シャンプーは、何を洗っているのか?
毎晩、髪を洗う。
そう言う。
でも、少し変な言葉だ。
シャンプーを手に取って、泡立てて、指を動かしている場所を考えてみる。
そこには、「髪」と「頭皮」がある。
当たり前だ。ただ、この二つ。
同じ場所にあるだけで、まったく同じものではない。
頭皮は、血流があり、皮脂が分泌され、汗をかき、
角層があり、刺激に反応する。
生きた皮膚だ。
一方、頭皮から外に出ている毛幹は、主にケラチンからなる繊維で、すでに生物学的には死んだ組織である。
つまり私たちは毎晩、
「皮膚」と「繊維」を、
一本のシャンプーで同時に洗っている。
そう考えると、少し話が変わってくる。
そもそも、シャンプーは何を洗っているのだろう。

シャンプーが洗っているのは、「汚れ」だけではない
夕方、髪が少し重くなる。
頭皮を触ると、なんとなくベタつく。
すると、「汚れた」と感じる。
でも頭に存在するのは、単純な「汚れ」だけではない。
皮脂。汗。剥がれ落ちた角質。
空気中の粒子。スタイリング剤。
そして、それらが混ざったもの。
シャンプーの中心的な役割は、こうした水だけでは落としにくい物質を、界面活性剤の働きによって洗い流しやすくすることにある。
ここまでは、たぶん想像通りだ。
話は、ここからだ。
皮脂は、「悪いものが頭皮に付着した」のではない。
自分の身体が、自分で出したものだ。
だから、シャンプーは、身体から出てきたものを、
身体の表面から取り除く行為でもある。
では、どこまで取れば「清潔」なのか。
実はここに、絶対的な決まりはない。
「キュッキュッ」は、清潔の音ではない
食器なら、油が残っていない方がいい。
床なら、汚れがない方がいい。
だから私たちは、そのイメージを
身体にも当てはめている。
ベタつきがなくなる。
キュッとする。
強い爽快感がある。
すると、「よく洗えた」と感じる。
でも、頭皮は皿ではない。
髪も、床ではない。

ISSUE 15で書いたように、
皮脂があることと、
頭皮が十分に潤っていることは同じではない。
そして逆に、皮脂が少なければ少ないほど、頭皮の状態が良くなるわけでもない。
洗う目的は、「何も残さないこと」ではない。
その時点で不要になったものを、適切に落とすこと。
この違いは、かなり大きい。
では、「毎日シャンプー」は洗いすぎなのか
ここは、検索すると意見が割れやすい。
「毎日洗うと皮脂を取りすぎる」
という話もあれば、
「毎日洗った方がいい」
という話もある。
結論から言うと、「毎日=洗いすぎ」
とは言えない。
2021年に発表されたアジア人を対象とした研究では、週5〜6回程度洗う人で頭皮・毛髪状態への満足度が高く、比較試験でも、週1回より毎日洗浄した群の方が複数の評価項目で良好だった。
少なくとも、
「毎日シャンプーをすると、それだけで頭皮や髪が悪くなる」
という単純な話ではない。
ただし、この研究にはシャンプーメーカーの研究者が参加し、研究費も企業が負担している。さらに、対象となったのは特定のアジア人集団だ。
だから、「全員、毎日洗うのが正解」とまで言うのも違う。
皮脂量。汗をかく量。
髪の長さ。スタイリング剤。
運動。季節。
頭皮の状態。
必要な洗浄頻度は、こうした条件で変わる。
重要なのは、「毎日か、2日に1回か」
という数字だけではない。
何を、どの程度、どうやって洗っているか。
そこまで見ないと、洗い方は判断できない。
実は、「洗う場所」を間違えているかもしれない
ここからは、今日から使える話をしよう。
シャンプーするとき、髪そのものを一生懸命こすっていないだろうか。
特に男性は、短髪だと、頭全体をひとつの物体のように洗いやすい。
手のひらで、ワシャワシャ。
毛先まで、全部同じ強さ。
でも、主に皮脂や汗が生まれている場所は、毛先ではない。
頭皮だ。
もちろん、髪にも皮脂やスタイリング剤、外部からの付着物は存在する。
だから髪を洗う必要がない、という意味ではない。
ただ、頭皮と毛幹を、同じ強さで摩擦する必要はない。

毛髪表面には、キューティクルがある。
摩擦や化学的処理などによって、毛髪表面の状態は変化する。
特に、髪が長い。
カラーをしている。
パーマをしている。
乾燥している。
こうした髪では、「もっと強く洗う」ことが、
必ずしもメリットにはならない。
シャンプーするとき、意識を向ける場所は頭皮。
髪は、泡とすすぎが通過していく。
このくらいの感覚で考えると、かなり分かりやすい。
泡の量は、「洗浄力メーター」ではない
もう一つ。
泡立たないと、洗えていない気がする。
だから、シャンプーを追加する。
さらに泡立てる。
でも、泡の多さと、必要な洗浄ができているかは、
完全に同じものではない。
シャンプーには、複数の界面活性剤やコンディショニング成分などが組み合わされている。
泡立ちは、製品の使用感を左右する重要な要素ではある。
ただ、「泡が多い=頭皮がより清潔」
という単純なメーターではない。
むしろ、最初にお湯で十分に髪と頭皮を濡らしておく。
その上で、必要量を使う。
そして、頭皮へ行き渡らせる。
最後に、きちんとすすぐ。
派手ではないけれど、この方が重要だ。

