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欧州でステランティスは中国依存を強め、フォルクスワーゲンはやや距離を取る|世界自動車朝刊2026年10月14日

    今日の結論

    世界の自動車メーカーが、地域ごとに異なる成長戦略を具体化し始めている。

    Hyundai Motor Groupは13日、2026~2032年にインドへ155億ドルを投資すると発表した。既存の年間140万台超の生産能力をさらに拡大するとともに、研究開発、部品調達、充電インフラ、販売金融まで整備する。インドを国内販売市場だけでなく、世界への輸出・開発拠点として位置付ける方針である。

    一方、BMW Groupの第3四半期世界販売は6.3%減、中国では24.8%減少した。しかし欧州のBEV販売は37.5%増え、欧州販売の34.7%がBEVとなった。

    Stellantisでも地域差が鮮明になった。第3四半期の世界出荷は1%減だったが、欧州は10%増、北米は12%減である。欧州では低価格車の投入と、中国のLEAPとの協業が販売回復を支えている。

    さらにStellantisは、LEAPや東風との協業を通じて、中国メーカーの開発速度やコスト競争力を取り込む方針を改めて示した。OpelではLEAPと中型電動SUVを共同開発している。

    今日の4本から見えるのは、世界の自動車メーカーが同じ方向へ進んでいるわけではないということである。

    インドでは、生産能力と産業基盤を拡大する。

    欧州では、BEV市場の成長を取り込みながら、開発・製造コストを下げる。

    北米では、需要に合わせて生産と商品構成を調整する。

    そして中国企業との関係では、競争相手でありながら技術協力の相手にもなる。

    世界の自動車産業は、地域ごとに異なる市場環境へ対応しながら、技術開発と生産規模の利益をどのように維持するかという段階へ進んでいる。

    1.Hyundai、インドへ155億ドル投資――生産・研究開発・販売金融まで世界戦略拠点へ

    Hyundai Motor Groupは10月13日、インドで2026~2032年に総額155億ドルを投資すると発表した。

    鄭義宣会長がニューデリーでナレンドラ・モディ首相と会談し、長期的な投資方針を説明した。

    今回の計画は、単なる工場増設ではない。

    HyundaiとKiaの完成車生産能力を拡大するとともに、研究開発施設、部品メーカーの育成、次世代技術の開発まで含めて、インドの自動車産業基盤を強化する。

    投資を統括する専用法人も設立する方針である。

    すでに年間140万台超の生産能力

    Hyundai Motor Groupは現在、インドに3つの主要完成車生産拠点を持つ。

    Hyundaiのチェンナイ工場は年間82万4000台、プネー工場は17万台、Kiaのアナンタプル工場は43万1000台の生産能力を持つ。

    合計では年間142万5000台となる。

    今後はプネー工場の能力増強を段階的に進める。

    ただし、今回の155億ドルすべてが完成車工場の建設に使われるわけではない。

    研究開発施設への投資として約7億ドルを計画しており、車両試験コースの整備なども含まれる。

    ここで注目すべきなのは、インドを単なる低コスト生産拠点として扱っていないことである。

    Hyundaiはインドで研究開発機能を強化し、次世代自動車技術を開発する拠点へ引き上げようとしている。

    これは、海外工場で現地市場向けの車両を組み立てるという従来の海外進出モデルとは異なる。

    販売金融や充電インフラまで投資対象

    今回の投資計画には、完成車以外の事業も含まれる。

    HyundaiはEV充電インフラ、車両の販売金融、使用済み自動車のリサイクル、新しいモビリティサービスなども事業機会として挙げた。

    インドの現地部品メーカーへの投資や協業も拡大する。

    完成車の生産台数を増やすだけでは、長期的な競争力は確保できない。

    部品を現地調達できなければ、輸入コストや為替変動の影響を受ける。

    販売金融が十分に整備されていなければ、消費者の購入能力が販売拡大の制約になる。

    EVを増やすには、充電インフラも必要になる。

    Hyundaiは、こうした自動車販売を支える仕組みまで含めてインド事業を拡大しようとしている。

    インドは中国の代替なのか

    今回の投資を、中国からインドへの単純な生産移転と考えるのは適切ではない。

    Hyundaiにとってインドは、すでに大規模な生産・販売基盤を持つ重要市場である。

