
巨湾技研、全固体電池のGWh級生産ラインを稼働――既存の液系電池設備を転用、大規模投資なしで量産化へ
[メンバーシップ限定]中国の電池メーカー、巨湾技研(Greater Bay Technology)が、広州市南沙区でギガワット時(GWh)級の全固体電池生産ラインを正式に稼働させた。
今回の発表で重要なのは、全固体電池の生産ラインを新設したのではなく、既存の液系リチウムイオン電池生産設備を改造して実現したことである。
全固体電池は、高いエネルギー密度や安全性が期待される一方、従来の液系電池とは製造工程が異なるため、量産設備への投資や製造コストが課題となっている。
巨湾技研は、既存の4GWh規模の液系電池ラインを部分的に改造することで、全固体電池を製造できる体制を構築したという。大規模な建設工事や、高額な専用設備の大量導入は必要なかったと説明している。
ただし、GWh級の生産ラインが稼働したことは、全固体電池がすでに年間GWh級で生産・出荷されていることを意味しない。今回の発表では、実際の生産数量や歩留まり、商用出荷規模は明らかにされていない。
10月13日、広州南沙で全固体電池の初期製品が完成
巨湾技研は2026年10月13日、広州市南沙区の本社生産拠点で、全固体電池の生産ライン改造完了・稼働開始式を開催した。
式典には、同社の創業者兼最高技術責任者(CTO)の黄向東氏、董事長の裴鋒氏、中国自動車動力電池産業イノベーション連盟理事長の董揚氏、同連盟秘書長の許艶華氏らが出席した。
巨湾技研は2026年4月に全固体電池のAサンプルセルを完成させており、それから約半年でGWh級の生産ラインを稼働させたことになる。
今回の稼働式では、改造後のラインで製造された初期の全固体電池セルも披露された。
同社は、既存設備を利用する方式によって、全固体電池の産業化に必要な設備投資、製造コスト、立ち上げ期間を抑えられると説明している。
既存4GWhラインを部分改造、液系と全固体を切り替えて生産
今回の最大の特徴は、生産設備の再利用にある。
巨湾技研が改造したのは、既存の年間4GWh規模の液系リチウムイオン電池生産ラインである。
全固体電池専用の新工場を建設するのではなく、特定の工程に必要な設備改造と製造プロセスの最適化によって、全固体電池の製造を可能にした。
同社によれば、大規模な建設工事は行わず、高額な特殊設備も大量には購入していない。
さらに重要なのは、改造後のラインが、液系リチウムイオン電池と全固体電池を切り替えて生産できることである。
顧客の需要に応じて、従来型の液系電池と全固体電池の生産計画を調整できるという。
これは、全固体電池の普及時期が不透明な現段階では、重要な経営上の利点となる。
専用工場を新設した場合、全固体電池の需要が想定より伸びなければ、設備の稼働率が低下する可能性がある。
一方、既存ラインで両方式を切り替えられれば、全固体電池の需要が本格化するまで、従来型電池の生産能力としても設備を活用できる。
ただし、既存の4GWhライン全体が全固体電池専用に転換されたわけではない。改造部分の正確な生産能力や、切り替えに必要な時間、費用などは公表されていない。

深共晶系複合固体電解質が設備転用の鍵
この製造方式を可能にした技術として、巨湾技研は独自の深共晶系複合固体電解質を挙げている。
同社は、国家級の固体電池研究開発・産業化プロジェクトを通じて、電解質の材料組成、固化機構、製造工程などを開発してきた。
一般に全固体電池では、固体電解質の形成や電極との界面接触を確保するため、従来の液系電池とは異なる工程や設備が必要になる場合がある。
巨湾技研は、今回の電解質技術によって、既存のリチウムイオン電池製造工程との高い互換性を確保したと説明している。
この互換性が、既存ラインの部分改造による全固体電池生産を可能にしたという。
重要なのは、電解質の性能だけでなく、その電解質をどのような設備で製造できるかという点である。
仮に電池セルの性能が優れていても、製造に高額な専用設備が必要であれば、量産時のコスト低減には時間がかかる。
巨湾技研は、材料技術と製造技術を一体的に設計することで、この課題に対応しようとしている。
ただし、深共晶系複合固体電解質の詳細な組成や、製造工程の具体的な条件は開示されていない。