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②従来型道徳授業の特徴と良さ

これまでの道徳授業(場面発問型・心情型など)は、教材に登場する人物の行動や心情を手がかりにして、価値を理解しようとする授業が中心でした。

授業の発問も「主人公はどんな気持ちか」「○○さんはどんなことを考えていたと思うか」など、登場人物の心情や考えを問うものが多かったと思います。
これに加えて「あなたならどうするか」といった子どもたちの立場から考えさせる(※専門的には「自我関与」と呼ばれる)発問が組み込まれるものもありました。

こうした発問による思考活動は、人物の視点に依拠したものが多く見られたと言えます。

代表的な展開の例を挙げると次の通りです。

①  葛藤場面型

物語の中盤に登場人物が迷う場面があり、子どもたちは「登場人物はどんなことを考えたと思うか」「登場人物はどうしたらよいか」や「もし自分ならどうするか」を考えていきます。
判断に迷う場面の気持ちや考えを想像し、葛藤する中で考えを深めていきます。

その場面では、登場人物の役割を演じるなど、物語の場面の状況をよりリアルに理解させようとする工夫が取り入れられ、人物の立場から出来事を考えていきます。

例:放課後に遊ぶ約束をしていた子が、道で困っている下級生を見つける。約束を守って早く帰るか、その子を助けるか、迷う場面での主人公の気持ちや考えを想像して話し合う。

②  モラルジレンマ型

価値の対立する状況(どちらにも大切な価値が含まれ、一方を選べば他方がうまくいかない状況)がある場面が設定された教材で、その選択場面にフォーカスして「どうしたらよいか」「それはなぜか」を考える授業展開方法です。
正解は一つではなく「どちらを優先するか」「優先するのはなぜか」を話し合うことで、多面的な考察を行って考えを深めていく方法です。

例:クラスの規則を守ることと、友達を助けることのどちらを優先すべきか迷う場面(こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たず)でどうするかを考える。

③  内省型

物語の最後に、主人公が自分の行動を振り返る場面があり、良くない結果に陥った理由を、前の場面を振り返りながら、「どうすべきだったか」「どうしたら良い結果になるのか」を考えます。

そうした反省を活かして、ねらいの価値に迫る授業方法です。

例:友達との関わりで誤解が生じた後、主人公が自分の行動を振り返り、自分はどうするべきであったのか、次にどうするべきかを考える。

その他の授業展開方法

この他に「対比型」「問題解決型」などの展開方法もあります。

対比型では、登場人物(Aさん・Bさんなど)の行動を比較する際に、それぞれの人物が「なぜその行動を取ったのか」「そのときどんな気持ちだったのか」を子どもたちが想像します。

問題解決型では、主人公が迷う状況に置かれたとき、「主人公はどんな気持ちで悩んでいるのか」「友達や下級生の立場だったらどう感じるか」「どうすればより良い解決が図れるか」といった、複数の立場に立って考える活動が行われます。
 
いずれにしても、従来型の道徳授業の展開方法のほとんどは、教材の特定の場面について「登場人物または自分の視点から考える」活動をしているという点が共通しているように思われます。

登場人物等の視点から考えるのは自然な流れ

道徳教材の多くは「人物の行動や心情」を通じて価値を浮かび上がらせる構成になっています。

そのため、登場人物の視点に立つ活動を行うのは、きわめて自然な発想であり、自然な流れです。人物の気持ちや考えを追体験することで、「自分ならどうするか」に結びつけやすくなります。

「他者の視点に立つ」ことは、「こうすべき」という道徳的価値を確認しやすいため、子どもたちが価値を自分事として受け止めるために大変に有効な手段です。

そのため、「道徳の時間」設立の時代から現在の「道徳科」まで、最も長く、最も広く利用されてきたと言えます。

登場人物等の視点から考えることの良さ

このような「登場人物の視点から状況を考える活動」には、数多くの利点があります。

①   共感を育てやすい

登場人物の気持ちや状況に寄り添うことで、子どもは他者の感情を理解し、共感する力を養いやすいことです。

例:「落とし物を拾った主人公が、届けるかどうか迷っている場面」で、主人公の気持ちを想像することで「自分も困るだろう」「届けてあげたい」という共感が生まれる。

共感する力は思いやりの原点であり、状況を把握する際の重要事項でもあります。特に、自分の視点から物事を考えることが多い低学年段階では、登場人物の立場を想像して、自分の立場からだけでなく、相手や他者の立場から物事を考えることは重要です。

登場人物の視点から状況を考える活動は、共感する力を育てます。

②   具体的で分かりやすい

抽象的な価値を直接扱うのではなく、物語の具体的な場面を通して考えるため、子どもが理解しやすいことです。

例:「友達とけんかした主人公が後悔する場面」を通して、「友情を大切にする」という価値を具体的に理解できる。

役割演技などを用いて主人公の言動を疑似体験して感じたことを発表する活動を行えば、主人公の気持ちや考えは低学年児童であっても手に取るようによく分かります。

登場人物の視点から状況を考える活動は、具体的で分かり易いのです。 

③   自分の生活に結びつけやすい

登場人物の立場を自分に置き換えることで、「自分ならどうするか」と考えやすく、日常生活に引き寄せて考えられる。

例:「友達を助けるか、約束を守るかで迷う場面」で、自分の同じような経験に結びつけて考えやすい。

登場人物の視点から状況を考える活動は、教材文の状況下で、自分は「どう感じ」「どう考え」「どう行動しようとするか」を登場人物に投影して考えていきます。
そのため、教材文の状況に没入し易くなりますし、教材文と似た状況を経験した記憶を想起させることになります。

登場人物の視点から状況を考える活動は、教材内容と現実の生活を結び付けて考え易くするのです。

④   価値を実感的に理解できる

道徳的な価値を単なる知識としてではなく、「行動したときにどんな気持ちになるか」といった実感を伴って理解できる。

例:「勇気を出して注意した主人公が安心感を得る場面」で、勇気の大切さを実感的に理解できる。

これは、①~③で述べた内容を総合した感覚のことです。
登場人物の気持ちが想像し易く、その場の様子が具体的で分かり易く、実際の生活と結びつけやすいために、その場の空気感、身体の感覚、思い浮かぶ考えや感じる気持ちなどを一体的に想像することができることです。

通常では「あっという間」に過ぎてしまい、「じっくりと考える機会がない」場面や内容を取りあげて、それをしっかりと考えることによって価値を実感的に理解できるのです。

このように、「登場人物の視点から考えること」は、子どもたちにとって自然で分かりやすく、共感や生活とのつながりを生む効果的な方法なのです。


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☆本稿は次の書籍に掲載されています。

☆考察探究型には授業案集があります。



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