
VWのID. Buzzが中国AIでドイツを走る――卓馭、MFMと世界モデルを連携させ欧州適応を検証
[メンバーシップ限定]中国の自動運転技術企業、卓馭科技(ZYT)は2026年10月15日、フォルクスワーゲン(VW)の電動商用車ID. Buzzに自社のAI運転支援システムを搭載し、ドイツ・ヴォルフスブルクで実施した公道走行試験の動画を初めて公開した。
走行距離は24.9km、所要時間は23分。停止線、道路工事による仮設車線、ラウンドアバウト、優先通行権、速度制限という、欧州の交通環境を代表する5種類の場面を検証した。
今回の発表は、単発の海外走行試験ではない。
卓馭は2026年5月27日、ドイツに欧州本部を開設した際、VWグループとの間でID. Buzzを使用した次世代運転支援システムの概念実証(POC)を進めると発表していた。
それから約4カ月半。今回の動画公開によって、当時予告していた欧州での実車検証が具体的な走行事例として示された。
さらに今回、卓馭は運転判断を担うネイティブ・マルチモーダル基盤モデル(MFM)と、学習・評価を支える世界モデル「ZYT-World」の役割分担を明らかにした。
中国で開発した運転支援AIを欧州車に搭載するだけでなく、欧州の道路環境に適応させるための開発体系そのものを構築しようとしている。
5月27日、VWとのID. Buzz概念実証を正式発表
今回の走行試験を理解するには、5月27日の発表にさかのぼる必要がある。
卓馭は同日、ドイツのブラウンシュヴァイクで欧州本部の開設式を開催した。
ブラウンシュヴァイクは、VWの本拠地ヴォルフスブルクに近く、ドイツ自動車産業の研究開発拠点が集積する地域である。
開設式にはVWグループの関係者も出席した。
卓馭はこの場で、VWグループと欧州現地で次世代運転支援技術のPOCを実施すると発表した。試験車両に選ばれたのがID. Buzzである。
同社は当時、中国の運転支援技術を搭載したVW商用車が欧州の実道路で検証を行う計画を明らかにしていた。
また、ブラウンシュヴァイク工科大学とも協力し、ID. BuzzのPOCを含む現地研究開発プロジェクトを進めると説明した。
つまり、今回のヴォルフスブルクでの走行試験は、5月に発表されたVWとの協業案件の進展と位置付けられる。
ただし、POCは技術の成立性や適応可能性を確認するための段階である。VWが卓馭のシステムを量産車へ正式採用したことを意味するものではない。
VWの本拠地で24.9km、欧州特有の5場面を検証
今回公開された走行試験は、ドイツ・ヴォルフスブルクで実施された。
ヴォルフスブルクはVWグループの本拠地であり、今回のID. Buzzによる検証には、欧州の自動車メーカーの開発拠点に近い環境で技術を評価するという意味がある。
卓馭によれば、試験車両は24.9kmを23分間で走行した。
重点的に検証したのは、次の5種類の交通場面である。
停止線への対応
道路工事に伴う仮設車線の認識と走行
ラウンドアバウトでの通行
優先通行権の判断
速度制限への対応
これらは欧州の道路交通で日常的に見られる一方、国や地域によって交通規則、道路標示、運転慣行などに違いがある。
例えば、ラウンドアバウトでは進入時の優先関係を正しく判断する必要があり、工事区間では通常の車線標示と一時的な誘導表示が異なる場合がある。
卓馭が検証対象として挙げた5場面は、運転支援システムが欧州の交通環境に適応できるかを確認するための代表的な課題といえる。
ただし、今回公表されたのは限定された距離と場面での走行試験である。
欧州全域への対応が実証されたわけではなく、介入回数、失敗率、交通状況別の成功率など、定量的な評価結果も今回の発表文には示されていない。
4月に実車公開、5月に欧州発表、10月に公道検証
今回の試験には、2026年に卓馭が進めてきたMFMの展開が重なっている。
4月27日、卓馭は北京モーターショーで、ネイティブ・マルチモーダル基盤モデルを搭載した実車の先行体験を公開した。
同社は、MFMを用いた都市部の運転支援を初めて一般公開するとともに、このモデルを乗用車や商用大型トラックに展開し、海外向け運転支援システムの基盤として利用する方針を示していた。
続く5月27日の欧州本部開設では、MFMを欧州市場に正式に紹介した。
その際、卓馭はMFMの適用対象が乗用車にとどまらず、大型トラック、バス、無人物流車両、Embodied AIなどにも広がると説明した。
今回のID. Buzzによる走行試験は、そうした構想のうち、欧州の商用車を使用した運転支援システムの現地検証が具体化したものである。
4月の実車公開、5月の欧州展開発表、そして10月の公道試験公開という流れから、MFMを研究開発段階から海外での車両適応へ進めていることが読み取れる。