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イタリア在住日本人がタリンでラトビアTVのインタビューを受けるまで(上)

ラトビアTV1チャンネル(国営チャンネル)のスポーツ番組キャスターが、2025年1月にタリンで開催されたヨーロッパ選手権で、オリンピックに向けて、フィギュアスケート・ラトビア代表選手の密着取材をやっていました。撮りためた映像を最終的にドキュメンタリーにまとめたいそうで、そのためにタリンに来ているファンにインタビューをしたいとの申し入れがあって、すったもんだの末、そのインタビューを受けることになるいきさつです。


到着早々DMでの依頼を断る

2025年1月末、フィギュアスケートの欧州選手権を観戦するため、エストニアのタリンに向かった。私が住んでいるイタリア北東部の市から50キロぐらいの空港から、ライアンエアーの直行便が飛んでいるので、バルト三国に行くときはライアンエアーを使うと決めている。

日曜日の夜、2時間半程度で到着し、タリンに来るのは初めてではなく慣れたものなので、アプリのBoltでタクシーを呼び、空港から宿泊するホテルへ向かった。チェックインして部屋に入るとすぐ、空港で受信に気が付いたメッセンジャーをPCで開いてみた。応援しているラトビア選手の地元ファンクラブを運営しているイェレーナさんから、何やらメッセージが来ていたからだ。

「ラトビアTVのDavids Ernšternsさんが密着取材に来ていて、私たちが応援しているラトビア選手のファンで、インタビューできるような興味深い人を探している。あなたを推薦しても良いか?」と書いてある。

実は私はすでに2017年にヘルシンキで開催された世界選手権の時に、彼の取材を受けていた。その時は応援している選手のマネージャーから「日本のファンを取材したいそうなので、男子の試合後に集まってもらってほしい」とメッセージをもらい、日本のファンに呼び掛けた。だが、試合後のごった返した会場で短時間に集合するのが難しく、結局私の席の近くに座っていた知り合いの方々(必ずしも応援している選手のファンばかりではなかったのだが)に特別出演をお願いして、なんとか間に合わせた。

いつも同じ人を取材してもしょうがないのではないか(2017年に私が持っていたバナーや写真を使ったグッズなども撮影された)。TVだし、若くてかわいいファンの方が、見る方だって好ましいだろうと思い、自分以外を推薦することにした。ドイツ人でここ2シーズンぐらい熱心に現地に通っている大学生が今回も来ていることを思い出し、彼女なら見栄えもするし、英語もうまいから適役だと思いつく。自分が受けない理由を説明し、彼女の連絡先をイェレーナさんに送ってみた。

しかしすぐ返事が返ってきて「いろいろな国のファンを取材したいようなので、日本人か中国人が良いと思うのだけれど…」と書いてある。やっぱり。過去の経験から、ラトビアのメディアは日本のファンを取材したがることに気が付いたからだ。遠く離れた縁もゆかりもなさそうな国のファンが、自国の選手を熱心に応援するのが物珍しいのだろうか、過去に何度も取材の申し込みを受けているのだ。

そこで、現地に来ていると知っている中国人を紹介することにした。彼女は現在カナダ在住なので英語は問題ないはずだし、長く応援し、現地に行く回数も多い。今シーズンはほとんど、メディアに写真を提供するカメラマンとして会場に来ている。一方、現地に来ている日本人の方々の中に、顔が写るインタビューを英語で受けたいであろう人を思いつかなかったのも理由だった。

断ったものの、インタビューを受ける顔触れが不安になった

フィギュアスケートの欧州選手権は火曜日に公式練習が始まり、水曜日から試合が始まって土曜日に終わり、日曜日はエキシビションと呼ばれる、メダリストと招待された選手のアイスショーがある。試合だけではなく、試合が行われるメインのリンクと、練習だけに使うプラクティスリンクでの練習もある。毎日朝は7時台から練習が始まり、試合が終わるのは22時近いスケジュールなので、見るだけのファンもとても忙しい。

その合間に密着取材は順調に進んでいるようで、会場をかけ回るDavidsさんを何度も見かけた。水曜日に到着したイェレーナさんにもばったり会ったので、インタビューを受けるファンは決まったのか聞いてみた。予想通り彼女自身が入っていたが、あるハンガリー人ファンの名前を聞いてあっけにとられた。かつて問題行動があって、イェレーナさん自身がもうDMには返事をしないと言っていた若いファンだったからだ。そしてその彼女はほとんど試合に来ない。欧州選手権のような重要な試合に来るのは今回が初めてなはずだ。

なぜ彼女を??と不安に思った。イェレーナさんが運営するページのモデレーターをしていて、非常に熱心に投稿はしているが、その内容はほとんど他のソーシャルメディアからの転載なのだ。試合の情報をあげているのを見たことがない。

同じことがイェレーナさんにも言えた。彼女はFacebookにファンクラブのページを開設して運営し、選手のご両親の信頼も厚い。とても心根がやさしく頭も良い人なのだが、英語が話せない。文章での連絡は自動翻訳を使っていて問題がないようだが、(ロシア語が話せる人以外)他国のファンとの会話ができない。そして競技としてのフィギュアスケートの知識がほとんどない。Facebookの投稿内容も試合や出演情報はほとんどなく、画像や動画ばかり。現役選手を応援するファンクラブのページとしてどうなんだ、という疑問はずっと感じていたのだ。(自分が運営しているわけではないので、大きなお世話なのだが)

選手のお母様の切々とした願い

私が応援している選手は、3歳でフィギュアスケートを始め、9歳から外国でトレーニングをしている。15歳まではパリを拠点に、その後ロシアのソチに少しいて、その後ずっとスイスが拠点だ。義務教育を終えてからは、年に1回ラトビアに帰るぐらい、コロナの時期は2年半帰国できなかった。そのため、一人っ子なのにご両親が彼と過ごす時間はとても少ない。

欧州選手権は彼にとって一番大切な試合なので、ご両親も試合が終わるまでは彼とほとんど会わないようだ。お母様は非常に熱心で、特にラトビアのフィギュアスケート関係者や取材者への対応に気を配っている様子がよく分かる。そのお母様から、ラトビアTVの密着取材の目的が、オリンピックまでのドキュメンタリー制作であることを聞いた。Davidsさんは平昌オリンピック、北京オリンピックも現地で取材している。平昌の時は、前年の2017年世界選手権(オリンピックの出場枠が決まる試合)から現地に来て、その後トレーニング拠点、スイスまで行って取材した。その時の映像を使って(彼一人ではなかったが)ラトビアのロシア系スポーツ選手の短編ドキュメンタリーを作っていた。

もう何年も彼を取材しているDavisさんは、今度は彼が日本のアイスショーに行くときに同行して、日本での取材もドキュメンタリーに入れたいと希望しているらしい。最初にインタビューを断った時は、そんな壮大な構想があるとは知らなかったので(多分話を持ってきたイェレーナさんも知らなかっただろう)断って申し訳なかったなという気持ちになってきた。

「できるだけいろいろな国のファンがインタビューを受けて、英語の部分が多くなれば、それだけ国際的な内容になる。このドキュメンタリーはラトビア国内だけではなく、世界中のファンに見てもらいたい。そのために英語の字幕が付くことが重要なの。」とお母様は訴える。

お母様の気持ちはよく分かるし、私もそれに応えたい。しかし私自身、そこまで英語がうまいわけではなく、TVのインタビューで気の利いたことが言えるのか自信がない。それに自分の顔がアップでTV画面に写ることを考えると冷や汗が出てくる。嫌だ…

【私の応援スタンスを書いた記事です。よろしければこちらもお読みください。】