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2歳児、スナックで「リンゴの唄」を歌う



ひらがなも読めない2歳の娘が、祖母のスナックで「リンゴの唄」を歌っていた。

小さな体に似合わない大きなマイクを、両手で握って。

カラオケの画面には歌詞が流れている。

でも、娘はそれを見ているわけではない。

「あかいリンゴに くちびるよせて〜」

と歌っている。

「リンゴの唄」は、1945年に発表された、戦後の日本で大ヒットした歌だ。

今の若い人には、馴染みがないかもしれないが。

そして、この歌は4番まである。

娘は、その4番までを全部丸暗記していた。

まだ2歳。

ひらがなも読めない。

どうして、そんな歌を覚えたのか。

きっかけは、お風呂だった。

娘に数字を覚えさせようと思って、
私は湯船に浸かりながら、
数え歌を歌っていた。

「いちじく、にんじん、山椒に椎茸……」

私が歌うと、娘も歌う。

これを5回歌ったら、お風呂から上がる。

5回歌うことが、よく温まった合図だった。

そんなふうに歌っているうちに、娘はこの数え歌をすぐに覚えた。

歌を覚えるのが早い。

それが面白くて、私は興味半分で、今度は「リンゴの唄」を教えてみることにした。

CDを買った。

湯船に浸かりながら、私が歌って教えた。

娘は私の歌を聞いて、真似をする。

何度も歌っているうちに、あっという間に4番まで全部覚えてしまった。

そして、それを歌った場所が祖母のスナックだった。

母がやっていたスナックには、カラオケがあった。

娘は大きなマイクを両手で握る。

そして、歌う。

4番まで。

カラオケの画面の歌詞は読めないのに、最後まで歌う。

ただ、2歳児だから、発音はまだ幼い。

「りんご」が「いんご」に聞こえる。

「いんごじゃなくて、りんごだよ」

私が言うと、娘は怒る。

本人はちゃんと「りんご」と言っているつもりなのだ。

「ちゃんと言ってるよ!」
というようなむくれた顔をする。

それが可愛くて、私はまた笑ってしまう。

♪あーかい いんごに くちびーる よーしぇてー♫

スナックにいた大人たちも、そんな娘を見て笑ったり、褒めたりしてくれた。

娘は嬉しそうに、またマイクを握っていた。

あれから20年以上が経った。

今、娘は自分の酒場を持つという夢に向かって、酒場で働きながら勉強している。

2歳の頃、祖母のスナックで「リンゴの唄」を歌っていたことが、今の夢につながったとは思っていない。

ただ、娘がいつか自分の店をオープンしたら、私はそのカウンター越しに、店主になった娘を眺めているのかもしれない。

大きなマイクを両手で握って、「いんご」と歌っていた2歳の娘を思い出しながら。

あの頃は、そんな未来が来るなんて思いもしなかった。

あの日、湯船で一緒に歌った「リンゴの唄」を思い出しながら、娘の店で一杯飲んでみたい。


娘が2歳だった頃には、こんな不思議なこともありました。

「ママとパパを見つけたの」2歳の娘が話した、生まれる前の記憶 


そして20年以上たった今、娘は自分の酒場を持つ夢に向かっています。

娘が本当に家を出た日。ぽつんと残された20年の机