あなたの隣は私の場所で、7は私の席だった。
国語の授業中、開いた窓から春の澄んだ風が入ってきた。
青空と涼やかな風に運ばれて、金木犀の香りが届く。
その眩しさと香りに誘われてグラウンドを見ると、3組が体育の授業をしていた。
そこに、彼の姿があった。
中学に入ってから、グループもクラスも離れて、話さなくなった松永くん。
彼は明るい日のあたるグループにいて、私は教室の隅で本を読んでいるようなタイプだ。
けれど昔は気が合って、空き地で駆けっこをしたり、ふたりでよく遊んでいた。
ボールを握って笑う横顔が、席から見えた。
少し大人びているのに、あの頃と同じ無邪気さが残っている。
背丈は伸びたのに、青空の下で笑う顔は、昔と変わらない。
(私も松永くんも、きっと変わっていないのに)
あの頃は、隣にいるのが当たり前で、名前を呼ぶのも、笑い合うのも、何も考えなくてよかった。
今は、同じ学校にいて、同じ時間を過ごしているのに、まるで別の世界にいるみたいだ。
中学に入ってから、松永くんと話した記憶はない。
——私たちは、どこで分かれてしまったのだろう。
風がノートのページをめくる。
ぱらり、と音がして、白いページが現れる。
雲ひとつない空からの光が、その白さを際立たせていた。
まだ何も書かれていない未来。
すべてを内包しているのに、手がかりも道標も何も教えてくれない白。その眩しさは未来の姿に似ている気がした。
(どうして、離れてしまったのだろう)
そんなこと、考えても仕方ないのに。
話しかければいいのに。その勇気が出ない私がただ、意気地なしなだけなのに。
シャーペンを持つ手を止めたまま、もう一度だけグラウンドを見る。
松永くんは走っていた。
誰かに呼ばれて振り返り、また笑う。
よく知っているはずの屈託のない笑顔。
それは昔は私に向けられていたものだった。
だけど今は、私の知らない時間の中で、私ではない他の誰かに向けられていた。
*
グラウンドが見えた、後ろの窓際の席。
あそこはずっと、私たちの椅子だった。
あの席から見える景色が、私のすべてだった。
7は、あなたの隣じゃなくて、
あなたを見ているだけの席だった。
——まつながくん。
声にならなかった声は、誰にも届かないまま、光の中に消えていく。
((好きだったわけじゃない。……だけど、私はあなたが、好きだった))
白く光るノートが、目に刺さるように痛かった。
目が眩むような真昼の光の中、かつて近所の公園で夕暮れまで遊んだ幼い日の影が陽炎のように見えた気がした。

″7″の席の物語です
***
気づいたらたぬ剤師さんのコメント欄に1000字超の小説を書いていました。気づいたら物語を書いてしまうくらい、たぬ剤師さんのコメント欄は心地よい場所でした。
そしたらnoteコメント欄は500字までだよと表示されて我に帰りました。
こちらはnoteに弾かれるまで書いていた500字オーバー版になります。
他の方のコメント欄に小説を書くのは青ウン🩵記事よりアウト〜〜〜!!!
だけれどたぬ剤師さんは快く許してくださりました💓優しくノッてくれるフォロワーさんに雪国は感謝しようね!!!
たぬ剤師さんは現場のリアルを隠さず書いてくれる薬剤師さんです。
病院と薬局の違いを、実体験ベースで分かりやすく教えてくれます。
豊富な知識も失敗談も隠さないで教えてくださる記事、薬局しか知らない私にとってとても勉強になっています!!
腎臓療養指導士の資格をお持ちで、腎臓系を学びたい方にはかなりおすすめの薬剤師さんです!
現場のリアルを交えながら、温かくて読みやすい文章でしっかり学べます。
クスッと笑いながらしっかり学べて、気づいたら最後まで読んでしまうタイプの記事ばかりですので、是非こちらからたぬ剤師さんの記事、覗いてみてください☺️💓🙌🙌
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肝臓腫瘍で治療中のぐーちゃんの治療費として、大切に使わせていただきます。心から感謝です。