食の話は、なぜ人柄まで見えてしまうのか――Podcastが面白くなる理由
最近、「長谷川あかりのシャニカマでごめんなさい」というPodcastをよく聞いている。
食をテーマにした番組なのだけれど、聞いていて面白いのは、「この料理がおいしい」とか「この店がおすすめ」といった情報そのものではない。
むしろ面白いのは、食をきっかけに、二人の価値観や感性が次々と表に出てくることだ。
食は、価値観を語るのにちょうどいい
食というテーマは不思議だ。
ほとんどすべての人にとって身近なものなのに、実際に話してみると、その人なりのこだわりがかなり出る。
ポテトは細い方がいいのか、太い方がいいのか。何を家で食べたいのか。流行している食べ物にどう向き合うのか。
一つひとつは、ものすごく些細な話である。
でも、その些細な好みの中には、生活習慣や美意識、自意識、その人なりの「こうであってほしい」が意外と表れる。
一方で、仕事観や恋愛観、人生観について価値観をぶつけるほど重くもない。
「私はこう思う」「いや、私はこっちが好き」と違いが出ても、深刻な対立にはなりにくい。
自己開示としては軽いのに、人となりはちゃんと見える。
食は、価値観について話すための題材として、かなり絶妙なのだと思う。
どうでもいいことを、一生懸命話す面白さ
そして「シャニごめ」では、その些細な価値観をものすごく真剣に話す。
「そこ、そんなにこだわる?」
と思うようなことを、かなりの熱量で話している。
これが面白い。
本来なら一言で終わるような好みを掘り下げていくことで、その人独特の感覚が見えてくる。
そして聞いている側にも、
「それ、わかる」
「私は逆だな」
「そんなこと考えたことなかった」
という反応が生まれる。
情報を受け取っているというより、他人の価値観を聞きながら、自分自身の価値観まで確認している感覚に近い。
仲のいい二人だから、価値観が会話になる
これが一人喋りではなく、仲のいい二人の会話であることも大きい。
長年の関係性があるからこそ、二人の間にはすでに共通言語がある。
片方が何かを言えば、もう片方がすぐ反応する。そこから話が広がり、脱線し、また戻ってくる。
掛け合いがリズミカルで、単純にトークとして面白い。
男性芸人の仲のいいコンビが話しているPodcastを「放課後の部室」に例えるなら、この番組は少し違う。
私には、女子高生が放課後のファミレスで延々と話している会話を、隣の席から聞いているような感覚がある。
今日あったこと、食べたもの、「これってどう思う?」という小さな違和感。
大きな結論は出ない。
でも、そのどうでもいい話がずっと面白い。
内輪なのに、閉じていない
仲のいい人同士の会話は、ともすると内輪ノリになりやすい。
二人だけにしか分からない話が増えれば、外から聞いている人は置いていかれてしまう。
でも、この番組には内輪感がありながら、ちゃんと外への入口がある。
リスナーから届いたメールを紹介したり、そこからトークテーマが生まれたりする。
そして何より、二人とも「人に向けて話す」ということを自然に意識しているように感じる。
だから、本当に仲のいい二人が完全にプライベートな会話をしているわけではない。
本当に仲のいい二人が、その親密さを残したまま、外に開かれた会話をしている。
この距離感が心地いい。
覗き見している感覚はあるけれど、盗み聞きしている感じにはならない。
「ここにいてもいいよ」と言われているような空気がある。
優しさがあるから、居心地がいい
もう一つ、この番組を聞いていて感じるのが、会話のベースにある優しさだ。
価値観の違いはある。
でも、それを正しさの競争にしない。
「私はこう思う」と言えるし、「それは分かる」と受け止めることもできる。
誰かを強く否定したり、攻撃したりすることを笑いの中心に置かなくても、会話はちゃんと面白い。
だから聞いている側も疲れない。
笑えるし、共感できるし、居心地もいい。
食について話しているようで、人について聞いている
考えてみると、「シャニごめ」で聞いているのは、食の話だけではないのかもしれない。
食という軽いテーマを通して、二人が何を好きだと思うのか、何に違和感を持つのか、どういうことを面白がるのかを聞いている。
つまり、食について話しているようで、人について聞いている。
そして、それを仲のいい二人が共通言語として転がしていくから、価値観の提示そのものがエンターテインメントになる。
「おいしいものを教えてもらうPodcast」ではない。
食という誰にとっても身近なものを使いながら、他人の価値観を覗き、自分の価値観まで少し確認してしまうPodcast。
そこに、長年の友人同士の掛け合いと、優しさと、普通に面白いトークが乗っている。
だから私は、この番組をかなり稀有だと感じるのだと思う。
もっと流行ったらいいのにな、と願ってやまない。
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