    今回の発表は、その既存基盤をさらに拡張するものであり、中国工場の閉鎖や生産移管を発表したものではない。

    ただし、世界の自動車メーカーが中国市場で厳しい競争に直面する一方、インドでは市場拡大と生産投資が続いていることは重要である。

    Suzuki Motor Corporationなどもインドへの長期投資を進めている。

    今後のインドは、国内需要の成長だけでなく、世界向けの完成車輸出や部品供給を担う拠点として存在感を高める可能性がある。

    Hyundaiの155億ドル投資は、インドを販売市場から世界的な自動車産業拠点へ引き上げる動きの一つである。

    2.BMW、中国販売25%減でも欧州BEVは37.5%増――欧州では販売の3台に1台がBEV

    BMW Groupは13日、2026年第3四半期の販売実績を公表した。

    7~9月の世界販売は55万1072台で、前年同期比6.3%減少した。

    最大の減少要因は中国である。

    中国販売は11万4355台となり、24.8%減少した。

    一方、欧州は23万5628台で2.7%増、米国は10万6741台で2.5%増だった。

    中国での減少を欧米の成長だけでは補えず、世界全体では販売減少となった。

    欧州BEVは37.5%増

    今回の統計で重要なのは、BEV販売の動向である。

    BMW Groupの第3四半期BEV販売は世界で11万257台となり、前年同期比7.2%増加した。

    そのうち欧州は8万1941台で、37.5%増だった。

    欧州におけるBMW Groupの販売台数に占めるBEV比率は34.7%に達した。

    つまり、BMWが欧州で販売した車両の約3台に1台がBEVだったことになる。

    これは欧州新車市場全体のBEVシェアではなく、BMW Group自身の欧州販売に占める割合である。

    ドイツ国内でもBMW GroupのBEV販売は38.5%増加した。

    欧州の高級車市場では、BEVがすでに重要な商品カテゴリーになっている。

    ただし、世界全体ではBEVが7.2%増えた一方、PHEVを含む電動車全体は0.3%減だった。

    BEVの成長が、そのまま電動車全体の成長を意味するわけではない。

    iX3の欧州受注は10万件超

    BMWは新世代車両「Neue Klasse」の第1弾となるiX3について、欧州での新規受注が1年間で10万件を超えたと説明した。

    同社はこれを、BMW Groupの新型車投入として過去最も成功した事例と位置付けている。

    ただし、受注件数と実際の納車台数は区別する必要がある。

    今回の第3四半期販売実績に、10万台がそのまま計上されたわけではない。

    BMWは11月から中国仕様の新型iX3の展開を開始する予定である。

    中国では国内メーカーとの競争が激しく、欧州での成功がそのまま中国へ広がる保証はない。

    しかし、欧州での受注実績は、新しい電動車プラットフォームへの投資が需要につながっていることを示している。

    中国で減少、欧州では電動化が進む

    前日の朝刊では、VW Groupの中国販売が38.5%減少したことを取り上げた。

    今回のBMWも中国で24.8%減となった。

    両社の販売構造や商品構成は異なるものの、ドイツメーカーが中国市場で厳しい競争に直面していることは共通している。

    一方、欧州のBEV市場ではBMWの販売が大きく伸びている。

    ここで重要なのは、中国事業の不振と、欧州における電動化の進展を分けて評価することである。

    BMWの世界販売は減少した。

    しかし、それだけで同社のBEV戦略が失敗しているとは言えない。

    反対に、欧州BEV販売が増加したからといって、中国事業の問題が解決したわけでもない。

    今後は地域別販売だけでなく、地域別の利益率や商品構成まで確認する必要がある。

    3.Stellantis、欧州出荷10%増、北米12%減――LEAPが欧州回復を支える

    Stellantisは13日、2026年第3四半期の推定連結出荷台数を発表した。

    世界全体では128万6000台となり、前年同期の130万台から1%減少した。

    ただし、地域別に見ると大きな差がある。

    北米は35万7000台で12%減少した。

    一方、欧州は58万8000台で10%増加した。

    南米は25万1000台でほぼ横ばい、中東・アフリカは7万5000台で21%減となった。

    なお、今回の数字はメーカーから販売店や顧客などへの出荷台数であり、最終消費者への小売販売台数とは一致しない。

