
長安マツダ、輸出企業への転換が鮮明に――26年1~9月3.3万台、EZ-6・EZ-60が輸出全量を構成
[無料]中国の長安マツダが、中国国内向けの自動車生産・販売を中心とする合弁企業から、マツダのグローバル市場向け電動車を供給する輸出拠点へと変わりつつある。
中国の自動車情報サイト「易車」が掲載する車種別販売データによれば、長安マツダの2026年1~9月の輸出台数は3万3160台に達した。
この輸出台数は、新世代電動車のMAZDA EZ-6とMAZDA EZ-60の輸出台数を合計した数字と完全に一致する。
さらに、比較可能な1~8月のデータでは、長安マツダ全体の輸出台数が中国国内の最終販売台数を上回った。
この動きは、マツダ本体が2024年から2026年にかけて発表してきた電動車戦略とも一致する。
当初は中国市場での販売回復を目的としていた長安汽車との共同開発モデルが、欧州、豪州、ASEANなどへ展開するグローバル商品へと発展した。
中国合弁企業の役割が、国内市場への供給から世界市場への供給へと広がっている。
1~9月輸出3万3160台、すべてEZ-6とEZ-60
易車が掲載する長安マツダの販売統計によれば、2026年1~9月の輸出台数は3万3160台だった。
車種別では、MAZDA EZ-6が1万3492台、MAZDA EZ-60が1万9668台となっている。
両車種を合計すると3万3160台で、長安マツダ全体の輸出台数と一致する。
つまり、少なくとも今回の易車掲載データでは、長安マツダの輸出実績はすべてEZ-6とEZ-60で説明できる。
既存のガソリン車を中心とする輸出ではなく、長安汽車との共同開発による新世代電動車が輸出事業を形成していることになる。
特に2026年9月の輸出台数は6700台に達し、8月の4740台から41.4%増加した。
9月の内訳はEZ-6が2500台、EZ-60が4200台である。EZ-60が全体の62.7%を占め、輸出拡大の中心となっている。
一方、長安マツダ全体の9月卸売量は1万1646台だった。
輸出台数6700台は卸売量の57.5%に相当する規模である。
ただし、卸売量と輸出量は集計方法や計上時期が異なる可能性があるため、この57.5%を厳密な販売構成比とみなすことはできない。
それでも、長安マツダにとって輸出が無視できない規模に拡大していることは明らかである。
中国国内の最終販売より輸出が多い
今回のデータでさらに重要なのは、中国国内の最終販売台数との比較である。
易車には「批発量(卸売量)」「零售量(小売量)」「出口量(輸出量)」「終端量(最終販売量)」という複数の指標が掲載されている。
ただし、零售量と終端量の定義や集計範囲の違いについては、今回の資料だけでは十分に確認できない。
そこで本稿では、輸出量と中国国内の終端量を中心に比較する。
9月の終端量は未掲載のため、比較期間は2026年1~8月とする。
この期間、長安マツダ全体の輸出台数は2万6460台だった。
一方、中国国内の終端販売台数は2万2227台である。
輸出が国内最終販売を4233台上回っている。
車種別に見ると、違いはさらに鮮明になる。
MAZDA EZ-6の1~8月輸出台数は1万992台だった。
これに対し、中国国内の終端販売は879台にとどまる。
輸出は国内終端販売の約12.5倍である。
MAZDA EZ-60も、輸出1万5468台に対して国内終端販売4843台となり、輸出が約3.2倍に達した。
EZシリーズ2車種の輸出合計は2万6460台、国内終端販売合計は5722台となる。
中国で開発・生産された新世代電動車が、中国国内市場よりも海外市場に多く供給されている構図が見えてくる。
ただし、輸出量は中国からの出荷を示す指標であり、海外市場で消費者に販売された台数と同一ではない。
また、今回の比較は2026年1~8月の期間累計であり、各車種の発売時期や海外市場での在庫形成の影響も考慮する必要がある。

2024年、出発点は「中国ビジネスの反転攻勢」
この輸出企業化を理解するには、マツダ本体の公式発表を振り返る必要がある。
2024年4月25日、マツダは北京モーターショーでMAZDA EZ-6とコンセプトモデル「MAZDA 創 ARATA」を発表した。
