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「うまくいかない」を、個人のせいで終わらせない - チームを成果に導く2つの力 -

期待した通りに物事が進まない。
メンバーが思ったように動いてくれない。
チームの空気が重い。
同じ問題が、何度も形を変えて起きる。

そんなとき、私たちはつい「これをすれば解決する」という、一発で効く薬のような解決策を求めてしまいます。そして問題の原因を特定の個人の要因のみにしてしまうこと、あると思います。

「スキルが足りない」
「やる気がない」
「スタンスに問題がある」
「あの人の性格だから仕方ない」
「あの人が間違ったことをしたからだ」

そうやって、問題を個人の要因として捉えることは、とてもわかりやすいです。そして、「もっと頑張って」「スキルを上げて」「意識を変えて」そういった言葉がけをして、なんとなく対処した気になります。

一見すると解決して良い方向に向かっているようにも思えます。

本当にそれだけが原因なのでしょうか?
そして、本当にそれだけで解決するのでしょうか。

組織や人に関わる問題は、そんなに単純ではありません。
状況は複雑で、日々変化していきます。関わる人も、立場も、感情も、背景も違います。

そんな中で、「これだけやっておけば大丈夫」という万能な解決策は、ほとんどありません。もし本当にそんなに簡単なら、とっくに解決しているはずなのです。

マネジメントの仕事とは何だろう

マネジメントというと、「指示を出すこと」「管理すること」「評価すること」だと思われがちです。

もちろん、それらも仕事の一部ではありますが、「リーダーやマネージャーにとって、大切なことは何だろう?」と考えたとき、現場でマネジメントの経験を振り返ると、マネージャーの仕事の本質は、

「人や組織が本来の力を発揮できる状態をつくること」ではないか、ということです。

人を無理やり動かすのではなく、人が自ら考え、動ける状態をつくる。組織が無理なく前に進める状態をつくる。そのためにリーダーやマネージャーに必要なのが、「思考する力」と「対話する力」です。

問題は、一つの原因では起きていない

現場では毎日、さまざまな問題が起こります。

売上が下がる。スタッフが辞める。お客様からクレームが入る。
チームの雰囲気が悪くなる。情報共有がうまくいかない。
誰かが期待通りに動けない。

そんなとき、多くの組織ではすぐに答えを探そうとします。

「教育不足だった」
「ルールを増やそう」
「人を採用しよう」

もちろん、それで改善することもあるかもしれません。ですが、多くの問題は、一つの原因で起きているわけではありません。

人間関係、役割、情報共有、仕組み、評価、価値観。さまざまな要因が複雑に絡み合った結果として、目の前の問題が現れています。

だからこそ、表面的な現象だけを見て判断すると、本当の原因を見失ってしまいます。

臭いものに蓋をするような対応では、問題は姿を変え、また別の場所で同じ痛みとして現れるだけなのです。


私は、組織の課題を見るときには、次の3つの視点が大切だと考えています。

1つ目は、個人です。
スキル、知識、経験、モチベーション、適性など、その人自身に関わる要素です。

2つ目は、関係性です。
上司と部下のコミュニケーション、メンバー間の信頼関係、部署間の連携、心理的安全性など、人と人の間にある要素です。

3つ目は、構造・仕組みです。
評価制度、業務プロセス、役割分担、権限の所在、リソース不足、ルールや仕組みそのものに関わる要素です。

大事なのは、個人要因だけで思考を止めないことです。
もちろん、個人を見ることは必要です。でも、個人だけを見て終わってしまうと、問題のほんの一部しか見ていないことになります。

本当に考えるべきなのは、個人、関係性、構造のどこに何が起きているのか。そして、それぞれがどのように影響し合っているのかです。

仕事や組織で起きる問題の多くは、個人だけに起因しているわけではありません。むしろ、個人の問題に見えているものほど、実は関係性や構造の問題による部分が大きいということが少なくありません。

個人の努力不足に見えていたものが、実は関係性のこじれだった。
個人の能力不足に見えていたものが、実は構造の欠陥だった。

そういうことは、本当によくあります。

必要なのは、「考える力」

だからマネージャーには、すぐ答えを出すよりも先に「考えること」が求められます。

なぜそうなったのか。何が起点だったのか。
誰が困っているのか。どこで認識がズレているのか。

どんな構造が、この問題を生み出しているのか。
「見立てる」ということをします。物事を一面的に見るのではなく、多面的に捉え、本当の課題を見極めることです。

今の時代は、以前にも増して複雑で、多様です。

「これをすれば解決する」という単純な問題は、すでに仕組みやシステム、あるいはAIが解決してくれます。それでも今なお残っている問題は、関係性に関わる複雑な課題です。

