経理をAIに渡すとき、最初にやったのは「入り口を作ること」でした
前回の記事で、うちがAIに渡している仕事を全部並べました。今回はそこから経理だけを取り出します。
先に書いておくと、きれいに渡せた話ばかりではないです。ただ、つまずいた場所のほうが渡し方としては役に立つ感じがするので、そこも書きます。
締め切りが動かないので、ここから渡しました
一覧の中で最初に渡したのが経理でした。理由は単純で、締め切りが動かないからです。
売上の分析は来週でもいい。経理は待ってくれません。しかも毎月おなじことをやるし、誰かが必ずやらないといけない。こういう仕事は人の予定を先に押さえてしまうので、月末が近づくと他の用事がぜんぶそこへ寄っていきます。
もう一つ理由があって、私自身が一番おっくうだったのがここでした。
「会計ソフトに繋いだら終わり」だと思っていました
うちは会計freeeを使っています。銀行やカードを繋げば明細が自動で流れてくるので、渡すのは簡単だろうと思っていました。繋がっている口座については、だいたいその通りでした。
つまずいたのは、繋がっていないほうです。
自動取込に対応していない銀行が、うちには何口かあります。そこの明細は何年ぶんも会計ソフトの中が空白のままでした。通帳は手元にあるのに、帳簿には無い。
ここで前回書いた話に戻ります。AIに人の手順を真似させるより、機械が通れる入り口を1つ足すほうが速い、というやつです。経理はその見本みたいなものでした。
やったのは、通帳のコピーをPDFで置いてもらって、それを書き起こして、会計ソフトの「登録待ち」に並べるところまで。仕訳はしません。自動取込のある口座と、同じ状態にそろえるだけです。そこから先は、もともと会計ソフト側にある自動登録のしくみが拾ってくれます。
「AIに経理をやらせる」というより、「入り口の形をそろえさせている」のほうが近いと思います。
書き起こしには安全弁を1つ付けました。通帳には1行ごとに差引残高が載っているので、前の行の残高に金額を足し引きした数が、その行の残高と合うか。これを一応、全部の行で確かめます。1桁でも読み違えれば、必ずどこかで鎖が切れる。1件でも合わなければ投入しません。
写りの悪いスキャンで数字が読めないこともありました。そういう時は粘らせずに、通帳を開いてスクショを撮ってもらいます。金額を推測で埋めるくらいなら、人に1分使ってもらったほうがいい。

つまずいた話をもう一つ。会計期間の外、つまり前期の日付で明細を入れたら、作成そのものは成功しているのに画面に1件も出てこない。しばらく「入っていない」と思って原因を探していました。会計ソフトの画面が当期しか表示しない仕様だっただけです。私の勘違いです・・・。
これはAIのせいではなくて、前提を確かめていなかっただけなんですよね。
店名の入らない明細は、別の鍵で当てる
デビットカードの支払いが、銀行の明細では店名なしで入ってくることがあります。番号らしき文字列と金額だけ。これだと科目の当てようがないので、そのぶんが毎月「登録待ち」に残っていきます。気づくと、けっこうな数が溜まっていました・・・。
解いた方法は地味です。カード側の利用明細のほうには店名が入っているので、それと照らし合わせる。ただし日付では合いません。銀行に明細が立つ日と、カード側の利用日がずれるからです。うちの場合、0〜7日ずれていました。
鍵にしたのは承認番号です。両方に同じ番号が載っていて、1対1で対応する。日付でも金額でもなく、これで当てます。
〘IMG2〙

