
中国ADAS、完成車メーカーが「箱」から「チップ」まで侵食――BYDはドメコン26%、XPENG・NIOは半導体まで内製
[メンバーシップ限定]中国の運転支援システムを支える「頭脳」の市場で、完成車メーカー自身が急速に存在感を高めている。
NE時代が国内完成車の端末販売データを基にまとめた2026年8月の統計によると、運転支援用ドメインコントローラーの搭載量は66万セット、そこに搭載されたドメインコントローラー用チップは81万個に達した。
ドメインコントローラーではBYDが17万1694セット、シェア26.0%で首位。徳賽西威(Desay SV)が11万335セット、16.7%、華為(Huawei)が6万9068セット、10.5%で続いた。上位3社だけで53%を超える。
一方、その内部でAI演算を担うチップでは様相が変わる。
NVIDIAが24万6312個、30.2%で首位。地平線(Horizon Robotics)が16万1063個、19.8%、Huaweiが12万743個、14.8%、Teslaが10万50個、12.3%で続く。
つまり中国のADAS市場では、「誰が運転支援システムを作るのか」と「誰のチップでAIを動かすのか」が、まだ同じ競争ではない。
しかし、その二つの境界へ完成車メーカーが入り始めている。
BYDはドメインコントローラーで首位に立ち、自社4nm運転支援チップの量産へ進む。小鵬(XPENG)と蔚来(NIO)はすでにドメインコントローラーとチップの双方でランキング上位へ入った。
これまでNVIDIA、Horizon Robotics、Huawei、Desay SVなどが中心だった領域へ、完成車メーカーが「箱」から「半導体」まで下り始めたのである。
中国ADASの「頭脳」、8月だけで66万セット
まず今回の数字には注意が必要である。
2026年8月のドメインコントローラー搭載量は66万セットであるのに対し、チップは81万個となっている。
これは一つのドメインコントローラーに複数の演算チップを搭載する構成があるためで、二つのランキングを単純に一対一で対応させることはできない。
またNE時代の統計は、中国国内の完成車端末販売を基準としており、輸出入は含まない。各部品メーカーが公表する実際の出荷量とも一致しない可能性がある。
それでも、中国市場でどの企業の運転支援ハードウェアが実際の車両へ大量搭載されているのかを見るには興味深い。
特に今回、上下二つのランキングを並べることで、運転支援産業の分業構造が見えてくる。
BYD、ドメインコントローラーで26%を握る
最も目立つのがBYDである。
8月の運転支援ドメインコントローラー搭載量は17万1694セット。シェアは25.99%に達し、2位のDesay SVを9ポイント以上引き離した。
背景にあるのが「天神之眼」の急速な標準化である。
NE時代によれば、2026年8月31日時点で、BYDの天神之眼とHuaweiの乾崑ADSを搭載した車両の累計販売は372万台を超えた。
BYDはもともと電池、モーター、パワー半導体などを自社側へ深く取り込んできた企業である。その垂直統合が、運転支援でもドメインコントローラーへ広がっている。
ただし、今回のチップランキングではBYDは上位8社に入っていない。
現時点の大量搭載という意味では、BYDはまず運転支援システムを載せる「箱」の側で圧倒的な規模を作ったと見る方がよい。
しかしチップ市場の首位はNVIDIA
その「箱」を開けて、AIを実際に演算する半導体を見ると首位はNVIDIAになる。
8月の搭載量は24万6312個、シェア30.21%。
Horizon Roboticsの19.75%、Huaweiの14.81%、Teslaの12.27%が続き、上位4社だけで約76%を占める。
ここにはドメインコントローラー市場とは異なる産業構造がある。
NVIDIA自身は今回のドメインコントローラー上位10社には登場しない。一方でチップでは3割を握る。
つまりNVIDIAの強さは、完成した運転支援システムを自動車メーカーへ供給することよりも、そのシステムを作る企業が利用する計算基盤を握ることにある。
しかも競争力はピーク演算性能だけではない。
NE時代も、運転支援チップを評価する際には、モデル実行効率、メモリー帯域、消費電力、開発ツールチェーン、安全検証などを総合的に見る必要があると指摘している。
チップ単体から、AI開発基盤全体を巡る競争になっている。
Huaweiだけが「箱」と「チップ」の双方で3位
この二つのランキングを重ねると、Huaweiの特殊な立ち位置が際立つ。
ドメインコントローラーでは6万9068セット、10.46%で3位。
チップでも12万743個、14.81%で3位である。
NVIDIAやHorizon Roboticsが半導体・計算プラットフォーム側で強く、Desay SVがTier1としてドメインコントローラー側で大きなシェアを持つのに対し、Huaweiはその両方にいる。
さらにその上には乾崑ADSという運転支援システムそのものがある。
チップ → ドメインコントローラー → 運転支援システムまでを縦につなげられることが、Huaweiの特徴である。
そして8月には乾崑ADS搭載車が累計200万台を突破したとしている。
中国の運転支援市場においてHuaweiが単なるADASサプライヤーでも、単なる半導体メーカーでもないことが、今回の数字にも表れている。