
2026年7月中国新興・新ブランド販売――市場全体2割超減の中、シェア29%まで拡大
[無料]2026年7月、中国の新興・新ブランド市場は、中国乗用車市場全体の縮小とは逆方向に動いた。
新車購入時保険加入データをもとに、民間新興、民間大手の新ブランド、国有メーカーの新ブランド、Huawei系をCHINA CASEで独自集計したところ、7月の販売台数は42万4,472台となった。前年同月比13.8%増、1~7月累計でも前年同期比16.4%増である。
同じデータにおける中国市場全体は148万5,492台で、前年同月比23.5%減。つまり市場全体が2割以上縮小する中、新興・新ブランドは二桁成長した。
その結果、今回集計した新興・新ブランドが中国市場全体に占める比率は28.6%に達した。
中国市場で起きているのは、単純な新車販売の減少だけではない。縮小する市場の中で、従来ブランドから新興・新ブランドへ需要が移動する構造変化が続いている。
※販売台数は新車購入時保険加入データ。輸出は含まず、中国国内販売のみ。メーカー公表の卸売・納車台数とは集計基準が異なる。
LEAPが6.4万台、民間新興で一社だけ抜け出す
民間新興で最大となったのはLEAPMOTOR(零跑汽車)である。7月は6万4,397台。前年同月比61%増、1~7月累計でも前年同期比48%増となった。
前月比では8%減だったものの、それでも他の主要新興勢との差は大きい。
Xiaomiは3万1,264台、理想(Li Auto)は3万281台、小鵬(XPeng)は2万5,663台、NIOは2万1,090台。
つまり7月の民間新興市場は、LEAP=6万台台に対して、Xiaomi・理想=3万台台、小鵬・NIO=2万台台という形になった。
メーカー公表の納車台数ではLEAPは7月に初めて10万台を突破している。ただし、これは海外を含むメーカー側の交付実績であり、今回の保険加入データによる中国国内販売6.4万台とは対象範囲が異なる。
それでも国内市場だけで6万台を超えており、LEAPが新興勢の中から一段抜け出してきたことは変わらない。
「蔚小理」ではNIOだけが前年を大幅に上回る
かつて中国新興EVを代表した「蔚小理(NIO・XPeng・Li Auto)」を見ると、状況はかなり分かれた。
理想は3万281台で前年同月比4%減、1~7月累計では8%減。小鵬は2万5,663台で前年同月比22%減、累計でも25%減だった。
これに対してNIOは2万1,090台と絶対台数では両社を下回るものの、前年同月比69%増、累計でも63%増となった。
さらにNIOグループにはONVO(楽道)とfirefly(萤火虫)がある。ONVOは1万878台で前年同月比29%増、fireflyは6,013台で同119%増。
3ブランドを単純合算すると、NIOグループは7月に3万7,981台となる。
NIO本体だけを見れば2万台規模だが、グループとしては高級市場のNIO、より大衆側を狙うONVO、小型車のfireflyという多ブランド化が販売規模の拡大につながり始めている。
実際、メーカー公表値でも7月のNIOグループ全体の交付は3万5,934台で、NIO、ONVO、fireflyの3ブランドすべてが前年を上回った。
Xiaomiは3万台を維持、急拡大から次の段階へ
Xiaomiは3万1,264台。前年同月比では2%増、1~7月累計では15%増だった。一方で前月比は10%減となっている。
新規参入直後の急速な立ち上がりを経て、3万台前後の販売規模を維持する段階へ入った形である。
メーカー公表値でも7月の交付は3万台超とされており、4カ月連続で3万台以上を維持した。
ただし、ここからさらに上へ行けるかは製品ラインアップの拡張に左右される。
LEAPのように6万台、さらにメーカー納車ベースでは10万台という規模へ到達するには、一つ、二つのヒット商品だけではなく、複数価格帯をカバーする製品群が必要になる。
Xiaomiにとって次の焦点は、参入成功そのものではなく、自動車メーカーとして販売規模をどこまで拡張できるかへ移りつつある。
方程豹、ZEEKRが「新興」と同じ販売レンジへ
新しいブランドを生み出しているのは新興メーカーだけではない。既存民間メーカーが立ち上げた新ブランドも強い。
BYD系では方程豹が2万9,422台で前年同月比111%増、1~7月累計でも117%増。
DENZA(騰勢)は1万5,284台で前年同月比56%増だった。ただし累計では14%減となっており、足元の回復と年間を通じた状況は分けて見る必要がある。
仰望は508台。絶対台数は小さいものの、前年同月比48%増、累計78%増だった。
吉利系ZEEKRは2万5,238台で前年同月比79%増、累計66%増となった。
ここで重要なのは、これらがもはや「大手メーカーの実験的な新ブランド」という販売規模ではないことである。方程豹は理想やXiaomiとほぼ同規模、ZEEKRは小鵬とほぼ同規模まで来ている。
新興メーカー対従来メーカーという二分法そのものが、販売市場では崩れ始めている。従来メーカー自身が、新興メーカーと同じようなブランドを内部から作り出している。
国有系ではARCFOXが突出、長安はブランド間で明暗