やっていることは、さっきの入り口の話と同じでした。AIにがんばって推測させるのではなくて、確実に一致する鍵を1本見つけて渡す。鍵さえ決まれば、あとは機械の仕事です。
店頭のカード決済も同じで、入金1本ごとに振込のIDが付いているので、その単位で照合しています。前は7日ごとに手で集計していたのですが、その集計と実際の入金額はわずかにずれていました。手でピボットを作っている限り、この種の誤差は消えないと思います。
AIが入れたものには、印が付けてあります
これは早い段階で決めました。AIが起こした仕訳には、例外なくタグを1つ付ける。付いていないものは人が入れたもの。
理由は、間違いそのものより「どこを間違えたか分からない」ほうが怖いからです。帳簿は最後に税理士が見ます。その時に、AIが入れた分だけを画面で絞り込めないと、確認のしようがない。
同じ理由で、読めなかったレシートは記帳しません。飛ばして、撮り直しに回します。カード払いのレシートも記帳しません。連携している明細のほうで同じ支払いが入ってくるので、両方やると二重になる。分からない時は止まる、を守らせています。
どれを正典にするか決めないと、静かに間違う
今回いちばん書きたかったのはここかもしれません。
借入がいくつかあって、その残高を資金の一覧に出しています。ある時、その残高が実際よりだいぶ多く出ていることに気づきました。原因は、残高を「前月の残高から今月の返済額を引く」で毎月つないでいたことでした。
引き算のつなぎは、一度ずれると自力では戻りません。しかも毎月ずれが増えていくので、見ていても気づけない。
直し方は、引き算をやめることでした。借入には返済予定表(償還表)の現物があって、開始月と毎回の元金と回数さえ分かれば、どの月の残高も計算し直せます。残高の正典は返済予定表。と決めました。
ついでに分かったのは、会計ソフトに載っている借入金の残高も当てにならないということです。あれは決算のときにしか直らないので、期の途中はだいたい実態と違う。会計ソフトに入っているから正しい、ではなかった。
AIに任せる時、ここは人が先に決めておかないといけない場所だと思います。同じ数字が2か所以上にあると、AIは疑いません。どちらかを見て、そのまま堂々と答えを出してきます。どっちが正典かを決めていないと、静かに間違う。

もう一つ、返済の明細は元金と利息に分けないといけないのですが、会計ソフトの自動ルールは1つの明細につき1行しか作れません。元金は毎回固定で、利息のほうが変わる。だったら明細の総額から元金を引けば利息が出る。この引き算だけをAIにやらせて、ルールで割り切れないところを後ろに1工程足しています。部門ごとに費用を分ける按分も、同じ理由で後工程です。
人が残っているところ
正直に並べます。
振込の実行
会計ソフト側で「ルール適用」を押すところ
最終確認(税理士)
振込は当然として、真ん中のクリックは会計ソフト側の仕様です。明細の消し込みは外から操作できないので、ルールを作るところまでAIがやって、押すのは人。最初は不便に思いましたが、いまはこれでいいと思っています。お金が動く直前に人が1回挟まる形になっているので。
あと、経理は毎日は走らせていません。私が声をかけたときだけ動きます。毎朝自動で回す案もあったのですが、誰も見ていない時間に帳簿を書き換えられるのが嫌でやめました。溜まっても決算までに直れば実害は小さい。気づけないほうが高くつく感じがします。
同じ業務が無い会社でも、たぶん流用できます
経理の話として書きましたが、やったことを並べ直すと、業務の中身とはあまり関係がないものばかりでした。
機械が通れる入り口を足す
照合の鍵を、確実に一致するものに替える
AIが触ったものに印を付ける
どれが正典かを先に決める
合わなければ止める
ここまで用意してから渡すと、AIの側はわりと素直に動きます。逆に、この用意をせずに「経理をお願い」と投げると、それっぽい答えは返ってくるのに、後から数字が合わない。私は一度それをやりました。
もし試すなら、口座1つ、費目1つくらいの小さい範囲から始めるのがいいと思います。全部を一度に渡すと、合わなかった時にどこが原因か分からなくなるので。うちも、はじめは1つの口座の登録待ちを片付けるところからでした。
次は営業のあたりを書く予定です。あちらは判断が入るぶん、経理ほどきれいには渡せていません。
株式会社Grid Linksでは、こうして自社で実際に使っているAIの型を、そのまま中小事業者向けに導入支援しています。すでにお使いの仕組みはそのまま、そこにある情報をAIに渡して組み上げます。
連載・第1回(うちがAIに渡している仕事を、全部並べます):https://note.com/aoki_hayama/n/n11f7fbf1e7f9
その前の記事(「パソコン使える?」「エクセル使える?」「AI使える?」):https://note.com/aoki_hayama/n/n50bb9d6f045e
Grid Office(AIチームまるごと一式):https://grid-links.com/ai-support/grid-office/
Grid Memo(Gmailの上で動く共有ノート):https://grid-memo.com/
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