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【第100話記念】『テオドールと囚われの王女』(第1幕)【魔法の解かれた先で】

【第100話まえがき】

 第100話を迎えました!

 今回はこの節目を記念して、本筋を少しだけお休みし、いつもとは違う特別なお祝い回をお届けします。

 しかも、気づけば15,000字を超える大ボリュームに……。

 そこで今回は、物語を全13幕に分け、1時間おきに一幕ずつ公開します。

 テオと一緒に劇場の席へ座ったつもりで、少しずつ幕が上がっていく一日を楽しんでいただけたら嬉しいです。

🎬タイムテーブル

 第1幕『誘い』 8:30
 第2幕『王子テオドール』 9:30
 第3幕『囚われの王女』 10:30
 第4幕『狼の群れ』 11:30
 第5幕『魔法使いの妖精』 12:30
 第6幕『アクシデント』 13:30
 第7幕『魔法の暴走』 14:30
 第8幕『魔王ゴルジオ』 15:30
 第9幕『究極魔法』 16:30
 第10幕『最後の切り札』 17:30
 第11幕『大団円』 18:30
 第12幕『終幕後の舞台裏』 19:30
 第13幕『記念日のお祝い』 20:30


※この物語はフィクションです。登場する人物および団体は、実在のものとは一切関係ありません。◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【第1幕】『誘い』


「テオ、ちょっと付き合って」
 ある日のこと、昼食を終えて自室へ戻ろうとしていたところを、エレノアに呼び止められた。
 母とお菓子作りをするようになってから、エレノアが城にやってくる頻度もとても多くなった。

 それ自体は嬉しいことだ。しかし、アデールのことを真剣に考え始めたいま、女友達と母が仲良しすぎるというのも、なかなかに居心地が悪いものである。

「いったいどこへ行くんだ?」
「いいから。こっち」
 エレノアは悪戯でも思いついたような笑みを浮かべて、私の袖を引っ張った。理由を尋ねても答える気はないらしく、引かれるままについていくしかない。

 途中、廊下の角で何人かの使用人とすれ違った。
「殿下、本日はおめ――」
 若い使用人が笑顔で口を開いたところで、隣にいた侍女がさりげなく肘で脇腹をつつく。
「ん?」
 聞き返すと、使用人は一瞬だけ目を泳がせた。
「あ、あの……おめ……お目にかかれて光栄です!」
「何を今さら改まって。毎日顔を合わせているではないか」
「そ、それは……」

 使用人は助けを求めるように周囲を見回すと、なぜか近くにいた者たちまでが揃って視線を逸らした。
「何か、変だぞ?」
 横を見ると、エレノアも落ち着かない様子だった。
「アハハ……、今日も会えてよかったってことよね」
 エレノアが乾いた笑い声を混ぜながらそう言うと、使用人はやけに畏まった顔で背筋を伸ばした。 
「あ、はい! まさにそのような意味でございます!」
 ――なんでエレノアがフォローしてるんだよ。

 エレノアが何事もなかったように歩き出したので、私も仕方なくその後を追う。
 振り返れば、使用人たちはまだどこか落ち着かない様子でこちらを見送っていた。


 エレノアは城の廊下を迷うことなく進み、普段はほとんど足を運ばない西棟へ入っていく。いくつかの角を曲がったところで、一つの大きな扉の前に立ち止まった。
 そこは式典や音楽会などで使われる大劇場だった。
「今日は何があるんだ?」
「それは観てからのお楽しみ」

 エレノアは扉を開くと、そのまま私の背中を押した。
「ほら、早く入って」
「お前は?」
「私は準備があるから」
 ――準備?
 聞き返そうとした時には、エレノアはもう廊下の向こうへ駆けていた。いくら勘が鈍いと言われがちな私も、ここまであからさまに隠し事をされれば嫌でも気がつく。
 ――いったい何を企んでるんだ。
 答えはでないまま、仕方なく劇場へ入る。

 劇場の広い客席は薄暗く、人影は一つもない。ただ中央付近の一席だけが小さな灯りに照らされている。

 ――まさか、本当に私一人なのか?

 示されるまま腰を下ろすと、ほどなく壁際の燭台が一つ、また一つと消えていった。
 そして、最後の灯りが落ちたところで劇場は完全な暗闇に包まれた。

 静まった劇場に上演開始の鐘が鳴る。
 一度……二度……三度。

 最後の鐘が鳴ると同時にゆっくりと劇場の幕が開かれた……。


掌編『魔法の解かれた先で』
 
第100話 第2幕へ続く


 いよいよ舞台の幕が開きました。
 テオのために用意された壮大な物語の行方とは!

📔第2幕の更新は
 本日9:30を予定しています。
(第100話は全13幕を1時間おきに投稿していきます)🎬

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結城斗永|掌編小説・詩のようなものを書きます✍🏻 私の物語は皆様からいただいた一杯の珈琲の味。 よろしければ応援よろしくお願いいたします。