Nokton17.5mmF0.95|売れない大物

レンズを売ろうか。

4〜5年に一度考える。
近年はそのインターバルが短かくなっている。

動機はだいたい他の機材の資金。
例えばフルサイズや
主にムービーのために
新しい機種に乗り換えようかと悩むものの

高くて買えないような場合。

使用頻度が低いもの。
超望遠100-300mm。
これは要る。
そして必ず候補に挙がるのがこいつ。

Nokton17.5mmF0.95。

出番が少ないからだ。
当初NOKTONは、
25mmF0.95が華々しく登場した。
ボケないといちいちディスられる
マイクロフォーサーズ規格の中で、
希望に満ちた別格の存在として
大歓迎されたのが25mmだった。
そしてその熱狂冷めやらぬうちに
続いて現れたのが、この17.5mmだ。

玄人の皆さまからは、
お散歩レンズに最適だと讃えられていたのを
私は今でも忘れていない。

だが。
本当か?
小型軽量を謳うマイクロフォーサーズにあって、
決してそうとも言えない重量。
つまり大物。
そしてこれはさらに重要だったのだが、
F0.95でボカしたい者たちにとって、
広角を使ったらそこは
簡単に帳消しになってしまう。

しかしNOKTON。
名前がNOKTON。
屋内撮影でちょうどいいと思われるケースで、
私がこのレンズをカメラバッグから出しただけで、
クライアントから

「NOKTONですか!」

と一目置かれてしまう。

25mmとまとめてメンテナンスに出そうとすると
販売店スタッフから


「2本並んでるの、初めて見ました」


と言われて鼻が高かったこともあった。
これらは一重に、
ネームバリューの為せる技だ。

だからといって
必ず使えるとは限らないのが世の常。
一年のうち大半を防湿庫で過ごすこの大物は、
レンズ売却を考える度に
毎回候補に挙がっていた。

購入から7年が経ったある日、
私は決心した。
もう、売る。

名前だけで偉そうにしていられるほど
うちの防湿庫は甘くない。
買取業者に見せた。

査定。
沈黙。
じっくりと見る業者。
長い。
不安がよぎる。

カビていた。

私は動転した。
パニック。
たいして使ってもいないこのレンズがなぜ!

そこが落とし穴だった。
いくら防湿庫に入れていても、
使用頻度が低くても、
いや逆だ。
使用頻度が低いほどカビるという
このレンズ界の自然法則ともいうべき現実の前に、
私は項垂れた。

売ろうとしても市場に無視されるこの大物。

修理した。
金がないから売ろうとしたこのレンズに

もう一本買えてしまいそうなぐらいの修理代を払って。

こうなったら使うしかない。

35mmはお散歩レンズに最適だって?
ちがうな。
お散歩に使わないとまたカビるから使うレンズ。
私はスナップ常用に
この17.5mmF0.95を追加し、
定期的に使うようになった。

夕方だった。
私のお散歩コース。

願ってもない場面。
この日持っていたのがもし別のレンズ、
或いは他のNoktonだったら
こうは写らなかったのは自明だ。


自分にとっての名作を生んだレンズは、
手放すと後悔する。
そしてあの野望
このNoktonは、もう売れない。
売るわけにはいかない。

Nokton17.5mmF0.95。
売れないレンズ。
大物だ。


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