【学び】仕事ができる人の価値は「自分の速さ」だけではない|周囲の力を引き出す5つの視点
はじめに
「仕事ができる人ほど、相手の目線に立つ必要があるのだろうか。」
そんな問いを、ものすごいスピードで仕事を進めていく人を、見た経験から考えました。
目の前の仕事を終わらせながら、その先に必要になる仕事まで考える。
少し時間が空けば、後回しになりそうな手続きや備品購入まで進めている。
私からすると、本当に「どうやったらそこまでできるんだろう」と思うくらい、仕事ができる人です。
一方で、仕事ができる人と、まだそこまでできない人との間には、少しずつ見えている景色の違いが生まれていくようにも感じています。
今回は、この違いを「仕事ができる・できない」という個人の能力だけではなく、組織の構造として整理してみます。
学び①|できるようになるほど「できなかった頃」が見えなくなる
まず感じたのは、
経験を積むほど、自分にとっての「普通」が変わっていく
ということです。
仕事を始めたばかりの頃は、
次に何をすればいいのか。
どこまで自分で判断していいのか。
今やっている仕事が、その先の何につながっているのか。
一つひとつ考えながら動いていたと思います。
しかし、何度も経験すると、それが無意識にできるようになる。
すると、
「これくらいは分かるだろう」
「普通はここまで考えるだろう」
「なぜ今やらないんだろう」
という感覚が少しずつ生まれてきます。
でも、その「普通」は、経験を積んだからこそ見える景色でもあります。
まだ経験が少ない人からすると、そこまで先が見えていないこともある。
ここで起きていることは、単純なやる気の差ではなく、
経験によって見えている範囲が違う
ということなのかもしれません。
学び②|仕事ができる人ほど、仕事が集まりやすい
もう一つ感じるのが、
仕事ができる人ほど、さらに仕事が集まってくるという構造です。
仕事が早い。
判断も早い。
安心してお願いできる。
だから、またその人に仕事が集まる。
そして本人も、
「自分がやった方が早い」
と思って進めてしまう。
短期的に考えれば、この方が圧倒的に効率がいいと思います。
私自身も、忙しいときであれば、できる人にお願いしたくなります。
ただ、それが積み重なると、
仕事ができる人
↓
仕事が集まる
↓
さらに忙しくなる
↓
周囲との仕事量に差が出る
↓
「なんで自分ばかり」と感じる
↓
それでも自分でやる
という循環が生まれる可能性があります。
一方で周囲は、
「あの人の方が早いから」
「自分がやるより任せた方がいい」
と思うようになる。
どちらかが悪いというより、
仕事ができる人に仕事が集中する構造そのもの
を見た方がいいのかもしれません。
学び③|「自分でやったほうが早い」の先に何があるのか
今回のことを考えていて重なったのが、山本渉さんの『任せるコツ』です。
この本では、仕事を任せられない理由の一つとして、
「自分でやったほうが早い」
という感覚が扱われています。
もちろん、自分でやれば早い。
すでに経験もありますし、やり方も分かっています。
ただ、それを続けている限り、相手が経験する機会はなかなか増えていきません。
『任せるコツ』では、仕事を任せることを単なる仕事の押しつけではなく、相手の育成や組織全体の成長にもつながるものとして整理しています。
ここが、今回私が感じたことと重なりました。
仕事ができる人がすべてやる方が、今日の仕事は早く終わるかもしれない。
でも、
半年後、1年後の組織を考えたときにも、それが一番早い方法なのだろうか。
少し時間がかかっても誰かに任せる。
失敗したらフォローする。
また任せる。
その積み重ねによって、今まで一人しかできなかった仕事が二人、三人とできるようになる。
そう考えると、
「任せる」という行為も未来への投資なのだと思います。
学び④|任せるためには、先に「相手を知る」が必要になる
ただ、ここで難しいのが、
「じゃあ仕事を振ればいい」
という単純な話でもないことです。
私が現場で大切だと感じているのは、
任せる前に、その人を知っているかどうか
です。
特に年齢の離れた若いスタッフと働いていると、仕事中の姿だけでは分からないことがたくさんあります。
ちょっとした買い物へ一緒に行く。
仕事とは関係のない雑談をする。
好きなことを聞いてみる。
最近何をしているのか話してみる。
一見、仕事の生産性とは関係のない時間です。
