
SVOLT、100kWh半固体電池パックの量産初号製品が完成――900V・6C急速充電に対応、三元系電池の長期的な主流技術と位置づけ
[メンバーシップ限定]中国の車載電池メーカーSVOLT(蜂巣能源)は2026年10月26日、100kWhの半固体電池パック「龍鱗甲」の初回生産品が、江蘇省常州市の生産ラインから完成したと発表した。
今回の電池パックは900V級の高電圧システムを採用し、最大6Cの急速充電に対応する。SVOLTは、12分間の充電で航続距離500km相当の電力を補充できると説明している。
さらに注目されるのは、同社が半固体電池を全固体電池の実用化までの一時的な技術ではなく、長期的に利用される主流技術と位置づけていることである。
特に、ニッケル・マンガン・コバルトなどを使用する三元系正極材料の電池では、半固体技術が今後も重要な役割を担うと判断している。
全固体電池の研究開発が加速する一方、SVOLTは既存の電池製造技術との親和性を活用し、半固体電池の早期量産と実用化を進める戦略を明確にした。
10月26日、常州で100kWh電池パックの初回生産品が完成
SVOLTは10月26日、常州市の生産拠点で100kWhの半固体急速充電電池パックが生産ラインから完成したと発表した。
今回の製品は、同社が展開する「龍鱗甲」電池パック技術を採用している。
龍鱗甲は、電池セルの配置、冷却、保護構造などを統合したSVOLT独自の電池パック技術である。
今回の発表で明らかになった主な仕様は、次のとおりである。
電池容量:100kWh
電池技術:半固体電池
電圧システム:900V級
急速充電性能:最大6C
充電性能:12分間で航続距離500km相当の電力を補充
冷却方式:電池パックの上下両面を利用した液冷構造
サイクル寿命:3,000回超
理論上の走行寿命:100万km超
電池パック底部:6層の保護構造
耐衝撃性能:中国の国家基準に対して3倍の保護性能を主張
これらはSVOLTが公表した製品性能であり、実際の搭載車両での性能や第三者による検証結果を示したものではない。
また、今回の発表で確認できるのは、初回生産品が完成したことである。
生産能力、初回生産数量、継続的な出荷規模などは明らかになっておらず、大量供給がすでに始まったと判断することはできない。
900V・6C急速充電、12分間で500km相当を補充
今回の電池パックは、900V級の高電圧システムと最大6Cの急速充電性能を組み合わせている。
Cレートは、電池容量に対する充放電電流の大きさを示す指標である。
理論上、6Cは電池の定格容量に相当する電力量を10分間で充電できる電流の大きさを意味する。
ただし、実際の充電では、充電率、電池温度、電圧、充電設備の能力などによって電流が変化するため、6Cに対応することと、電池を10分間で完全充電できることは同義ではない。
SVOLTは、今回の100kWhパックについて、12分間で航続距離500km相当の電力を補充できると説明している。
ただし、航続距離の算定基準や充電開始・終了時の充電率など、詳細な試験条件は今回確認できた情報では明らかになっていない。
したがって、この数値を実際の走行環境で12分間の充電により500km走行できることを保証するものと解釈すべきではない。
今回の技術的な特徴は、半固体電池でありながら、高電圧化と急速充電を両立させようとしている点にある。
固体電解質を利用した独自の転写技術
SVOLTの半固体電池は、液体電解質と固体電解質を組み合わせる方式を採用している。
半固体電池は、電解質を完全に固体へ置き換えるのではなく、液体と固体の双方を利用してリチウムイオンを移動させる電池である。
SVOLTは、この構造を実現するため、固体電解質を電極側へ転写する独自の製造技術を開発してきた。
同社の説明によれば、固体電解質の層を均一に形成することで、電池内部の安定性や安全性を高めることを目指している。
また、この製造方式は既存の液体電解質電池の生産設備との互換性を重視している。
全固体電池では、固体電解質と電極の接触状態、製造工程、材料コストなどが量産化に向けた課題となる。
一方、半固体電池は液体電解質を残すことで、既存技術を利用しながら電池性能を改善できる可能性がある。
SVOLTが重視するのは、電池セル単体の性能だけでなく、既存設備を活用して量産できるかという製造面の実現性である。
電池パックの冷却と安全保護を強化
今回の龍鱗甲電池パックでは、上下両面を利用した液冷構造も採用されている。
急速充電時には電池内部で熱が発生するため、温度管理が重要になる。
特に大容量の電池パックで高い充電電流を維持するには、セル間の温度差を抑え、発熱を効率的に処理する必要がある。
SVOLTは、冷却構造と電池セルの設計を組み合わせることで、6C急速充電への対応を図ったとしている。
また、電池パック底部には6層の保護構造を設けた。
同社は、この構造によって国家基準の3倍に相当する耐衝撃性能を確保したと説明している。
ただし、国家基準のどの試験項目に対する比較であるか、具体的な試験条件は確認できていない。
安全性能については、耐衝撃性だけでなく、熱暴走時の挙動、過充電、短絡、浸水、振動、長期劣化など、多様な条件で評価する必要がある。
今回の発表は、SVOLTが半固体電池の安全性を材料と電池パック構造の両面から高めようとしていることを示している。
半固体電池は全固体電池までの「つなぎ」ではない
今回の発表で最も重要なのは、SVOLTの技術戦略に関する判断である。
同社は、半固体電池について、BEV、特に三元系正極材料を使用する電池の分野では、単なる過渡的な技術ではなく、長期的に存在する主流技術になるとの見方を示した。
これは、全固体電池が普及すれば半固体電池は不要になる、という単純な技術移行を前提としていないことを意味する。
現在、車載電池の開発では、エネルギー密度、安全性、急速充電性能、寿命、製造コストなど、複数の性能を同時に改善することが求められている。
全固体電池は、これらの性能を大きく改善する可能性がある一方、材料や製造工程の課題を抱えている。
半固体電池は、液体電解質を利用することで既存の生産技術を活用しやすく、量産化のハードルを抑えられる可能性がある。
SVOLTは、この実用面の利点が長期的な競争力につながると判断している。
ただし、半固体電池が将来の市場で主流になるという見通しは、現時点ではSVOLTの経営・技術判断である。
電池市場全体での普及が確定したわけではない。