国有メーカーの新ブランドでは北汽ARCFOX(極狐)が目立つ。7月は2万3,587台で、前年同月比156%増、前月比でも14%増。1~7月累計も82%増となった。
市場全体が弱く、今回集計した新興・新ブランド全体も前月比7%減となる中で、単月・前年・累計の三方向すべてでプラスとなった数少ないブランドである。
長安系では啓源が2万7,799台と販売規模では最大だが、前年同月比14%減。ただし1~7月累計では68%増であり、今年前半に大きく販売を伸ばしたことが分かる。
DEEPAL(深藍)は2万790台で前年同月比15%増だが、累計では3%減。AVATRは3,582台で前年同月比57%減、累計45%減となった。
同じ長安グループが複数のNEVブランドを展開していても、結果はまったく同じではない。
中国大手メーカーが新ブランドを作れば自動的に成長できる段階ではなく、新ブランド同士でもすでに淘汰が始まっている。
国有新ブランドでは「成功」と「失速」が同時進行
この違いは他社ではさらに鮮明である。
広汽埃安(AION)は2万2,997台で前年同月比19%減、累計23%減。
東風VOYAH(嵐図)は1万413台。前年同月比17%減だったものの、累計では14%増を維持した。
上汽の智己(IM)は4,840台で前年同月比22%減。ただし累計では26%増となっている。
一方、東風奕派(eπ)は1,390台で前年同月比68%減、東風納米(NAMMI)は1,315台で73%減。
上汽飛凡は235台、広汽合創(HYCAN)はわずか3台となった。
数年前、中国メーカーはNEV転換に対応するため大量の新ブランドを立ち上げた。
その結果が現在出始めている。
ARCFOXのように2万台規模へ成長するブランドがある一方、販売規模を維持できなくなったブランドもある。
つまり中国の新ブランド競争は、「どれだけ新ブランドを作れるか」から「どのブランドを生き残らせられるか」へ移行している。
Huawei系も一枚岩ではない
もう一つ独特なのがHuawei系である。
HIMA(鴻蒙智行)の問界(AITO)は2万3,575台で前年同月比46%減、前月比20%減。1~7月累計でも4%減となった。
一方、奇瑞との智界(LUXEED)は1万4,210台で、前月比61%増、前年同月比205%増と急増した。ただし1~7月累計では24%減であり、7月の急回復だけで年間トレンドが反転したとはまだ言えない。
上汽との尚界(SAIC)は6,943台。
北汽との享界(STELATO)は1,578台で前年同月比19%減だったが、累計では90%増。
江淮との尊界(MAEXTRO)は399台と超高級ブランドらしく台数自体は小さい。
さらに、HIMAとは異なる乾崑との協業として広汽との啓境(AISTALAND)が771台を記録している。
Huaweiの自動車事業を「問界の成功」だけで見ることが難しくなっている。Huawei+複数OEM+複数ブランドという巨大なブランド群そのものが形成され、その内部でも販売の明暗が分かれ始めている。
42.4万台より重要なのは「28.6%」
今回集計した新興・新ブランドの7月販売は42万4,472台。前年同月比13.8%増だった。一方、中国市場全体は148万5,492台で前年同月比23.5%減。
この二つを組み合わせると、新興・新ブランドの市場占有率は28.6%となる。前年同月が19%程度だったからこの1年で10ポイント上昇していることになる。
中国ではもはや、BYD、吉利など既存中国ブランド+外資合弁ブランド+少数の新興EVという市場構造ではなくなった。
LEAP、Xiaomi、理想、小鵬、NIO。
方程豹、DENZA、ZEEKR。
啓源、DEEPAL、ARCFOX、AION、VOYAH、智己。
そして問界、智界、尚界、享界、尊界、啓境。
出自も資本関係もビジネスモデルも異なる大量の「新しいブランド」が、同じ市場で販売を競っている。しかも7月は、その合計が市場のほぼ3割に達した。
新ブランドを作る時代から、新ブランドを淘汰する時代へ
2026年7月のデータから見えるのは、新興・新ブランド市場そのものの拡大だけではない。
その内部で、すでに大きな格差が生まれている。
LEAPは6万台を突破した。Xiaomi、理想は3万台。方程豹、啓源、小鵬、ZEEKR、ARCFOX、AION、NIO、DEEPAL、AITOなどが2万~3万台前後に密集する。
その一方で、数千台、千台、さらにはほとんど販売がなくなったブランドも存在する。
中国自動車市場は長らく「新ブランドが次々に生まれる市場」だった。
しかし、販売市場全体が縮小する中でも新興・新ブランドのシェアが拡大し、その内部でこれだけの格差が生まれている以上、次に起きることはかなり明確である。
中国自動車市場は、新ブランド乱立の段階から、新ブランド同士が本格的に淘汰される段階へ入り始めている。
そして2026年7月、その競争の先頭には、かつての「蔚小理」ではなくLEAPがいる。中国新興市場の序列そのものが、再び大きく組み替わり始めている。
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