
中国、自動車の「表情を持つライト」を規制へ――走行中の発光パターン変更や擬人化表現を制限
[メンバーシップ限定]中国が、自動車の外部照明に関する国家標準の改訂で、車両の「表情」を演出するライトに新たな制限を設けようとしている。
工業情報化部が所管する強制国家標準「GB 4785」の改訂案では、前後のポジションランプについて、複数の発光パターンから好みのデザインを選択することを条件付きで認める一方、走行中の切り替えを禁止する。また、人間や動物の顔、擬人化された表情を形成する発光パターンも認めない。
さらに、公道走行中は、国家標準で定義されていない装飾用の発光装置を原則として点灯できなくする。信号待ちや渋滞で一時停止している状態も、この制限の対象となる。
中国では近年、LEDを細かく制御し、車両の前後に独自の発光デザインを表示する技術が発達してきた。ライトは夜間の視認性を確保する装置であると同時に、ブランドの個性や車両の状態を周囲へ伝える装置にもなっている。
今回の改訂案は、こうした技術を全面的に禁止するものではない。車両の安全に必要な照明機能と、デザインや演出を目的とする発光機能を区別し、走行中の表示に明確な制限を設けるものである。
今回の改訂案は、中国の工業情報化部が所管し、全国自動車標準化技術委員会の灯具・照明分科会が策定を担当する強制国家標準である。施行予定日は2028年1月1日とされている。
起草にはBYD、小鵬(XPENG)、吉利(GEELY)、東風汽車、上汽VW、一汽VWなどの完成車メーカーに加え、華為(Huawei=ファーウェイ)の引望智能、華域視覚、星宇車灯、HELLA、ヴァレオ系の企業などが参加している。
ただし、現在は改訂案の意見募集段階であり、規制内容と施行日は正式公布までに変更される可能性がある。
前後のポジションランプは複数デザインから選択可能
今回の改訂案で注目されるのが、第4.29項である。
この条項では、型式認証において複数の異なる発光面形状が認められている場合でも、同一車両でその形状を選択できるのは、原則として前後のポジションランプに限るとしている。
前後のポジションランプは、車両の存在や幅を周囲に知らせるための灯火である。
従来は、車両のデザインとして固定されていることが一般的だったが、LEDや電子制御技術の発達によって、同じ灯体で複数の発光パターンを作り出せるようになった。
例えば、横一文字の発光パターンと、左右に分かれた発光パターンを切り替えるような設計が考えられる。
改訂案は、こうした発光面形状の選択を一定の条件で認める。
ただし、選択可能な各パターンは、いずれも光度や色などの技術要件を満たさなければならない。
デザインを変更できるからといって、車両の存在を知らせるという本来の機能を損なうことは認められない。
一度走り出したら、発光パターンを変更できない
さらに重要なのが、発光パターンを選択できるタイミングである。
改訂案では、運転者が発光面形状を選択できるのは、車両が駐車状態にあるとき、または車両を起動してから走り出すまでの間に限られる。
いったん走行状態に入ると、別の発光パターンへの切り替えはできず、車両の電源を切るまで選択したパターンを維持しなければならない。
つまり、走行中にドライバーが気分に応じてライトのデザインを変更したり、車両の走行状況に合わせて装飾的な発光パターンを切り替えたりすることは、原則として認められなくなる。
ただし、これはすべてのライトの明るさや点灯状態を固定するという意味ではない。
方向指示器やブレーキランプなど、走行中に状態が変化することを前提とした安全機能は、別途定められた技術要件に従って作動する。
今回制限されるのは、前後のポジションランプについて、複数の発光面形状を選択する機能である。
また、格納式ライトの可動部分によって前側のポジションランプの発光面が変化する場合には、例外が設けられている。
人間や動物の顔、擬人化した表情も禁止対象
第4.29項は、発光パターンの内容についても制限を設けている。
ライトの透光面や発光素子が点灯した際、その発光パターンによって、人間の顔、動物の顔、その他の擬人化された図形を形成したり、組み合わせたりすることを認めない。
特に対象となるのは、表情としての意味を持つ図形である。
これは、車両前面のライトを目のように見せたり、複数の発光部分を組み合わせて笑顔や怒った顔などを表現したりするデザインに影響する可能性がある。
中国では、車両を単なる移動手段ではなく、利用者とコミュニケーションするスマート端末として設計する動きが広がってきた。
そのなかで、外部の発光装置を使って車両に表情を持たせることも、デザインやユーザー体験の一つとして考えられてきた。
しかし今回の改訂案では、灯具の発光パターンによって擬人化された表情を作り出すことに明確な制限を設けている。
もっとも、車両のフロントデザイン全体が人間の顔に似ているだけで禁止されるという意味ではない。
条文が対象としているのは、ライトの透光面や発光素子が点灯することで形成される発光パターンである。
ボディ形状、グリル、通常のヘッドライト配置などによって、結果的に顔のように見えるデザインまで一律に禁止する規定ではない。
信号待ちや渋滞中も「走行状態」に含まれる
今回の改訂案では、発光パターンの選択に加え、装飾用ライトそのものの使用条件も厳格化する。
第4.31項では、国家標準で定義された灯火機能や、特定の緊急車両などに必要な装置を除き、公道上で車両が走行状態にある場合、その他の発光装置を点灯してはならないと規定する。
ここで重要なのが、「走行状態」の定義である。
改訂案では、車速がゼロを超えている状態だけでなく、信号待ちや交通渋滞によって一時的に停止している状態も走行状態に含める。
したがって、赤信号で停止したからといって、走行中には使用できない装飾用ライトを点灯できるわけではない。
これは、単に走行速度を検知して装飾照明のオン・オフを切り替えるだけでは対応できないことを意味する。
車両が実際に駐車しているのか、それとも公道上で一時停止しているのかを区別する必要がある。
外部照明の制御は、ライト単体の機能から、車両全体の状態認識と連動する機能へと変わっていく。