叩けなかった。
鼻がモノをいう、ヘンな世界になったものだ。
3人は、豚鼻を鳴らすハーモニーまでできるようになっていた。
理美の鳴きがいちばん響いている。
3人同時なら、迫力も十分。
本当に豚がいるのかと思うようになった。
もっとも、豚の生鳴きを聞いたことがないけど。
そういえば、女1人男2人の音楽グループがいたな。
さしずめ、トンカムだな、これは。
もし、あの3人がいたら……
そんな思いがよぎる。
目の前の現実は、ペロペロの来襲。
その知らせを、大声で叫びながら、アジトに引き返す。
「逃げろ、逃げるんだ!」
ふんが、ふんが
(やっぱり、上手にできない)
「豚鼻だ、豚鼻を鳴らせ!」
ふがががが
(ちくしょー)
涙ながらに懸命に叫んで、鳴いた。
トンカムのメンバーになれなかった。
NHKはな自慢なら、ブヒ1つだろう。
それでも舞台には立てる。
ペロペロシリーズ、次のお話はこちら