当時、マツダはEZ-6を、長安汽車との協業によって長安マツダが開発・製造する新世代電動車の第1弾と位置付けていた。
毛籠勝弘社長は、中国市場でマツダの事業を反転攻勢に転じさせるための商品であると説明した。
この時点で前面に出ていたのは、急速に電動化が進む中国市場への対応だった。
EZ-6にはBEVとREEVを設定し、長安汽車の電動技術やスマート技術に、マツダのデザインと走行性能を組み合わせる方針を示した。
また、翌2025年には第2弾となる電動SUVを中国市場へ投入する計画だった。
つまり、当初の公式発表では、長安汽車との共同開発は中国市場での競争力を回復するための戦略として説明されていた。
2025年1月、EZ-6が欧州向けMAZDA6eに
その方向が大きく変わったことを示したのが、2025年1月10日の発表である。
マツダは、EZ-6をベースに開発した新型BEV「MAZDA6e」を欧州市場へ導入すると発表した。
同車はベルギーのブリュッセルモーターショーで初公開された。
マツダは、EZ-6をそのまま欧州へ輸出するのではなく、走行性能や機能性などを欧州市場に合わせて造り込んだモデルとしてMAZDA6eを位置付けた。
ここで重要なのは、長安汽車との共同開発による電動車が、中国市場専用の商品ではなくなったことである。
中国で開発・製造する電動車を、欧州市場の要求に合わせて商品化するという新しい役割が長安マツダに加わった。
さらに同年2月14日、マツダはタイでの生産・販売体制の強化を発表した際、長安マツダが製造するMAZDA6eをタイ市場へ導入する計画も明らかにした。
これによって、長安マツダの新世代電動車は中国、欧州、タイへと展開する商品になった。
EZ-60もグローバル商品化、CX-6eとして欧州・豪州へ
2025年4月23日、マツダは上海モーターショーで第2弾の新世代電動車「MAZDA EZ-60」を発表した。
この時点では、EZ-6に続いて中国市場での電動車ラインアップを拡充するという説明が中心だった。
しかし、2026年1月12日には、EZ-60をベースとする新型BEV「MAZDA CX-6e」の欧州・豪州市場への導入を正式発表した。
CX-6eは、MAZDA6eに続くグローバル市場向け協業BEVの第2弾と位置付けられた。
欧州では2026年夏の発売、豪州では同年中の導入を計画すると説明した。
マツダは、欧州市場に合わせたハンドリングや乗り心地の最適化を実施し、長安汽車の電動化・知能化技術とマツダ独自の走行性能を組み合わせたと説明している。
また、同発表では、2025年9月に欧州で発売したMAZDA6eの累計販売台数が、すでに7000台を超えたことも明らかにした。
これは、中国で開発・製造する電動車が、海外で実際の販売実績を積み上げ始めたことを示している。
マツダ本体は2026年、豪州・ASEANへの拡大も明言
2026年4月2日、マツダはEZ-6/MAZDA6eが「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞したと発表した。
その公式リリースでも、長安汽車との協業による電動車のグローバル展開について説明している。
マツダによれば、MAZDA6eは2025年9月から欧州で販売を開始しており、2026年には豪州やASEANなどへの導入を予定している。
つまり、2024年には中国市場向けとして発表されたEZ-6が、2026年には複数地域へ展開するグローバル商品となった。
そしてEZ-60についても、CX-6eとして欧州・豪州市場への展開が進んでいる。
マツダ本体の公式発表を時系列でつなぐと、中国市場向けの共同開発商品を海外へ転用したという単発の動きではなく、長安汽車との協業をグローバル電動車戦略に組み込んでいく流れが見えてくる。
マツダのグローバル電動車供給拠点としての中国
今回の易車データは、こうしたマツダ本体の戦略が、実際の輸出台数として表れ始めたことを示している。
2026年1~9月の長安マツダ輸出3万3160台は、EZ-6とEZ-60の2車種で構成されている。
