
小鵬VLA2.0「4D時空理解」物理AI共通基盤へ、車をロボット化
[日刊]小鵬(XPENG)は2026年8月27日、「TIME|時間」をテーマとするPhysical AI技術共有会を開催し、第2世代VLA(Vision-Language-Action = VLA2.0)大規模モデルの初の大規模アップグレードを発表した。
新バージョンはXOS 6.3.0として小鵬G9Lから搭載を開始する。今回の発表を単純な「スマートドライビングのOTA」と捉えると、本質を見誤る。
XPENGが最も強調したのは、AIが「時間」を理解するようになったことである。従来の3D空間理解から、過去・現在・未来を連続的に扱う4D時空理解へ移行する。
さらにVLAとVLMを統合した「Master Agent」を導入し、自動車そのものをロボットとして再構築する「Car as Robot」を打ち出した。
その背後では、1.1億本のVideo Clipを使ったモデル学習、数千PB規模に達するデータ基盤、クローズドループ・シミュレーション、Robotaxi、ロボット、さらに自社開発の図霊(TURING)AIチップまでを一つのPhysical AI基盤へ統合しようとしている。
今回、XPENGが示したのは新しい自動運転モデルだけではない。自動車で構築したPhysical AIの技術基盤を、Robotaxi、ロボット、さらに他の「本体(Embodiment)」へ横展開する構想である。
Physical AIの最終目的
XPENG汎用インテリジェントセンター責任者の劉先明氏は、Physical AIの最終的な目的を「物理世界を理解し、その中で行動すること」と定義した。
これはデジタルAIとは大きく異なる。クラウド上のAIであれば計算資源を拡張でき、多少応答に時間がかかることも許容できる。
誤った回答、いわゆるハルシネーションが発生しても、多くの場合は物理的な事故には直結しない。
しかしPhysical AIには、車載・ロボット側の限られた演算能力、極めて短い応答時間、安全性能の最低ライン、法規制という物理的な制約がある。
自動運転車が判断を誤れば衝突し、ロボットが判断を誤れば転倒する。その制約下でモデル規模、データ量、演算能力を拡張し、Scaling Lawを成立させなければならない。
XPENGは、この問題を単純に搭載チップを増やすことで解決するのではなく、モデルの基礎アーキテクチャそのものを変更する必要があると判断した。
現実世界は静止画ではない
これまでのPhysical AIは、主として「空間」を理解していた。車両はどこにいるのか。周囲に何があるのか。道路、車両、歩行者、信号はどこに存在するのか。
しかし現実世界は静止画ではない。
例えば一枚の画像に歩行者が写っていても、その画像だけでは、その人物がどこから来たのか、どちらへ向かっているのか、道路を横断しようとしているのかまでは十分に判断できない。
そこでXPENGは、VLA2.0を従来の「3D空間理解」から「4D時空理解」へ拡張した。
過去を記憶し、現在を理解し、未来を推演する。「世界を見るには一瞬でよいが、世界を理解するには時間が必要である」というのが今回の技術アップデートを貫く考え方である。
過去30秒間の時系列情報
第一の技術が「Infini-VLA」である。
その基礎アーキテクチャ自体は理論上、非常に長い時系列情報を扱える設計となっているが、実際の量産車ではデータや運転シーン、演算負荷を考慮し、過去30秒間の有効な時系列情報を保持する。
例えば前方車両が現在横を向いているという一瞬の状態だけを見るのではなく、その車両が数秒前から減速し、方向を変え、Uターンしようとしているという一連の動きを理解する。
これによって、一つひとつの画像として分断されていた道路上の出来事を、連続した「物語」として判断できるようにする。
長い過去を扱えば、その分だけ演算量は増える。一方、自動運転ではモデルを大きくした結果、反応が遅くなっては意味がない。
そこで導入したのが「Streaming Inference(ストリーミング自己回帰推論)」である。
従来のように、認識する → 計算する → 判断する → 軌跡を出力する → 次の映像を見るという離散的な処理ではなく、見ながら、考えながら、軌跡のTokenを出力する。
XPENGによれば、この仕組みによって端から端までの応答速度を300%向上させた。突然現れた障害物、遮蔽物の陰から出てくる二輪車などに対して、ミリ秒レベルで対応できるとしている。
最長21秒の未来を把握
過去と現在を理解した次は未来である。XPENGは世界モデル「X-Foresight」を量産モデルへ導入した。
周囲の交通参加者の位置、速度、移動傾向、道路環境などから、これから何が起こるのかを推演する。
量産版では未来6秒を予測対象とする。
発表会では、実験上は最長21秒まで予測可能であることも明らかにした。ただし未来を長く予測するほど演算量も増加する。
自動運転において実用上必要となる時間と演算負荷のバランスを考え、XPENGは6~7秒程度が合理的と判断した。