だからこそ、「どう捉えるか」が大事ですし、紐解くような作業が必要です。

考えるだけでは、組織は変わらない

しかし、どれだけ深く考えても、一人では限界があります。そして、どれだけ正しい答えを持っていても、それだけでは組織は動きません。

そこで必要になるのが、「対話」です。
ここでいう対話とは、単に話すことではありません。相手の考えを知り、自分の考えを伝え、お互いの認識を揃えていくことです。

人はそれぞれ、見えている景色が違います。

現場には現場の景色があり、
管理職には管理職の景色があり、
経営者には経営者の景色があります。

問題の多くは、能力不足ではなく、この景色の違いから生まれています。だからリーダーやマネージャーは、それぞれの景色を行き来しながら翻訳する役割を担います。

社長が本当に伝えたいことは何か。現場は何に困っているのか。お互いは何を誤解しているのか。どこで前提がズレているのか。

その違いを言葉にし、お互いが理解できる状態をつくることが、マネージャーの大切な仕事なのです。

「聞くこと」と「承認すること」は、対話のベース

では、どうすれば良い対話が生まれるのでしょうか。

私は、そのための技術が「聞くこと」と「承認すること」だと考えています。人は、自分の考えを話すことで、自分自身の思考を整理します。だからマネージャーは、答えを教える人ではありません。問いを投げかけ、相手が自ら考えられる状態をつくる人です。

「どう思った?」「何が起きていた?」

「一番困っていたことは?」「もう一度やるなら、どうする?」

こうした問いは、相手の思考を引き出します。

そして、その考えや努力、成長を承認することによって、人は安心してさらに考え、挑戦できるようになります。

自分の言葉を否定されずに最後まで聞いてもらえる体験は、「あなたの考えには価値がある」というメッセージになります。

具体的な承認は、相手に「見てもらえている」という感覚を与えます。

「あの会議の資料、データの整理がとてもわかりやすかった」
「最近、後輩のフォローを自分からしてくれているね」
「前回よりも、相手の立場を考えて話せていたと思う」

結果だけでなく、プロセスや変化を見て、言葉にして伝える。聞くことと承認することは、それ自体が目的ではありません。思考と対話を機能させるための技術です。

思考のために対話し、対話してさらに思考する

考えることで、良い問いが生まれる。対話することで、新しい情報や視点が得られる。その新しい視点をもとに、さらに考える。思考のために対話し、対話してさらに思考する。この往復を繰り返すことで、一人では見えなかった本質が見えてきます。

マネージャーが見立て、対話し、また考える。
現場も考え、話し、また考える。

この循環が組織全体に生まれると、共通理解が育ちます。

共通理解は判断基準となり、判断基準が揃うことで、一人ひとりが自ら考えて動ける組織になっていきます。

強い組織とは、誰か一人がすべてを指示する組織ではありません。一人ひとりが状況を理解し、自分で考え、周囲と対話しながら前に進める組織です。

才能ではなく、技術だからこそ身につけられる

振り返れば、私が身につけてきたものは、才能ではありません。

考え方であり、技術でした。

多くの上司や先輩、仲間から教わり、失敗を繰り返しながら、一つひとつ身につけてきたものです。だから私は今、どんな業界でも、知らない組織でも、チームをまとめる役割なら引き受けられると思っています。

業界が違っても、人が違っても、本質は変わらないからです。マネジメントは才能ではなく、学ぶことができる技術です。

物事を多面的に見ること。
個人だけでなく、関係性や構造を見ること。
相手の話を聞くこと。
具体的に承認すること。
共通理解をつくること。

これらは、生まれ持った性格ではなく、意識して磨ける力です。

その技術は、会社を経営する人や管理職だけのものではなく、

誰かと一緒に成果をつくる人、チームで仕事をする人、後輩を育てる人、組織の中で何かを前に進めたい人、そういうすべての人にとって、必要な技術だと思います。

「うまくいかない」と感じた時に

誰かが期待通りに動いてくれないと感じている。
チームや組織に停滞感がある、と感じるなら、まずは、個人のせいで終わらせないこと。

その人のスキルや姿勢を見ることは必要ですが、そこで止まらない。

関係性に何が起きているのか。
構造にどんな無理があるのか。
誰と誰の認識がズレているのか。

どこに対話が足りていないのか。
どんな承認が失われているのか。
そうやって、視野を広げてみてください。

本当に解くべき問いを立てること。
人と対話しながら認識を揃えること。
組織として納得できる答えをつくること。考え続けること。 対話し続けること。その積み重ねが、人を育て、組織を強くしていくのだと思います。

だからこそ私は、現場で学び続けてきたこの「思考と対話の技術」を体系化し、一人でも多くの人に届けていきたいと思っています。

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