
CATL、蓄電池から電力インフラ全体へ――世界3,000件の実績と厦門30億元の実証拠点で長期信頼性を競う
[メンバーシップ限定]中国の電池最大手である寧徳時代(CATL)は、蓄電池事業の競争軸を、電池セルの性能や価格から、電力システム全体の安定性と長期信頼性へ移そうとしている。
2026年10月14~16日に福建省寧徳市で開催される「2026世界蓄電大会」で、CATLの曾毓群董事長は、蓄電システムが再生可能エネルギーの付属設備から、電力網に不可欠な新しいインフラへ変わりつつあるとの認識を示した。
CATLによれば、同社が世界で展開した蓄電プロジェクトは3,000件を超え、電池の研究開発・試験データは累計5,000億件以上に達する。
さらに、2026年5月には福建省厦門市で、計画投資額30億元の蓄電実証研究拠点を始動させた。すでに世界32件、合計16GWh超の蓄電プロジェクトを対象に、システム全体の実証を実施しているという。
今回の講演で注目されるのは、CATLが電池の供給能力だけでなく、発電所・蓄電所全体を設計、制御、検証する能力を、今後の競争力の中心に据えていることである。
世界の蓄電池出荷71%増、中国以外が初めて過半数
曾氏は講演の冒頭、世界の蓄電市場が急速に拡大していることを指摘した。
同氏が引用したSNE Researchのデータによれば、2026年上半期の世界の蓄電用電池出荷量は前年同期比71%増加した。
さらに、中国以外の市場が世界全体に占める割合は、初めて50%を超えたという。
欧州や米国に加え、中南米、東南アジア、アフリカなどでも、大規模な蓄電設備の導入が進んでいる。
ただし、曾氏が強調したのは市場の成長率そのものではない。
風力発電や太陽光発電の導入拡大によって、電力供給の変動への対応が重要になっている。一方、産業や交通の電動化、AIの普及に伴う計算需要の増加によって、電力消費側にも新たな変動要因が生じている。
電力システムは、供給側と需要側の双方で、従来より高度な調整能力を求められるようになった。
曾氏は、こうした変化を背景に、蓄電システムが再生可能エネルギーを補完する設備から、電力網そのものを支える基礎インフラへ変わりつつあると説明した。
その結果、蓄電産業は設備の性能指標を改善するだけでは不十分になり、電力網の要求に応えるシステム能力と、長期的な信頼性を確立する必要があるという。
電池セルの性能から、蓄電所全体の能力へ
曾氏が最初に挙げた課題は、地域ごとに異なる電力網の要求に対応することである。
欧州では、再生可能エネルギーを大量に受け入れるための柔軟な調整能力が求められる。
米国では、AIデータセンターなどの計算インフラが急速に拡大し、高い供給信頼性が重要になっている。
一方、アフリカや東南アジアでは、電力網そのものが相対的に脆弱な地域もあり、蓄電システムには電圧や周波数の安定化も求められる。
これらの要求は、電池セルの容量や充放電効率だけでは満たせない。
CATLが重視するのは、電池セル、パワーエレクトロニクス、スマート制御、蓄電所の運用最適化を組み合わせた、発電所・蓄電所全体としてのソリューションである。
曾氏は、電力網に対する支援能力、応答速度、調整能力などが、今後の蓄電システムの評価基準になると説明した。
つまり、同じ容量の蓄電池を導入しても、電力網の状態に応じて適切に充放電できるか、急激な負荷変動に対応できるか、長期間安定して運用できるかによって、その価値が変わるという考え方である。
南アフリカHydra、豪州Supernodeで蓄電所全体を供給
CATLは、こうした事業の具体例として、南アフリカのHydraプロジェクトと、オーストラリアのSupernodeプロジェクトを挙げた。
南アフリカのHydraは、同社がアフリカ最大のハイブリッド再生可能エネルギープロジェクトと位置付ける案件である。
CATLは、蓄電所全体を納入する方式でプロジェクトに参加したと説明している。
同社によれば、Hydraは年間約20万世帯の電力需要に相当する供給能力を持つ。
また、オーストラリアでは、同国最大級の蓄電プロジェクトとして紹介するSupernodeが稼働を開始したという。
CATLは、このプロジェクトが2032年ブリスベン五輪に向けたクリーン電力の供給にも貢献すると説明している。
両案件に共通するのは、電池セルの単独販売ではなく、電力システム全体の要求に対応する形で事業を展開していることである。
ただし、今回の講演では、それぞれのプロジェクトにおけるCATLの契約金額や利益率、運営収益などは明らかにされていない。
蓄電所全体の納入能力を持つことと、電力事業者として運営収益を得ることは区別する必要がある。