見出し画像

【第100話記念】『テオドールと囚われの王女』(第2幕)【魔法の解かれた先で】

【はじめに】

 『魔法の解かれた先で』
 記念すべき第100話は全13幕の超大作です!
 1時間おきに1本投稿していきます。
 1話あたりはさくっと読めるボリュームですので、ぜひ最初からお楽しみください✨

🎬タイムテーブル

 第1幕『誘い』 8:30
 第2幕『王子テオドール』 9:30
 第3幕『囚われの王女』 10:30
 第4幕『狼の群れ』 11:30
 第5幕『魔法使いの妖精』 12:30
 第6幕『アクシデント』 13:30
 第7幕『魔法の暴走』 14:30
 第8幕『魔王ゴルジオ』 15:30
 第9幕『究極魔法』 16:30
 第10幕『最後の切り札』 17:30
 第11幕『大団円』 18:30
 第12幕『終幕後の舞台裏』 19:30
 第13幕『記念日のお祝い』 20:30


※この物語はフィクションです。登場する人物および団体は、実在のものとは一切関係ありません。◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【第2幕】『王子テオドール』


『これは、勇敢なるアルトリアの王子――テオドールの物語である』

 舞台袖から朗々とした声が響くと同時に、舞台へだんだんと光が差していく。
 板と布で作られた白い塔と城壁、その中央には赤い外套を羽織った小柄な少年が立っていた。

 顔の上半分は金色の仮面で隠されているが、どことなく見覚えのある姿をしている。あれが……私なのか?

 少年が腰の剣を勢いよく抜く。
「私はテオドール! いつの日か立派な王となり、この国すべての民を幸せにしてみせる!」

 声を聞いた瞬間に確信した。
 ――あれって、もしかして……サリヴァン?

 流民街へ戻ってからしばらく顔を見ていなかったと思ったら、いつの間にこんなものを練習していたんだ。

 それに、サリヴァンが私を演じているというのも、ちょっと可笑しい。ずいぶんと小さくなった自分の姿に、思わず頬が緩む。

『正義を愛し、勇気に満ち、困っている者を見れば決して放っておけぬ、心優しき王子でありました――』

 再び舞台袖から声が響く。ずいぶんと立派な紹介に少し恥ずかしくなる。


 次いで、コツ……と杖が床を打った。
 舞台袖から現れたのは、サリヴァンと同じように仮面をつけ、灰色の長衣に、腰近くまで白髭を垂らした老師のような風貌の人物だった。背丈ほどある杖をつきながら、ゆっくりとサリヴァン演じるテオドールの元へと歩いていく。

「老師ヴァルド様!」
 サリヴァンが老師に向き直る。老師は足を止め、コツンと杖を一突きした。ヴァルドが老師とは言い得て妙だ。
「王子テオドールよ」
 ――この声は、ジーナか……?

 風貌と声のギャップに思わず笑いが漏れた。しかし、何においても冷静なところは似ているし、はまり役のような気もする。

 ジーナは声を寄せるでもなく、普段の口調で続けた。
「王となる者は、剣の強さだけではなりませぬ。己を律し、人を思い、世界をその目で見るのです」
 白髭を撫で下ろしながら淡々と諭すように話す姿は様になっていた。
「はい、老師!」
 サリヴァンも元気よく返事をする。

「さあ、新たな門出だ。城壁の外にこそ、真の王への道がある!」
 ジーナが杖を天へと掲げながら高らかに声を上げると、舞台が一段暗くなり、明かりがサリヴァンに集まった。

 勇ましい音楽を背に、サリヴァンが剣を高々と掲げたところで、完全に舞台が暗転する。

 私は城を抜け出す前のヴァルドの様子を思い返す。
 ――ヴァルドがそんな簡単に城から出してくれるはずもないけどな。
 そんなことを考えながら、思わず笑みが溢れていた。


掌編『魔法の解かれた先で』
 
第100話 第3幕へ続く


📔第3幕の更新は
 本日10:30を予定しています。
(第100話は全13幕を1時間おきに投稿していきます)🎬

よければ『スキ』『フォロー』『マガジン登録』もいただけると励みになります💪


■マガジン『魔法の解かれた先で』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


いいなと思ったら応援しよう!

結城斗永|掌編小説・詩のようなものを書きます✍🏻 私の物語は皆様からいただいた一杯の珈琲の味。 よろしければ応援よろしくお願いいたします。