    北米はJeep減少、Ramが一部を補う

    北米の出荷減少は、主に夏季の計画的な生産停止によるものである。

    Jeep Grand CherokeeとCompassでは、それぞれ前年同期比で約2万5000台減少した。

    一方、Ramは約1万7000台増加した。

    新型車や改良モデルに加え、HEMI V8エンジンを搭載するRam 1500など、パワートレインの選択肢を拡大したことが寄与した。

    ここでは、欧州のBEV拡大とは異なる動きが起きている。

    北米では、消費者が求める大型SUVやピックアップの商品構成を調整し、販売を回復させようとしている。

    Stellantisは地域ごとの需要に合わせて、商品投入と生産計画を組み直している。

    欧州ではLEAPが4万4000台へ

    欧州の出荷増加で注目すべきなのは、LEAPの存在である。

    Stellantisの公式発表によると、LEAPブランドの欧州出荷は前年同期から約3万4000台増加し、4万4000台となった。

    B10やB03Xなどの新型車投入が寄与した。

    欧州全体の出荷増加は約5万4000台だったため、LEAPの増加分は、その6割強に相当する。

    もちろん、Stellantis本体の各ブランドでも増減があり、LEAPだけが欧州回復の要因ではない。

    Citroën C3、C3 Aircross、Opel Frontera、Fiat Grande Pandaなど、共通のSmart Carプラットフォームを使う車種も約2万6000台増加した。

    さらにFiat 500 Hybridや新型Jeep Compassも増加に寄与した。

    それでも、LEAPの寄与は無視できない。

    Stellantisは中国メーカーと提携することで、欧州の低価格BEV市場へ商品を投入している。

    その成果が、今回の出荷統計にも表れた。

    中国企業との協業が欧州事業の数字に現れる

    ここには従来の欧州メーカーとは異なる構造がある。

    Stellantisは、中国メーカーとの競争に直面している。

    しかし同時に、中国メーカーとの協業によって欧州での販売を増やしている。

    中国メーカーを競争相手として排除するだけではなく、技術や商品を取り込むことで自社の競争力を高めようとしている。

    ただし、出荷台数の増加が、そのまま収益性の改善を意味するわけではない。

    LEAPとの協業によってStellantisがどの程度の利益を得ているのか、既存ブランドの販売をどの程度補完しているのかについては、今後の決算で確認する必要がある。

    欧州販売の回復を中国メーカーとの協業が支えるという構造は、今後の欧州自動車産業を考えるうえで重要な変化である。

    4.Opel、LEAPと中型電動SUVを共同開発――欧州メーカーが中国の開発速度を取り込む

    13日のパリ・モーターショーでは、Stellantisと中国メーカーの技術協業について、新たな説明があった。

    StellantisのAntonio Filosa CEOは、LEAPや東風との協業を通じ、中国メーカーの技術的な競争力を学び、自社の開発能力を補完する考えを示した。

    その具体例が、OpelとLEAPによる中型電動SUVの共同開発である。

    OpelのFlorian Huettl CEOは、このプロジェクトについて、中国側の開発速度を高く評価した。

    Reutersによると、両社は約2年という短い開発期間で新型車を市場へ投入することを目指している。

    中国メーカーが開発パートナーになる

    従来、欧州メーカーと中国メーカーの協業は、欧州側が技術を提供し、中国側が生産や市場展開を担う形が中心だった。

    現在は、その関係が変わりつつある。

    中国メーカーはBEVの開発速度、電子電気アーキテクチャ、ソフトウェア、部品調達などで競争力を高めている。

    欧州メーカーは、そうした能力を自社の商品開発へ取り込もうとしている。

    OpelとLEAPの共同開発は、その具体的な事例である。

    重要なのは、LEAPブランドの車両を欧州で販売するだけではないことである。

    欧州メーカー自身のブランド車両を、中国メーカーと共同で開発する。

    この段階へ協業が進めば、完成車の販売提携とは異なる意味を持つ。

    VWは欧州での中国企業との合弁を急がない

    一方、Volkswagen GroupのOliver Blume CEOは13日、欧州における中国企業との新たな合弁について、現時点では必要性を感じていないと説明した。

