
中国、2030年に全固体電池の規模化へ――1.5万回寿命、AI・ロボットまで「電池国家戦略」
[メンバーシップ限定]中国は、全固体電池をいつまでも「次世代技術」のままにはしておかない。
工業情報化部、国家発展改革委員会、交通運輸部、商務部、国家市場監督管理総局、国家能源局、国家鉄路局の7部門が策定した「新型電池産業発展『十五五』計画」は、2030年までに全固体電池の「初歩的な規模化応用」を実現するとの目標を掲げた。
しかし、計画全文を読むと、本当に重要なのは全固体電池だけではない。
長寿命リチウム電池は1万5,000サイクル。トップ企業の製品欠陥率はPPB、10億分率級へ引き下げる。
電池の用途は新エネルギー車(NEV)から船舶、航空、スマートロボット、建設機械、農業機械へ広げ、電力網、工業団地、データセンター、AIコンピューティングセンターにも展開する。
さらにAIを使って新しい電池材料を探し、製造工程をミリ秒単位で最適化し、「電池大規模モデル体系」まで構築する。
海外では電池を売るだけではなく、投資、生産、回収、再資源化まで現地へ持っていく。
これは単なる全固体電池の産業化計画ではない。
中国が2026~2030年の5年間で、電池を「EVの重要部品」から、交通、電力、AI、ロボットを横断する国家的な基盤技術へ拡張しようとする産業計画である。
この中国政府による計画そのものの概要は下記の全文無料レポートでも確認できる。
ここでは公表されたほぼ全文をもとに、その内容を徹底的に深掘りした。
中国が「十五五」の新型電池産業計画を策定
「新型電池産業発展『十五五』計画」は、2026~2030年の第15次五カ年計画期間における中国の新型電池産業の方向を定める。
文書番号は「工信部聯規〔2026〕220号」。9月14日付で7部門が発出し、9月28日に公表された。
計画が対象とする「新型電池」は、リチウム電池だけではない。
新しい原理、材料、構造、製造工程を主要なイノベーション方向とする電力貯蔵・変換装置またはシステムと定義し、リチウム電池、ナトリウム電池、液流電池などを代表例としている。
そして電池産業を、「製造強国」「エネルギー強国」「交通強国」「デジタル中国」を支える重要な基盤と位置付けた。
つまり、最初から自動車産業政策として書かれていない。
電池をエネルギー、交通、デジタル産業を横断する基盤産業として捉えている。
2030年、全固体電池を「初歩的な規模化応用」へ
最も象徴的な目標が全固体電池である。
2030年までに、「全固体電池の初歩的な規模化応用を実現する」とした。
重要なのは「研究開発を進める」でも、「技術突破を目指す」でもないことである。
「規模化応用」まで踏み込んだ。
もちろん、「初歩的」という留保が付いている。
2030年に中国のEVが一斉に全固体電池へ切り替わるという意味ではない。
しかし、研究室でセルを作る段階でも、少数の試験車へ搭載するだけでもなく、一定規模で製造し、実際の製品で利用される段階まで持っていくことを国家計画上の到達点にした。
中国の全固体電池競争に、2030年という国家レベルの時計が置かれたことになる。
全固体は材料から量産設備まで一気通貫
さらに重要なのは、2030年という目標だけを書いて終わっていないことである。
計画は全固体電池を産業化するための技術課題まで分解している。
重点となるのは、界面接触、高いイオン伝導率、長サイクル寿命、量産・実装を想定した加圧システム設計などである。
電池材料、構造設計、製造技術、システム統合を同時に進め、本質安全、エネルギー密度、出力密度、構造強度、軽量化を高める。
製造工程では、厚電極、ドライ電極、熱圧転写、高精度積層、多層タブのレーザー溶接などを開発する。
そして全固体電池については、等方圧を利用する製造設備まで高端製造設備の開発対象として明記した。
つまり、材料を発見する、セルを作る、性能を上げる、量産工程を確立する、製造装置を国産化する、製品として市場へ出す、という産業化の連鎖そのものを政策対象としている。
硫化物、ハライド、リチウム金属、無リチウム負極まで明記
全固体電池の技術経路についても踏み込んでいる。
固体電解質では、硫化物系、ハライド系、高性能ポリマー複合系を明記した。
さらに正極では高電圧、高比容量材料を、負極では新型リチウム金属系材料に加えて、無リチウム負極との融合応用まで進める。
ここから見えるのは、中国政府が全固体電池を単一の材料体系に固定していないことである。
複数の技術経路を並行して走らせ、その中から産業化可能な方式を育てる構造になっている。
全固体電池について標準策定も進め、検査、認証、失敗解析、知的財産権まで産業基盤を整える。
単なる研究開発支援ではなく、一つの新産業を成立させるための周辺制度まで先回りして作る計画である。