射撃戦事始め(完結編2)
電暦拾遺、九回目です。
今回は「射撃戦事始め(完結編1)」の続き、完結編の「2」となります。
まず、前回のおさらいを。
ついに、かねてからの懸案であった「実際に撃ち合う中での的確な行動(特に回避)選択が難しい」問題に向き合うことになり、特に、飛来する弾を適切に認知できない現象の解決に本腰を入れるようになりました。
「撃たれて・飛んでくる」弾、という情報をプレイヤーにどのように伝える必要があるのか。
検討した結果、弾の飛翔シーケンスについて、これを何段階かのステップに分割、各ステップでプレイヤーの認知を促すために重要となる情報を割り出しました。そして、その情報提供を効率化するためのパラメータ制御法を模索します。学生時代に学んだ数学のありがたみを痛感しつつ、限界反応フレーム数などの指標をもとに、やがてパラメトリックなアプローチへの展望を見い出すことになりました。
おさらいはここまで。
以下、本編となります。
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FPSとの決別~アクション詰め将棋への道
作業が軌道に乗ってくると、自分たちのゲームがどういった形に仕上がっていくのか、ある程度の精度をもって見通せるようになってきます。ゲーム性の根幹に関わる大きな変化が生まれると確信したのも、この頃でした。
前回までの話からもお分かりいただけるように、私は「避けられる弾」をつくろうとしていました。
撃たれたことを目視してから避けられる弾(※1)。
これの実装が、TPSやFPSにまだ馴染みのないアーケードのプレイヤー層に対して、初見でも直感的なプレイを容易にしうる(当時としては最善の)ソリューションであると考えたからです。
しかし、これは既存のFPSに実装されている弾とは根本的に設計思想の異なるものです。FPSの場合、ゲーム上のスキルについては、マヌーバリングからエイミングに至るまでの挙動に重きが置かれています。エイミングまでがしっかりできれば、その後の射撃については、避けられてしまうようなことはそうそうありません。
でも、仮にこれが避けられることを前提とした弾に置き換えられた場合、どうなるか。上述のものとは異なるスキルに基づくゲーム性が求められるのは必然です。
それは何か。
当時の私は、以下のようにイメージしていました。
「自機の挙動に工夫を凝らし、幾つもの弾を撃ち連ねていくことで徐々に相手側の選択肢を狭め、弾の当て所を見いだしていく。そういったお互いの試行に意図を読み、自らの勝ち筋を模索する。そこに駆け引きが生まれる……そんな思考ゲームの色合いを帯びたものになるのではないか。だとしたら、そこを伸ばすことがゲームの個性となり面白みを生み、ひいてはシステム的にも上手く嵌るのではないか」
いわばアクション性のある詰め将棋的な面白さをゲーム性の核とし、そこに多彩な広がりをもたせるように全体をデザインしていこうというわけです(※3)。
これは、私自身がそれまで慣れ親しんできたDOOMなどのFPSが持つゲーム性とは根本的に異なるものです。正直、完成形がどういったものになるのかまでは明確にイメージすることができませんでしたし、葛藤もありました。が、スケジュールの関係上いい加減覚悟を決めなければならない頃合いでもありました。また、ゲーム開発者の業といいますか、未知の領域に踏みこんでいくドキドキ感、わくわくする高揚感は抑えがたく、あまり躊躇いは感じませんでした。ここまで来たら、もう行けるところまで行くしかない!というわけです。
機体性能の統合管理への道

これまで弾についてあれこれ書いてきましたが、銃撃戦を対戦ゲームとして成立させるためには弾の飛翔性能の調整だけでは足りません。仮に撃たれたことを視認できるように弾が調整されたとしても、操作する機体に相応の運動能力がなければ、回避などのリアクションが難しくなってしまいます。機体の運動性能全般についても併せて調整が必要になってくるわけです。そして弾の性能と機体の運動性能とは相互に影響しあうものであり、各々を独立に扱っているだけでは噛み合わず機能しません。エディターでパラメータの調整と管理を行なうのであれば、両者を一括して取り扱うのが最善です。
……と思ったので、弾関連、機体運動性能、各々を担当するソフトさんたちに掛け合ったのですが、当初はかなり渋られました。エディター製作に要する作業の上増しが嫌われたというのもありますが(※4)、当時はまだパラメータ管理はソフト側の領分という認識が根強く、プランナーやディレクター側(要は、広義のゲームデザイン担当者)にそれを委ねるのは既得権喪失であるかのように受け止められていた面もありました。
「要望があるなら、都度言ってくれれば」
そう彼らは言うのですが、そして当初はそうしてみたのですが、これがなかなか上手くいかないのです。
ざっくりとした喩えで恐縮ですが、「テムジンが撃つランチャーのノーマル弾を、ライデンだったらこの距離でギリギリ避けられるけれどもフェイ・イェンだったらもっと近くても楽に避けられるようにしたい」と思ったとしましょう。
この場合、テムジンのノーマル弾調整とライデン及びフェイ・イェンの運動性能を同時にいじりながら都度データをロード、実際に操作して摺り合わせていくのが良いように思われます。
しかし、個々の担当者に調整を依頼していると、これがスムーズにいきません。担当分のパラメータを揃えてもらってテストする段階までもっていくのもそこそこ時間がかかりますし、どうかするとそれ以前の段階で「弾を調整する前に運動性能の方を固めてもらえません?」と言われたり「運動性能にどうこう言ってくる前に、弾の方を確定してくれよ」なんて、各々の担当者から言われて立ち往生してしまったりするのです。当時の開発環境ですと、各ソフトさんの担当分野は個々に縦割りになっていることが多く、複数の分野にまたがる案件に対応してもらおうとするとたらい回しにされることも珍しくありませんでした(※5)。
「やはり、パラメータは誰か専属の担当者がついて一元管理すべき!」
そうは思うのですが、しかし既にタスクが限界近くまで積み上がったソフトさん達にこれを押しつけるのは酷です。一応、試しに相談はしてみましたが、突っぱねられてしまって話が進みません。こういった場合、誰かが人柱にならねばならず、それは言い出しっぺの役目と相場が決まっています。私は志願しました。
「パラメータ管理については全部こっちで責任もってやるので、なんとかエディターだけは作ってくれ!」
懇願し、対応してもらいました。
その先には割とカジュアルに地獄が待っていました。
雛形段階でどうにも使い勝手の悪かったエディターがなんとか使えるレベルに落ち着いたのが1995年の8月ごろ、そこから9月のJAMMAショー(※6)に向けて怒濤の調整作業が続き、またマスターROMのアップを迎える11月末まで、土日返上の突貫作業が続きました。つまり、正味およそ3ヶ月。今となってはあまり思い返したくもありませんが、とにかく来る日も来る日もずっと数字とにらめっこでかなりしんどいものがありました(※7)。この調整期間、今どきの製品に比べるとかなり短いように思われるかもしれませんが、当時は「時間かけすぎ」と部長に責められたりする程度には異例の長期間でした。またこの間に、単に弾や運動性能を調整するだけではなく、バル・バス・バウの浮遊するマインやドルカスのファランクス投射、バイパーのSLCダイブ、全機のしゃがみ攻撃全般、弾同士の相殺関係の設定、といった新要素を次々とアイデア出しして実装調整しました。こういった作業が並行できたのは、やはり全パラメータの一元管理を行なうことでゲーム全体を俯瞰する視野が育まれ、ゲーム性に合う形で各機にふさわしい武器を検討する余地が生まれた点に一因があると思っています。
プリセット指向の武装と入力キャンセル仕様
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