1~8月では、長安マツダ全体の輸出台数が中国国内の終端販売台数を上回った。
特にEZ-6は、国内終端販売879台に対し、輸出が1万992台に達している。
中国国内での販売実績だけを見れば、EZ-6は決して大きな成功を収めているとは言いにくい。
しかし、輸出を含めて評価すると、その事業上の意味は大きく変わる。
長安マツダにとってEZ-6は、中国市場向けの電動セダンであると同時に、マツダの欧州・アジア・豪州市場向け電動車を供給する基幹モデルになっている。
EZ-60についても、同様の役割が拡大している。
中国市場での販売台数だけでは、長安マツダの事業転換を正しく評価できなくなっているのである。
日本の自動車メーカーと中国企業の役割も変化
この変化は、中国自動車産業の国際化という観点からも重要である。
従来、日本の自動車メーカーが中国に合弁企業を設立する主な目的は、中国国内市場へ自動車を供給することだった。
中国で生産し、中国で販売するという構造である。
しかし、長安マツダの新世代電動車では、中国の合弁企業が開発・製造した車両を、マツダのグローバル販売網を通じて海外市場へ供給する。
その基盤には、長安汽車が蓄積した電動化技術やスマート技術がある。
一方、マツダは自社のデザイン、走行性能、品質要求、ブランド価値を組み合わせ、各市場に合わせた商品へ仕上げている。
これは、中国メーカーの技術や開発能力を活用し、日本ブランドのグローバル商品を生み出すという新しい国際分業である。
中国企業が欧州や東南アジアで現地生産・販売を拡大する一方、日本企業の中国合弁会社が、中国を拠点に海外市場へ自動車を輸出する。
自動車産業のグローバル化は、もはや一方向の技術移転や生産移管ではなくなっている。
輸出拡大の次は収益と供給体制
もっとも、輸出台数の拡大が、そのまま長安マツダの収益改善を意味するわけではない。
輸出車の販売価格、利益率、開発費の負担、海外販売会社との取引条件などは、今回のデータからは確認できない。
また、輸出量と海外での最終販売台数には、輸送期間や在庫増減による差が生じる。
そのため、今後は輸出台数だけでなく、欧州、豪州、ASEANなど各市場での実際の販売状況を確認する必要がある。
さらに、EZ-6とEZ-60の輸出が拡大するなかで、中国国内向け車両と海外向け車両の生産配分がどう変化するかも重要になる。
それでも、今回の統計から確認できる変化は明確である。
長安マツダは、2024年に中国市場での反転攻勢を目的として新世代電動車を投入した。
その後、マツダ本体はEZ-6をMAZDA6e、EZ-60をCX-6eとしてグローバル市場へ展開する方針を次々に発表した。
そして2026年、長安マツダの輸出台数は中国国内の最終販売を上回る規模に達した。
中国市場での販売回復を目指して始まった長安汽車との協業が、マツダのグローバル電動車戦略を支える輸出事業へと発展している。
長安マツダの役割は、中国でマツダ車を販売する合弁企業から、中国で開発・生産したマツダ車を世界へ供給する拠点へと変わりつつある。
今の長安マツダはEZ-60 LiDAR版を激推し、その意味
長安マツダは今、中国国内においてはEZ-60にLiDARを搭載、都市NOAを含む高度運転支援グレードを激押ししている。
おそらくこのLiDAR版の輸出は検討されていない。LiDARのニーズはどちらかと言えば圧倒的に中国にあるからだ。今や中国でLiDARなし、の方がリスクが大きいぐらいである。
なぜ長安マツダがこのタイミングでLiDAR版をリリースしたのか。かなりの憶測が入るが、当初予定の輸出が相応に軌道に乗り、改めて中国市場に向き合うという方針に沿ったものではないだろうか。
マツダとしては長安マツダを輸出基地化する、という戦略を今後も強化していくはずだが、長安マツダからすれば、それがイコール中国国内市場の喪失を意味はしない。
長安マツダは今、毎日のようにEZ-60 LiDAR版をプロモーションしている。輸出を基盤にできた今、中国国内市場への反転攻勢もまた、長安マツダの今後の重要戦略だと考えられる。
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