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【学び】相互承認から考える|なぜ「正しい変化」なのに組織は動かないのか

はじめに

「正しいことを提案しているのに、なぜ人は動いてくれないんだろう」

組織で働いていると、こんな場面があります。

効率を考えても合理的。
お客様にとっても良さそう。
長期的に見ても必要な変化。

それなのに、現場では思ったほど賛同されない。

今回は、苫野一徳さんの「相互承認」と、ロナルド・A・ハイフェッツらの『最難関のリーダーシップ』をつなぎながら、この構造を整理してみたいと思います。

答えを出すというより、これから現場を見るための視点として残しておきます。

学び① 正しさが違うのは、ある意味当たり前

最初の学びは、

人によって正しさが違うのは、当たり前なのかもしれない

ということです。

同じ職場にいても、

リーダーから見える景色。
新人から見える景色。
長く働いている人から見える景色。
異動してきた人から見える景色。
マネジメントから見える景色。

それぞれ違います。

同じ出来事を見ていても、立場によって優先順位が変われば、そこから導かれる「正しさ」も変わります。

だから、「どちらが正しいのか」だけを議論すると、いつまでも平行線になることがあります。

学び② 相互承認とは、相手に同意することではない

そこで大切になるのが「相互承認」です。

苫野一徳さんがヘーゲルなどを踏まえて提示している「自由の相互承認」は、互いを対等で自由な存在として認め合うという考え方です。

ここで大事なのは、

承認=賛成ではない

というところだと思います。

「私はあなたとは違う考えを持っている。でも、あなたがそう考える背景があることは認める」

という状態です。

この視点を組織に置き換えると、

「なぜそうしたいんですか?」
「何を一番大事にしていますか?」
「今のやり方の何を残したいと思っていますか?」

といった問いが生まれてきます。

正しさの勝ち負けを決めるのではなく、その正しさを生んでいる背景を見る。

これだけでも、相手への認知は少し変わる気がします。

学び③ 「技術的問題」と「適応課題」を混ぜない

ここで、『最難関のリーダーシップ』の考え方がつながります。

著者のロナルド・A・ハイフェッツ、マーティ・リンスキー、アレクサンダー・グラショウは、組織が直面する問題を大きく「技術的問題」と「適応課題」に分けます。

技術的問題は、既存の知識・専門性・経験を使って解決できる問題。

一方、適応課題は、当事者自身の価値観や優先順位、習慣、忠誠心などの変化を伴わなければ前に進めない問題です。

だから、

新しいルールを作る。
マニュアルを変える。
人数を変える。
システムを導入する。
担当を変える。

といった技術的な解決策だけでは、動かない問題があります。

仕組みを変えたとしても、

「なぜ変える必要があるのか納得できない」
「今まで大切にしてきたものが失われる」
「自分の役割がなくなる気がする」

という感情が残っていれば、現場は簡単には変わりません。
つまり、目に見える問題の裏側に、適応課題が隠れているということです。

学び④ 非効率には、その場なりの合理性がある

ここで、今回私が特に面白いと思ったのが、

非効率の中の合理性

です。

調べてみると、この感覚にかなり近い考え方として、経営学者・菊澤研宗さんが『組織の不条理』などで論じている「非効率性の合理性」があります。

考え方はとても興味深く、

今の状態が非効率であっても、そこから効率的な状態へ変えるために非常に大きなコストがかかる場合、あえて現状を維持する方が合理的になることがある。

というものです。

例えば、現場で長く続いているやり方があるとします。

外から見ると、

「なぜこんな面倒なやり方をしているんだろう」

と思うかもしれません。

でも、そのやり方によって、

誰かの負担が減っている。
ミスを防いでいる。
人間関係が保たれている。
不安なく働けている。
過去に起きたトラブルを防いでいる。

可能性もあります。

つまり、

非効率には、非効率になった理由がある。

その背景を見ずに合理性だけを持ち込むと、現場にとっては「今まで大切にしてきたものを突然壊された」と感じることすらあるのかもしれません。

学び⑤ 変革の前に「バルコニー」に上がる

『最難関のリーダーシップ』には、もう一つ印象的な考え方があります。

「ダンスフロア」と「バルコニー」です。

自分自身が当事者として、問題の中に入り込んでいる状態がダンスフロア。

そこから一段上がって、組織全体で何が起きているのかを観察する視点がバルコニーです。

本書では、適応課題に取り組む最初のステップとして、組織の構造・文化・習慣的な反応などを観察することが重視されています。

これは、現場での変化を考える時にも使えそうです。

「このやり方は非効率だ」

で終わらせず、

なぜ残っている?
誰が何を守っている?
変わったら誰が困る?
逆に、変わらなければ誰が困る?
どんな過去がこのやり方を作った?

と、一段上から眺めてみる。

そこで初めて、目の前にある問題が「作業の問題」なのか、「関係性や価値観の問題」なのかが見えてくるのかもしれません。

合理性だけではなく、納得できる変化を考える

ここまで整理してみると、

変化を起こす人に必要なのは、正しい答えを持っていることだけではないように思えてきます。

効率を求める視点も必要。
合理性も必要。
変化も必要。

でも同時に、

なぜ今の状態が続いているのか。
何を失うことを人は恐れているのか。
どんな価値観がそこにあるのか。

を見る必要があります。

そして、そのための入口になるのが「相互承認」なのかもしれません。

相手に合わせることではない。
自分の正しさを捨てることでもない。

違う正しさを持った人同士が、

「あなたにはそう考える理由がある」

というところから対話を始める。

その上で、

「では、私たちは何を大切にしながら変わっていくのか」

を考えていく。
効率だけを考えれば、遠回りです。

でも、その遠回りを飛ばした結果、何度説明しても人が動かず、結局もっと時間がかかることもあります。

だとすれば、

対話という非効率は、”長い目で見ると合理的”なのかもしれない。

今回の学びから、そんなことを考えました。

もちろん、すべての問題を対話で解決できるわけではありません。
技術的にすぐ直すべき問題もあります。

だからこそ、

「これは技術的問題なのか。それとも適応課題なのか」
「この非効率には、どんな合理性が隠れているのか」

を一度考えてみる。

それだけでも、組織の見え方は少し変わるような気がしています。


▼この内容のきっかけになった問いはこちら


摩擦を、構造に。
問いを、資産に。
Yuta



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