
VW、中国開発NEVを世界市場へ――「中国向け開発」から「中国を世界の供給拠点に」、既定戦略が具体化
[メンバーシップ限定]独フォルクスワーゲン(VW)が、中国で開発・生産した新エネルギー車(NEV)の海外輸出を拡大する。英Financial Timesが2026年10月に報じたもので、中国を単なる巨大販売市場ではなく、世界市場向けの開発・生産拠点として活用する戦略が具体化しつつある。
もっとも、これは突然の方針転換ではない。VWは2025年の公式投資家向け資料ですでに、中国の合弁会社と共同で海外輸出の機会を開拓する方針を明示していた。2026年4月には、中国戦略を「In China, for China & Support Global」と位置付けている。
実際、中国での輸出はすでに小規模ながら始まっている。
中国の自動車情報サイト「易車」が掲載する一汽VWの販売統計によると、2026年9月の輸出台数は1,179台で、同年4月の1,209台に次ぐ水準となった。1~9月累計でも輸出実績が確認できる。
重要なのは、今回の輸出拡大が中国事業の補完策にとどまらないことである。VWは中国で開発した技術や車両を、中国国外の市場でも活用する方向へ進んでいる。
2025年から輸出市場の開拓を明示
VWが中国製車両の輸出拡大を正式な戦略として示したのは、今回が初めてではない。
2025年4月23日のChina Investor Updateでは、VW乗用車ブランドの中国事業責任者だったシュテファン・メハ氏が、合弁会社と協力して海外市場を開拓する方針を説明した。
公式投資家向け資料では、2024年のベトナム向け輸出試行、2025年の中東・ウズベキスタン、2026年以降のASEAN市場などが輸出展開の対象として示されている。
さらに2026年4月23日のChina Investor Updateでは、VW中国CEOのラルフ・ブラントシュテッター氏が、「In China, for China & Support Global」を掲げた。
これは、中国で開発した車両や技術を中国市場向けだけでなく、グループの世界事業にも活用するという方向性である。
実際、VWの2025年年次報告書でも、中国での開発期間を最大30%短縮したことや、中国で開発したモデルが新たな輸出市場の開拓につながることを明記している。

一汽VW、2026年1~9月に3,919台を輸出
この戦略は、中国の合弁会社の販売統計にも現れ始めている。
易車が掲載する一汽VWの全国販売データには、卸売、小売、輸出、最終顧客向け販売という四つの指標が設けられている。
2026年の月別輸出台数は次の通りである。
1月:77台
2月:50台
3月:467台
4月:1,209台
5月:6台
6月:554台
7月:326台
8月:51台
9月:1,179台
出所:易車掲載の一汽VW全国販売統計
9月の輸出台数は、8月の51台から大幅に増加した。もっとも、4月にも1,209台を記録しており、輸出は月によって大きく変動している。
2025年9月は554台だったため、2026年9月の輸出台数は前年同月の約2.13倍となった。
ただし、2025年10月以降にも輸出実績があり、輸出そのものが2026年に初めて始まったわけではない。
また、この統計は一汽VW全体の輸出台数であり、NEVだけを対象としたものではない。輸出車種や仕向け地も、この統計だけでは特定できない。
現時点では、輸出が継続的に行われていることを示すデータとして位置付けるのが適切である。
中国からウズベキスタンへ、販売と現地生産を組み合わせる
VWが中国を海外市場向けの供給拠点として活用している具体例が、ウズベキスタンである。
VWは2026年、ウズベキスタン市場へのVWおよびJettaブランドの展開を公式発表した。
この事業では、中国のVWブランド組織が輸出市場を直接管理し、中国から車両を供給する。
当初の車種には、ティグアンL Pro、パサートPro、テラモントProなどが含まれる。
さらに、現地企業Alyans Autoと協力し、タシケントでSKD方式による車両組立工場を立ち上げる計画も示した。
これは、中国から完成車を輸出するだけではなく、販売規模や市場条件に応じて現地組立へ移行する構想である。
VWは公式発表で、中国の生産設備とサプライチェーンを利用し、東南アジア、中東、CIS諸国、アフリカなどへの展開機会を検討すると説明している。
なお、ウズベキスタンで当初導入された車種はガソリン車を含むため、この事例をそのまま中国開発NEVの輸出実績とみなすことはできない。
それでも、中国のVW事業が海外市場への供給と販売管理を担い始めている点は重要である。
