米国信用危機の "火種"
連載の趣旨:機関投資家(現役ファンドマネージャー)による米国株・金融市場の分析。短期投資・長期投資問わず、投資判断に欠かせない情報を提供する。
サムネイル:危機の象徴、ブラックスワン
以前、プライベートエクイティ、生命保険会社、プライベートクレジットが絡んだ米国経済の "信用危機の火種" について考察しました。
今回は、より内容を充実させてお送りします。
これは、機関投資家(ファンドマネージャー)内で話題になっている「米国市場の信用危機に繋がりかねない問題」です。この記事を読めば、知らずに資産を失うという悲劇になることはありません。
問題提起:プライベートエクイティ(PE)は、米生命保険業界に特有の破綻処理制度の穴を突いて、システミックリスクを積み上げている。なんと、生命保険業界の制度を使えば、損失を他者(競合保険会社・納税者)へ転嫁することが出来るのだ。つまり、今回の問題の本質は、「リスクを取って利益を得る主体と、そのリスクが実現したときに損失を負う主体が、制度的に切り離されてしまっている」ということである。
民間市場(プライベートエクイティ、プライベートクレジット)と米生命保険会社が生み出した "信用危機の火種" です。
論点を整理していきましょう。
PEによる生命保険会社の買収:米国の生命保険会社は破綻しても倒産処理を受けず、州の保証基金が契約者への支払いを肩代わりする仕組みになっている。その肩代わり費用は他の保険会社に転嫁されるが、大半の州では保険料税の控除で相殺されるため、実質的に肩代わりしているのは納税者ということになる。このように、損失が外部(競合他社と納税者)へ転嫁されるなら、損失を気にせずリスクを取るインセンティブが発生する。
もちろんこれは善意から生まれた制度であるため、真っ当な業界人であれば悪用しようとは考えないはずだが、、、
あくどいプライベートエクイティはこの "善意であるはずの抜け穴" に着目し、生命保険会社を買収することで、解約されにくい保険料を自らのファンドの資金源として活用し始めたのだ。
PEがしでかした事:プライベートエクイティは生命保険会社を買収すると、保険会社の運用部門を縮小させ関連会社に運用委託して手数料を抜き取る。系列のプライベート・クレジットファンドで不良化したローンを、割高な価格で保険会社に買い取らせる。資産の半分近くを流動性の低いプライベートクレジットに投資する。非公開の格付けを使い、実態より有利な規制上の評価を得る。そして規制の緩いバミューダなどのオフショア子会社に契約を移し(シャドー再保険)、真のリスクの所在を見えなくする。
こうしてプライベートエクイティが直接保有する保険会社の資産は、1兆ドルとなった。
酷いですね。善意から生まれた制度が金の亡者に悪用されています。
さて、プライベートエクイティが手にした生命保険の資金は、どこに投資されたのでしょうか。
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