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カルナッポさんスピンオフ回〜 怪談ウォッチャー ナッチャンダリーポップ氏

**怪談ウォッチャー・ナッチャンダリーポップ

—ショバショバーの夜に—**

 名前を聞けば誰もが「あぁ、あの怖い話の……」と反応するほど、フランスの片田舎で妙に有名な怪談語りがいる。
 ナッチャンダリーポップ氏——通称「ナッチャン」。

 パッチワークのジャケットを羽織り、渋いシルクハットを目深にかぶるその姿は、怪談界ではちょっとしたアイドルのようなものだ。
 何より特徴的なのは、語り口調。
 稲川淳二を思わせる、あの妙に湿った、囁くような、ちょっと怖い喋り方。

「いやねぇ……ほんとにねぇ……これはぁ〜……
 怖いんですよぉ……?」

 フランス語訛りのその怪談トーンは、一部のマニアの心を完全に掴んでいた。



◆きっかけは、少年時代

 ナッチャンが怪談ウォッチャーになったのは、少年の頃の出来事がきっかけだった。

 12歳の夏。
 彼は家の裏の石造りの小さな礼拝堂に、夕暮れどきひとりで忍び込んだ。

 そこで見たのだ。

 ショバショバーと飛ぶ耳を。

 それは人間の耳が空中で震えながら、まるで蝶の羽ばたきのように、ふらふら、ショバショバーと音を立てて飛んでいた。

「うわあぁぁぁぁぁッ!」

 彼は泣きながら逃げた。
 そしてその日から、不可解なものを“観察する”ようになった。

 怖いのに、目が離せない。
 嫌なのに、気になって仕方がない。

 教会に相談しても、警察に言っても、笑われるだけだった。

 ただひとつだけ、祖母が言ってくれた言葉がある。

「ナッチャン……あんたは“視る子”だよ」
「怖かったら、語ってごらん。
 語れば、怪異は逃げるよ」

 それが彼の運命を決めた。



◆怪談ウォッチャーとしての修行

 青年になったナッチャンは、世界各地の怪異を“観察”し、それを語る旅に出る。

 夜の森、風車小屋、湿った地下室……
 そこで出会った人々から「本当にあった話」を集めた。

 そして語るたび、聴衆は震えた。

「いやぁ〜これがぁ……ほんとにねぇ……
 怖いんですよぉ……?」

 あまりに語りが上手すぎて、
怪談が“現実に起きたように錯覚する”と評判になった。

 そのうち誰かが言い始めた。

「あいつは……怪談を“追いかけてる”んじゃない。
 怪談が……あいつを追ってくるんだ」

 こうして彼は“怪談ウォッチャー”と呼ばれるようになった。



◆カルナッポさんとの運命の出会い

 ある日、南仏のとある市場。
 焼けた魚を肩に担ぐ、異様な風貌の男が歩いていた。

 そう——カルナッポさんである。

 いや、普通に見ても異様なのだ。

 ・髭が異常に長く編み込まれている
 ・悩むと髭を撫でる
 ・巨大魚を毎週持ち歩く
 ・セレーノ女史の甲羅を借りている(?)

 誰がどう見ても、怪談側の人間である。

 ナッチャンはその光景に鳥肌が立った。

「いや……これはねぇ……出ますよぉ……
 こういう人の周りにはぁ……怪異って……出るんですよぉ……?」

 そしてナッチャンは確信した。

「あの人を観察すれば……一生食っていける」

 それ以来、彼はカルナッポさんをつけ回すようになった。

 もちろん悪気はない。
 純粋なる“怪談研究”なのだ。



◆セレーノ女史の存在も決定打だった

 その後、カルナッポさんの隣を歩く青いドレスの女性——セレーノ女史——を見て、ナッチャンは膝から崩れ落ちる。

「いや……この人ねぇ……背中にねぇ……
 甲羅背負ってるんですよ……?
 甲羅なんですよぉ……?」

 甲羅を鍋に沈めるシーンを初めて見たときは、
ショバショバーどころか目玉が飛ぶくらい驚いた。

 そこでナッチャンは悟った。

「あ……この人たちと一緒に旅すれば一生怪談に困らない」



◆そして、今

 ナッチャンがカルナッポさんたちに同行する理由は3つ。
1. 怪談ネタが無限に湧く
2. カルナッポさんの周囲で実際に怪異が起こる(気がする)
3. 語る相手としては最高に反応がいい

 とくにカルナッポさんは、怖い話を聞くと大体こう言う。

「御意」

 全肯定である。

 そしてセレーノ女史は問う。

「その怪談……スープの出汁になりますの?」

 全く話を聞いていない。

 それでもナッチャンは語る。
 語らずにはいられない。
 語るたび、少年時代のショバショバーの恐怖を少しだけ手放せる。

 だから今日も——

「いやねぇ……これはねぇ……ほんとぉーに……
 怖いんですよぉ……?」

 彼はどこかで怪談を囁き続けている。

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