    VWは中国でXPENGとの技術協業を進めている。

    しかし、その協業は主として中国市場向けであり、欧州で中国企業との合弁を拡大する具体的な計画は示していない。

    ここにStellantisとの違いがある。

    Stellantisは中国企業の開発能力を欧州の商品開発へ直接取り込む。

    VWは中国市場での協業を進めながら、欧州では自社の開発・生産能力を活用する方針を維持している。

    どちらが優れているかは、現時点では判断できない。

    Stellantisは開発速度やコストを改善できる可能性がある一方、中国企業への技術依存が高まる可能性もある。

    VWは自社の技術基盤を維持できる一方、開発費や商品投入速度で不利になる可能性がある。

    今後の競争では、単に中国メーカーと提携しているかどうかではなく、どの技術を自社で保有し、どの技術を外部から取り込むかが重要になる。

    今日の小さな変化

    Stellantis、新車台をSTLA Oneへ統合――Peugeotから世界展開

    Stellantisは13日、新しい世界共通の車両プラットフォーム「STLA One」を、まずフランスのPeugeotブランドへ導入すると説明した。

    その後、欧州の他ブランド、さらに北米へ展開する計画である。

    STLA Oneは、BEV、HEV、従来型エンジン車など複数のパワートレインに対応するモジュール型車両プラットフォームである。

    30車種以上への採用を想定し、2035年には年間200万台超の生産を支えることを目指す。

    今回の発表は、Stellantisが地域別の商品戦略を進めながら、車両の基本構造では世界共通化を維持しようとしていることを示す。

    地域ごとに異なる車両を販売しても、基本構造まで個別開発すればコストが増える。

    STLA Oneは、地域別の商品最適化と世界規模の開発効率を両立させようとする取り組みである。

    Renault、EUの2030年規制次第で欧州生産30万台減の可能性

    Renault GroupのFrançois Provost CEOは13日、EUが2030年の自動車CO₂排出削減目標について柔軟な対応を認めなければ、欧州での生産を約30万台削減せざるを得なくなる可能性があると警告した。

    これは正式な生産削減計画の発表ではなく、規制が変更されなかった場合の条件付きの見通しである。

    欧州メーカーは中国製車両への輸入規制を歓迎する一方、域内の高いエネルギーコストや電池生産能力の不足、排出ガス規制への対応負担についても支援を求めている。

    欧州メーカーが求めているのは、中国車の輸入抑制だけではない。

    自社が欧州で利益を出しながら生産を続けられる産業環境の整備である。

    今日の読み筋

    今日のニュースでは、世界の自動車メーカーが異なる地域で、異なる方法によって競争力を確保しようとしていることが見えた。

    Hyundaiはインドへ155億ドルを投資する。

    BMWは中国で販売を減らしながら、欧州ではBEV販売を大きく伸ばす。

    Stellantisは北米で生産を調整する一方、欧州では低価格車とLEAPとの協業によって出荷を増やす。

    さらにOpelは、中国メーカーの開発能力を自社ブランドの商品開発へ取り込もうとしている。

    ここで重要なのは、世界の自動車産業が単純に地域別へ分裂しているわけではないことである。

    確かに販売市場は地域ごとに異なる。

    米国では大型SUVやピックアップの需要が重要であり、欧州ではBEV市場が拡大している。

    中国では国内メーカーとの競争が激しく、インドでは生産能力と市場の拡大が続いている。

    しかし、開発や生産のすべてを地域ごとに分ければ、グローバルメーカーが持つ規模の利益を失う。

    そこで各社は異なる方法を選んでいる。

    Hyundaiはインドを生産・研究開発の世界拠点へ育てる。

    BMWはNeue Klasseという新しい技術基盤を世界へ展開する。

    StellantisはSTLA Oneによって車両構造を共通化しながら、地域別の商品を開発する。

    さらに中国メーカーとの協業によって、開発速度とコスト競争力を補おうとしている。

    つまり現在の自動車産業では、市場への対応は地域別に進めながら、技術開発と生産の規模の利益は世界全体で確保するという、二つの課題を同時に解決する必要がある。

    その意味で、今日最も長期的な意味を持つのはHyundaiのインド投資である。

    完成車工場を増やすだけでなく、研究開発、部品調達、販売金融、充電インフラまで整備する。

    これは単なる販売拡大策ではない。

    インドで自動車を開発し、生産し、販売し、海外へ輸出するための産業基盤を構築する取り組みである。

    一方、StellantisとLEAPの協業は、別の方向から同じ問題へ取り組んでいる。

    自社ですべてを開発するのではなく、外部企業の技術や開発能力を取り込むことで、商品投入を速める。

    この二つは対照的である。

    一方は、自社グループの産業基盤を長期的に強化する。

    もう一方は、外部との協業によって開発能力を補完する。

    しかし、どちらも目的は同じである。

    地域ごとに異なる市場環境へ対応しながら、競争力のある商品を、利益が出る形で供給すること。

    世界の自動車メーカーにとって、今後重要になるのは、単にどの地域で販売を増やすかではない。

    どこで開発するのか。

    どこで生産するのか。

    どの技術を自社で持つのか。

    どの技術を外部から取り込むのか。

    そして、その組み合わせによってどの程度の利益を確保できるのか。

    10月14日の世界自動車朝刊は、世界の自動車産業が地域別の市場対応とグローバルな開発・生産効率を両立させるため、企業構造そのものを組み直し始めていることを示す一日となった。

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