
FF、上半期売上135万ドル・純損失8128万ドルのなか、ロボット事業に2億ドルの評価額――既存NASDAQ上場会社へ移管
[メンバーシップ限定]米国の電気自動車メーカー、Faraday Future(FF)が、ロボット事業を既存のNASDAQ上場会社へ移管し、独立した上場事業として展開する。
10月14日、Faraday Future Intelligent Electric(NASDAQ:FFAI)は、FF EAI Robotics Ecosystem(NASDAQ:FFR)との間で、ロボット事業の譲渡に関する最終契約を締結したと発表した。契約締結日は10月12日で、2026年10月末までの取引完了を見込む。
ロボット事業の合意評価額は約2億ドル。FFRは新株を発行し、株式交換によってFFAIのロボット事業を取得する。
一方、FFAIの2026年上半期の連結売上高は約135万ドル、純損失は約8128万ドルに達している。営業活動による現金流出も約5653万ドルとなり、同社は米国証券取引委員会(SEC)への提出書類で、継続企業としての存続能力に重大な疑義があることを明らかにしている。
そのなかでFFは、ロボット事業を約2億ドルと評価し、既存上場会社を利用して独立した資金調達基盤を構築しようとしている。
今回の取引は、単なるロボット事業の独立上場というより、長年にわたって自動車事業の量産化に苦戦してきたFFが、Physical AIを新たな成長領域として資本市場に提示する動きとして捉える必要がある。
新規IPOではなく、既存NASDAQ上場会社への事業移管
今回、ロボット事業を取得するFFRは、旧AIxCrypto Holdings(AIXC)から社名と株式コードを変更したNASDAQ上場会社である。
したがって、FFのロボット事業が新規株式公開(IPO)を実施するわけではない。
すでに上場しているFFRが、FFAIのロボット事業を株式対価で取得する仕組みである。
両社が合意したロボット事業の評価額は約2億ドル。一方、取引前のFFRの株式評価額は、完全希薄化ベースで約6000万ドルとされた。
FFRはFFAIに対し、1株2.246ドルで新株を発行する。
この発行価格は、契約締結日の終値1.50ドルに対して約50%、10月13日の終値1.45ドルに対して約55%のプレミアムに相当する。
ただし、約2億ドルという数字は、両社が取引のために合意した評価額である。市場で第三者がロボット事業を2億ドルで買収したわけではなく、独立した株式市場で形成された時価総額でもない。
また、今回の取引は全額株式対価であり、FFAIがロボット事業の売却によって2億ドルの現金を受け取るわけではない。
この点は、FFの財務状況を考えるうえで重要である。

取引後もFFAIが65.7%を保有、ロボット事業の支配を維持
取引完了後のFFRの株主構成についても、具体的な数字が示された。
完全希薄化ベースで、FFAIが約65.7%、経営陣・従業員が約18.2%、PIPE投資家が約5.5%、その他のFFR株主が約10.7%を保有する見通しである。
FFAIに新たに発行される株式には18カ月の売却制限が設けられる。
PIPE投資家についても、6カ月間または転売登録が有効になるまでの売却制限が設定される。
FFによれば、取引完了直後に自由に取引できる一般流通株式は約1300万株、全体の約10.7%にとどまる見込みである。
つまり、ロボット事業は独立した上場会社へ移るものの、FFAIは引き続き過半数の株式を保有し、支配を維持する。
FFAIにとっては、ロボット事業を完全に売却するのではなく、上場子会社という形で保有しながら、独立した株式市場での評価と資金調達の機会を確保する構造である。
なお、これらの持株比率は暫定値であり、最終的な資本構成や資金調達条件によって変動する可能性がある。
上半期売上135万ドルに対し、純損失は8128万ドル
今回のロボット事業分離を評価するには、FFAI本体の財務状況を確認する必要がある。
FFAIがSECへ提出した2026年第2四半期のForm 10-Qによれば、2026年1~6月の連結売上高は約135万ドルだった。
これに対し、連結純損失は約8128万ドル、営業活動によるキャッシュフローは約5653万ドルのマイナスとなった。
6月末時点で自由に利用できる現金は約1120万ドルである。
売上高は前年同期の約37万ドルから増加し、純損失も前年同期から縮小した。
しかし、売上規模に比べて損失と現金流出が極めて大きいという基本構造は変わっていない。
上半期の売上高135万ドルは、営業活動による現金流出5653万ドルの約42分の1にすぎない。
もちろん、売上高と営業キャッシュフローは異なる会計指標であり、単純な比率だけで事業の持続可能性を判断することはできない。
それでも、現時点の事業収入だけでは、企業活動に必要な資金を賄えていないことは明らかである。
さらにFFAIは、SEC提出書類において、継続企業としての存続能力に重大な疑義があると記載している。
これは外部メディアによる評価ではなく、FF自身が開示した財務上のリスクである。

長年の自動車事業は、依然として量産規模に達していない
FFは、高級電気自動車「FF 91」を中心に事業を立ち上げ、その後は量販市場を意識したFXブランドなどへの展開も進めてきた。
しかし、2026年上半期の連結売上高が約135万ドルという状況から見ても、自動車の量産・販売事業が安定した収益基盤を構築したとは言い難い。
FFはFX Super Oneなどについて事前予約や市場投入計画を発表しているが、予約件数、量産台数、実際の納車台数、売上計上額は区別する必要がある。
とりわけ拘束力のない事前予約は、将来の販売を保証するものではない。
自動車メーカーとして事業が成立しているかどうかを判断するには、継続的な量産、顧客への納車、売上の計上、製造原価の改善、営業キャッシュフローの安定化が必要になる。
FFは長年にわたり、こうした段階への移行を目指してきた。
今回、ロボット事業の独立上場と同時に、自動車事業の戦略をRobotaxi運営やスマートコックピット技術の外部展開へ広げる方針を示したことは、従来の完成車メーカーとしての事業構造を見直そうとしている動きとも読める。