「洗浄力が強いシャンプー」と「弱いシャンプー」、どちらがいい?
これも、答えを一つにすると間違える。
皮脂が多い人。
整髪料を毎日使う人。
汗をよくかく人。
一方で、
頭皮が刺激を受けやすい人。
乾燥を感じやすい人。
必要なものは、同じとは限らない。
シャンプーは、「強いほど落ちるから優秀」でも、
「弱いほど頭皮に優しいから優秀」でもない。
必要なものが落ちて、不必要な刺激をできるだけ増やさない。
結局、そのバランスだ。
そして、
「サルフェートフリーだから絶対に優しい」
「天然成分だから安全」
「高級だから頭皮にいい」
こうしたラベルだけでも、本当のところは判断できない。
シャンプーは、界面活性剤だけで作られているわけではなく、複数の成分とその配合によって製品として成立している。
一つの成分名だけを見て、シャンプー全体の性質を決めるのは難しい。
今日の夜、変えるなら3つだけ
ここまで読んで、シャンプーを買い替える必要はない。
まず、今日の洗い方を少し観察してみてほしい。
一つ目。
洗っている場所を、
「髪」から「頭皮」へ少し変える。
爪を立てず、指の腹を使って、
頭皮全体へ洗浄剤を行き渡らせる。
二つ目。
髪そのものを、必要以上に擦らない。
特に毛先は、
頭皮と同じようにゴシゴシ洗う必要はない。
三つ目。
洗った時間より、すすぎを雑にしない。
耳の後ろ。
生え際。
後頭部。
泡が見えなくなったから終わり、ではなく、
頭皮全体をお湯が通ったかを確認する。
この3つ。
新しいシャンプーも、特殊なブラシも、
必要ない。
まず、自分が毎晩何を洗っているのかを知る。
それだけで、シャンプーという行為は少し変わる。
頭皮がかゆいなら、「もっと洗う」の前に考える
ここは重要なので、最後に触れておきたい。
頭皮がかゆい。
フケが出る。
赤い。
すると、「汚れているのかな」
と思って、洗浄を強くする人がいる。
でも、かゆみやフケ、赤みの原因は一つではない。
脂漏性皮膚炎。
乾燥。
接触皮膚炎。
乾癬。
その他の皮膚疾患。
「洗えていないから」と自己判断して、
ひたすら洗浄を強くするのは避けたい。
症状が続く。
赤みが強い。
湿疹がある。
痛みがある。
大量のフケが続く。
こういう場合は、シャンプー選びやヘッドスパより、皮膚科で状態を確認する方が先だ。
ヘッドスパは、皮膚疾患を診断したり、治療したりするものではない。
毎日やっているのに、ほとんど考えたことがない
シャンプーは、たぶん人生で何千回もする。
でも、その割に、
何をしているのか考える機会は少ない。
「髪を洗う」
その一言で、全部まとめてしまっている。
でも実際には、皮脂をつくる皮膚と、そこから伸びた毛髪を、同時に扱っている。
だから、
清潔か不潔か。
毎日か2日に1回か。
強いシャンプーか弱いシャンプーか。
そんな二択だけでは、少し足りない。
今夜、シャンプーを手に取ったとき。
「髪を洗おう」
ではなく、
「今日は、どこを洗うんだっけ」
と、一度だけ考えてみる。
たぶん、手の動きが少し変わる。

30秒でわかる|シャンプーは髪と頭皮、どちらを洗う?
シャンプーは、頭皮と毛髪の両方を洗浄するものです。
ただし、頭皮は皮脂や汗などが生じる「皮膚」であり、毛幹は主にケラチンからなる「繊維」で、同じものではありません。
そのため、髪全体を強く擦るより、頭皮へ洗浄剤を行き渡らせ、毛髪には不必要な摩擦を増やさないという考え方が合理的です。
毎日洗うこと自体が必ず「洗いすぎ」になるわけではなく、皮脂量、汗、整髪料、髪質、頭皮状態などに応じて考える必要があります。
Azabu Re.TREAT
Azabu Re.TREATは、麻布十番のプライベートヘッドスパです。
頭皮を「とにかく洗う場所」としてではなく、髪や皮膚を含めた、自分の身体の一部として見る。
そのための時間も、ヘッドスパの役割の一つだと考えています。
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好きな香りが、しばらくすると消える。鼻はなぜ『慣れる』のか。
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呼吸は、自分でしているのか。意識と自律神経の境界。
眠っている間も、呼吸は止まらない。
でも今、「深く息を吸ってください」と言われれば、自分で変えることができる。
勝手に動いているのに、自分でも動かせる。
呼吸は、いったいどちら側にあるのだろう。
REFERENCES
・Cornwell PA.
A review of shampoo surfactant technology: consumer benefits, raw materials and recent developments.
Int J Cosmet Sci. 2018;40(1):16-30.
PMID: 29095493.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29095493/
・Punyani S, Tosti A, Hordinsky M, et al.
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PMID: 34055906.
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・The Shampoo pH can Affect the Hair: Myth or Reality?
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・Draelos ZD, et al.
Shampoo and Conditioners: What a Dermatologist Should Know?
Indian J Dermatol. 2015.
PMID: 26120149.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26120149/
※本記事は頭皮・毛髪・シャンプーに関する一般的な情報提供を目的としています。持続するかゆみ、赤み、湿疹、痛み、強いフケなどがある場合は、皮膚科などの医療機関へご相談ください。
