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#311: 「安さ」を売るな。「意味」を売れ。

毎日投稿311日目。ここ数回、「個別にチューニングしろ(#308)」「指示より意図を伝えろ(#310)」という話をしました。

#308: 全員に「同じサービス」をするな。 ── 小さな会社だからできる「超・個別チューニング」

#310: 「指示」より「意図」を。

正直、どちらも「面倒くさい」ことです。

マニュアル通りに画一的なサービスをして、指示だけでロボットのように動かした方が、経営的には楽に見えるかもしれません。

では、なぜ僕たちは、あえてこの「茨の道」を行くのか?

いろんな理由があると思いますが、僕が経営者として最も大きいと考えている理由がこれです。

「価格競争」という消耗戦から抜け出すため。

もっと言えば、お客さまの「感情」を動かし、選ばれる理由を作るためです。

「ガソリン」は、理屈で選べば「最安」になる。

僕の本業はガソリンスタンドです。

恐ろしいことに、ガソリンという商品は、僕たちが加工できるものではなく、商品に品質の差は僕たちの努力で変えられません。つまり、コモディティ商品と言える。

商品に差がない時、お客さまが「理屈(ロジック)」でお店を選ぶとどうなるか? 答えは簡単。「一番安い店」「一番近い店」が正解になります。

これが、僕たちにとっては一番怖いシナリオです。

大手資本が価格を下げてきたら、体力のない小さな会社はひとたまりもありません。「理屈」や「安さ」という土俵に乗った時点で、僕たちの負けはほぼ確定しているのです。

なぜ、「チューニング」をするのか?

では、どうすればこの土俵から降りられるのか? ここで登場するのが、「個別のチューニング」と「エモーショナル・マーケティング(感情への訴求)」です。

人間は面白いもので、理屈だけでモノを買うわけではありません。「感情で買い、理屈で正当化する」生き物です。

僕がなぜ、スタッフのみんなに「目の前の人に合わせてチューニングしろ」としつこく言うのか。

それは、その「自分だけに合わせてくれた」という体験こそが、お客さまの感情(エモーション)を大きく揺さぶるからです。

  • 「マニュアル通りの対応」

    • → 感情は動きません。だから価格を見ます。

  • 「私のために、一手間かけてくれた」

    • → 感情が動きます。「この人から買いたい」となります。

チューニングとは、単なるサービス向上の話ではありません。
「価格」という理屈を超えて、「あなたがいい」という行動心理を引き出すための、極めて合理的な戦略なのです。

「意味」にお金を払う時代。

お客さまは、ガソリンという液体だけを買っているわけではないと思うのです。

「あの店に行くと、元気をもらえる」
「あそこのスタッフは、私の好みを分かってくれている」

そういう「体験」や「関係性」、つまり商品に付随する「意味」にお金を払ってくれている。そう思います。

もし、「安く、早く、正確に」だけを追求するなら、人間は機械(セルフスタンドやAI)には勝てません。機能的な価値は、どんどんコモディティ化し、価格はゼロに近づいていきます。

だからこそ、僕たちは「人間臭さ」で戦うのです。

  • AIにはできない、空気感のチューニング。

  • マニュアルにはない、意図を持った会話。

これらは、どれだけテクノロジーが進化しても代替できない「意味」になります。 この「意味」にお客さまが「共感」してくれた時、商品は初めて「コモディティ」を脱し、あなたのブランドになるのです。

「安売り」は、思考停止だ。

経営が苦しくなると、つい「値下げ」をしたくなります。
一番カンタンで、即効性がある(ように見える)からです。

でも、僕はそれを「禁じ手」だと思っています。

一度「安さ」でお客さまを集めてしまうと、もっと安くしないと売れなくなります。利益は削られ、スタッフは疲弊し、サービスの質は落ち、さらにお客さまが離れる。

小さな会社がやるべきは、安易な値下げではありません。

「面倒くさいこと(チューニング)」を徹底してやり、お客さまの「感情」に火をつけることだと、自戒を込めてそう思います。

高くても、選ばれる理由を作れ。

僕たちのガソリンスタンドは、かなり安い価格で提供していますが、多くを削ぎ落とし爆発的な安さのガソリンスタンドと比較するとさすがに負けます。

それでも、お客さまに対して真摯に向き合い、地域活性化プロジェクトであるBoost X projectを通じて多くの事業者のサポートを行い、多くのお客さまが来てくださり、結果昨年は10個もの新規事業が生まれています。

それは、スタッフ全員で必死に「チューニング」し、「意図」を考え、「価格以外の理由(=共感)」を作り続けてきたからだと確信しています。

「安さ」を売るな。 「意味」を売れ。

これが、僕たち中小企業が生き残るための生存戦略だと僕は思っています。


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