『風の至る場所』#4 | 散文詩的掌編小説
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『風の至る場所』第4話
「僕の全てと繋がる光の空間」
爽やかな優しい風に背中を押されているように感じながら、僕はさらに扉の先に進んでいった。
扉の中は、扉の外からみたものとは少し違っていた。というより、何歩か進むと、また違う空間に生まれ変わるようにも感じた。
同じなのに同じではなかった。
無機質ではなく、生き物に近いように感じた。
穏やかで温かい光の空間だった。
その温かさに心が和んだ。
爽やかな風が流れてくるのも心地よかった。
この空間に入った時から、僕の記憶の彼方とどこか繋がっている予感があった。
それは予感というより気配そのものだった。
その空間は記憶に留まらず、
僕の全てと繋がっているようだった。
僕の心は気づくと弾んでいた。
僕は大きな期待を胸に、その空間の新鮮な空気を肺でたっぷりと味わった。
僕の心は、希望という光に包み込まれていた。
「癒し」
僕は僕の心が深く癒されていくのを感じていた。光の空間は、僕の全てと繋がっているようなのに、その癒しの力がどこから湧いているのかわからなかった。それは風のようだった。
水のようだった。空気のようだった。
太陽のようだった。温かかった。
とにかく僕にはオアシスのような場所だった。溢れ出る恵みの水を全身で味わっているようだった。黒い汚れが流れ落ちていくのを感じていた。心が軽くなって、身体が舞い上がるようだった。全身にちゃんと力が入り、足取りが力強いものになった。
弱っていた肺も、本来の機能を取り戻し始めているようだった。
僕はとても嬉しかった。
もう一度生まれ変われるような感覚がしたのを、今でもはっきりと覚えている。
いつの間にか、
僕はその空間で眠りについていた。
とても長い時間、その場所で僕は眠っていた。
随分長く、夢をみていたように思う。
眠っている間にも漆黒の闇に疲弊していた心と身体が、ゆっくりと癒されていった。
「君が届けてくれたから」
溺れる君が、
失った先にしか見えない景色があった。
僕はいま、過去を思い出していた。
絶望ではない。
再生に至るまでの軌跡だったんだ。
君はずっと、
その道を歩んでいたんだ。
苦しくても苦しくても、
君は生き延びるための
呼吸を忘れていなかった。
どこまでどこまでも自分であり続けた。
だからこそ、
この空間に辿り着けたんだ。
僕は君のことを静かに祝福したい。
だれに称賛されるわけでもない。
でも僕は君のことを知っている。
自分自身であることを選び続けた先に、
僕と君は出会えた。
自分の風であることを、
君が諦めなかったから、
その先に、
この空間があったことを、
ずっと覚えているよ。
よくがんばったね。
ここから君の風は、
世界を美しいものに変えていくんだ。
風に触れた者を癒していくんだ。
だからどうか、
いつまでも、
僕と君の風を忘れないでいて。
だれよりもあなたが、信じていて。
痛みも涙も風に変わってゆく。
僕を優しく祝福してくれるように、
淡く光る水色の花の海が爽やかな風に揺れる場所で、深く美しい藍色の蝶たちが命の輝きを光の粒子へと変えながら、僕の眠る傍らで静かに舞い続けていた。
僕が自分として生き抜いた時間があったことを、その花々と蝶たちは慈しむように知ってくれているようだった。
執筆 2026.4.14 / 編集 2026.7.1
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