
中国・深南電路、26層FC-BGA基板の量産能力を確立――AI需要でQ3売上66%増、日本の半導体基板大手を追う
[メンバーシップ限定]中国の電子回路・半導体パッケージ基板大手、深南電路(Shennan Circuits、深圳証券取引所002916)は2026年10月23日、広州工場で26層以下のFC-BGA半導体パッケージ基板を量産できる体制を整えたと明らかにした。30層以上の製品についても、研究開発と試作を進めている。
同社の2026年7~9月期売上高は104.78億元(約2461億円)、前年同期比66.29%増、親会社株主帰属純利益は18.78億元(約441億円)、同94.42%増となった。AIサーバー、高速スイッチ、光モジュールなどの需要拡大が業績を押し上げている。
FC-BGA基板は、高性能プロセッサーやAI半導体の製造に欠かせない重要部品であり、日本のイビデンや新光電気工業などが強みを持つ分野である。
中国メーカーによる高性能基板の国産化は、製品開発から量産能力の拡大へ進み、実際の収益成長にも結び付き始めている。
広州工場、22層から26層へ量産対応範囲を拡大
深南電路は10月23日の投資家向け説明で、広州工場のFC-BGA基板について、26層以下の製品を量産できる能力を備えたと説明した。
9月21日の説明では、22層以下の製品について量産を実現し、24層以上の製品について研究開発と試作を進めているとしていた。
今回、量産対応可能な層数の上限が26層に引き上げられたことになる。
9月21日時点:22層以下のFC-BGA基板を量産
10月23日時点:26層以下のFC-BGA基板について量産能力を確立
次の開発段階:30層以上の製品について研究開発・試作を推進
ここで注意したいのは、26層までの製品を量産できる能力を確立したことと、26層製品をすでに大量出荷していることは同じではないという点である。
同社は2026年上半期の時点で、広州工場の高性能FC-BGA製品について複数の顧客で量産採用が進んだと説明している。しかし、今回新たに量産対応を表明した26層製品の出荷数量、顧客名、歩留まりについては公表していない。
それでも、量産可能な製品の層数を短期間で引き上げたことは、広州工場の製造技術が高度化していることを示している。
FC-BGAとは何か、なぜAI半導体に必要なのか
FC-BGAは、半導体チップと電子回路基板を接続するための高性能パッケージ基板である。
FCはFlip Chip、BGAはBall Grid Arrayを意味する。
半導体チップを裏返して基板に接続し、基板の反対側に配置した多数のはんだボールを通じて、サーバーなどの電子回路と接続する。
AIアクセラレーターや高性能CPUでは、多数の信号線と電源配線を限られた面積に配置する必要がある。
また、半導体の消費電力が増えるにつれて、電力を安定して供給し、高速信号の品質を維持することも重要になる。
こうした要求に対応するため、FC-BGA基板には高密度の多層配線技術が用いられる。
ただし、基板の層数が多ければ、それだけで高性能になるわけではない。
配線の微細化、基板の大型化、熱による反りの抑制、電気特性、製造歩留まりなども重要な技術指標である。
特に先端AI半導体では、複数の半導体チップやHBM(広帯域メモリー)を組み合わせる実装技術が普及しており、パッケージ基板にも一段と高度な性能が求められている。
深南電路の26層対応は、こうした高性能半導体向け基板の製造能力を広げる動きとして注目される。
Q3売上高66.29%増、純利益94.42%増
深南電路が10月23日に開示した2026年第3四半期報告によると、7~9月期の業績は大幅に拡大した。
主要数値は次の通りである。
売上高:104.78億元、前年同期比66.29%増
親会社株主帰属純利益:18.78億元、同94.42%増
特別損益を除く純利益:18.58億元、同102.78%増
1~9月累計でも高い成長率を維持している。
売上高:257.74億元、前年同期比53.84%増
親会社株主帰属純利益:41.29億元、同77.54%増
特別損益を除く純利益:40.98億元、同87.80%増
売上高の伸びを上回る利益成長となっていることが特徴である。
同社は、AI計算インフラへの投資拡大、製品構成の高度化、生産能力の増強が業績拡大につながったと説明している。
特に、AIアクセラレーター、サーバー、高速スイッチ、光モジュール関連の需要が拡大した。
さらに、電源管理ICやプロセッサー、メモリー向け半導体パッケージ基板の受注も増加している。
ただし、深南電路はプリント基板、半導体パッケージ基板、電子機器の実装・組立を手掛ける企業であり、今回の利益成長がすべてFC-BGA基板によるものではない。
半導体パッケージ基板事業、上半期売上高は2倍超
深南電路の国産化の進展を評価するうえで重要なのが、半導体パッケージ基板事業の収益改善である。
2026年上半期の同事業の実績は次の通りである。
売上高:36.67億元
前年同期比:110.76%増
全社売上高に占める比率:23.97%
粗利益率:31.35%
粗利益率の前年同期からの改善幅:16.20ポイント
売上高は前年同期の2倍以上となり、粗利益率も大幅に改善した。
同社によると、メモリー向け基板の需要拡大、プロセッサー向け基板の受注増加、AI関連の電源管理IC向け基板の販売拡大が成長を支えた。
加えて、広州工場の生産能力拡大と稼働率の上昇も利益率改善に寄与している。
FC-BGA基板についても、高性能製品が複数の顧客で量産採用され、広州工場の生産能力拡大を後押しした。
つまり、同社の国産化は単に高性能基板を試作できるようになった段階ではなく、すでに複数の顧客への量産供給を通じて事業規模を拡大する段階に入っている。
もっとも、FC-BGA基板だけの売上高や粗利益率は開示されていないため、事業全体の収益改善をFC-BGAの成果としてそのまま評価することはできない。