
華為が「L3対応アーキテクチャ」を前面に――HIMAから乾崑へ、自動運転時代の車両標準を狙う
[メンバーシップ限定]華為(Huawei)が、中国のスマートカー戦略で新たな段階に入っている。
これまでHuaweiの自動車事業は、乾崑智駕ADSによる高度運転支援、HarmonySpaceによるスマートコックピット、HIMA(鴻蒙智行)による完成車開発への深い関与が目立ってきた。
しかし2025年後半から2026年にかけて、Huawei/引望が前面に出し始めたキーワードは、明らかに変わっている。
「L3対応アーキテクチャ」である。
ここで重要なのは、Huaweiが言うL3対応が単なる「ADSのアルゴリズム高度化」を意味していないことだ。
感知、計算、測位、通信、給電、制動、操舵、人と車のインターフェースまで含めて、車両全体を“システムが運転主体になれる構造”へ作り替える。
Huaweiが狙っているのは、高性能な運転支援システムの供給にとどまらない。L3時代の車両アーキテクチャそのものを、自社の標準として広げることである。
HIMAは先行実装、乾崑は業界展開
この動きを理解するには、まずHIMAと乾崑の役割を分けて考える必要がある。
HIMAは、問界、智界、享界、尊界などで、華為が商品定義、技術、マーケティング、販売まで深く関与する完成車事業の枠組みである。
一方、乾崑は、引望が展開する自動車向け技術ソリューション群だ。乾崑智駕ADS、乾崑OS、XMC、車載光学、車クラウド、HarmonySpaceなどを、HIMA以外のOEMにも提供する。
つまり現在の構図は、
HIMA=L3対応アーキテクチャの先行実装・ショーケース
乾崑=その技術を中国自動車業界へ横展開する供給基盤
と捉えると分かりやすい。Huaweiは自ら完成車ブランドを持たずに、L3時代の車両の「頭脳」「神経」「身体制御」「安全冗長」を押さえようとしている。
L3で競争軸は「運転が上手いか」から「壊れても安全か」へ
L2の高度運転支援では、システムが停止した場合でも、基本的にはドライバーが直ちに運転を引き継ぐことを前提にできる。
しかしL3では違う。一定の運行設計領域(ODD)内では、システム側が動的運転タスクを担う。
その最中にセンサー、計算機、通信、電源、ステアリング、ブレーキのどれか一つが故障したからといって、即座に制御不能になってはならない。
だからこそHuaweiが繰り返し訴求し始めたのが、「全鏈路八大冗余」――すなわち全チェーン8大冗長である。
2026年8月31日に行われた智界RXの説明会でも、38個の融合感知センサーは冗長の一部にすぎず、L3級アーキテクチャでは測位、通信など「見えない部分」の冗長も重要だと説明されていた。
L3時代の競争は、「LiDARが何個あるか」「何TOPSあるか」だけでは成立しない。
一つの系統が壊れても、車が安全側へ移行できるか。
ここが本質になる。