でも、その中で、
「この人はこういうことに興味があるんだ」
「これは意外と得意かもしれない」
「こういう仕事ならやってみたいのかもしれない」
ということが見えてきます。
そしてあるとき、
「これ、ちょっとやってみる?」
と声をかけられる。
最初から大きな仕事を渡す必要はありません。
今できるところから少しだけ背伸びする仕事を渡してみる。
できなければフォローする。
できれば次を任せる。
その繰り返しが、
「仕事を任せられる人」をつくっていくのだと思います。
学び⑤|相手の目線に立つことは、基準を下げることではない
「相手の目線に立つ」というと、
相手に合わせる。
甘くする。
仕事の基準を下げる。
そんなイメージを持つこともあります。
でも、私が今回考えた相手の目線に立つということは、少し違います。
求めるゴールを下げるのではなく、
そこまでどうやったら届くのかを一緒に考えること
なのだと思います。
例えば、自分には100が見えている。
でも相手には30までしか見えていない。
そのとき、
「なんで100まで見えないの?」
と言っても、なかなか届きません。
まず30まで一緒に見る。
次は40まで任せてみる。
少しずつ見える範囲を増やしていく。
この感覚は、子育てにも近いなと思います。
大人からすると簡単なことでも、子どもにとっては初めてのことがあります。
すぐに答えを教えたり、
「なんでできないの?」
と言ったりするより、
今どこまでできているのかを見る。
そして、少し先を任せてみる。
職場でも同じなのかもしれません。
構造として整理すると
今回のことを整理すると、二つの循環があるように感じました。
一つは、
仕事ができる
↓
自分でやる
↓
さらに仕事が集まる
↓
忙しくなる
↓
周囲との差にイライラする
↓
さらに自分でやる
という循環。
もう一つは、
相手を知る
↓
少し任せる
↓
失敗をフォローする
↓
経験が増える
↓
任せられる範囲が広がる
↓
自分の仕事も減る
という循環です。
前者は短期的には速い。
後者は最初に時間がかかる。
でも、長い目で見れば後者の方が、組織全体としてできることが増えていく可能性があります。
『任せるコツ』が扱っているのも、まさに「任せること」と「育てること」を切り離さない考え方です。出版社の紹介でも、著者自身が任せてこなかった経験を起点に、任せることの重要性と部下育成を扱う本として説明されています。
リーダーや組織に転用すると
この考え方は、役職としてのリーダーだけのものではないと思います。
仕事が早い人。
経験の長い人。
専門的な知識を持っている人。
新人を教える人。
少しでも誰かより先に経験した瞬間から、
「なんでできないんだろう」
という感覚は生まれる可能性があります。
そのとき、
「あの人は仕事ができない」
で終わらせるのではなく、
「この人には今、どこまで見えているんだろう」
と一度考えてみる。
そして、
「何なら任せられるだろう」
と考える。
仕事ができる人が先頭を走ることも大切です。
でも、先頭を走れる人だからこそ、
後ろにいる人が走りやすい道をつくることもできる。
そんな役割もあるのではないかと思います。
まとめ|仕事ができる人ほど「自分がいなくても回る」を考える
仕事ができる人を見ていると、私ももっと仕事ができるようになりたいと思います。
もっと早く判断したい。
もっと先まで考えたい。
もっと周囲を助けられるようになりたい。
でも、もし自分がそこまでできるようになったときには、一つ忘れたくないことがあります。
それが、
自分の基準だけで相手を見ないことです。
自分ができるから、相手にも同じものを求めるのではなく、
相手には今、どこまで見えているのか。
何なら任せられるのか。
どんな経験があれば、一歩先へ進めるのか。
そこを見る。
そして、時間をかけて信頼をつくりながら、少しずつ仕事を渡していく。
そうすることで、
仕事ができる一人に依存する職場から、少しずついろいろな人が仕事を担える職場へ変わっていくのかもしれません。
仕事ができるとは、自分一人でたくさんの仕事ができることなのか。
それとも、
自分が持っている仕事を、いつか誰かに任せられる状態までつくれることなのか。
この違いは、組織で働く上でかなり大きいように感じています。
▼この内容のきっかけになった問いはこちら
摩擦を、構造に。
問いを、資産に。
Yuta
