
中国の工場AIは、ソフトウェアを捨てない――蘇映視、自然言語による検査工程構築とAIの不確実性制御を提唱
[日刊]中国の3D・AI画像検査企業、蘇映視(INSNEX)の何銀軍董事長は2026年10月14日、蔚来(NIO)の李斌董事長兼CEOとの対談で、製造業におけるAI活用の方向性について興味深い見解を示した。
何氏が重視したのは、従来の産業用ソフトウェアをAIに置き換えることではない。既存のソフトウェアを基盤として維持し、その上にAIを組み合わせることで、自然言語による検査工程の構築や、非標準設備の迅速な開発を可能にするという考え方である。
生成AIによってソフトウェア開発や業務の自動化が進むなか、製造現場ではAIに自由な判断を任せるだけでは十分ではない。工程の再現性、検査基準の一貫性、担当者が変わっても運用できる仕組みが求められる。
何氏は、こうした課題に対し、従来のソフトウェアが持つ構造化された機能と、AIによる自然言語での操作・工程構築を組み合わせる方向を示した。
対談では、中国製造業の品質検査がミリメートル単位からマイクロメートル、さらにはナノメートル領域へと高度化していることも語られた。
2018年創業、製造業の高度化とともに成長
今回の対談は、李斌氏が経営者やNIOユーザーを招く動画企画「ET9会客庁」の第66回として公開された。
ゲストの何銀軍氏は、NIOのeS9ユーザーでもあり、2018年に蘇映視を創業した経営者である。
何氏はそれ以前、外資系企業で製造業向けの画像検査に携わり、中国の製造現場が手作業中心の段階から自動化、デジタル化へ進む過程を経験してきたという。
そのなかで感じた課題が、画像検査システムの開発と運用の難しさだった。
製造業向けの画像検査では、カメラで対象物を適切に撮影するための光学設計や画像処理に加え、検査対象ごとにプログラムを構築する必要がある。
何氏は、こうした作業に苦労する一般の企業やエンジニアを、複雑な画像処理やコード作成から解放し、より創造的な仕事に集中できるようにしたかったと説明した。
蘇映視が取り組んできたのは、画像検査のためのハードウェアとソフトウェアを、現場で利用しやすい製品として提供することである。
中国製造業の検査要求は40μmから1μm領域へ
対談では、中国の製造業における品質検査の高度化について、具体的な数字が示された。
何氏によれば、2010年以前の中国製造業では、製品の欠陥や寸法公差について、0.5~1mm程度の水準が一つの目安となっていた。
当時は手作業や半自動設備による製造が多く、製品が機能し、出荷できることが優先される段階だったという。
転機の一つとなったのが、2010年以降のAppleによる中国での生産拡大である。
電子機器の部品密度が高まり、個々の部品にも高い精度が求められるようになったことで、中国のサプライヤーや製造工場にも定量的な検査工程が広がったと何氏は説明した。
蘇映視が創業した2018年頃、顧客から求められる検査精度は40μm、すなわち0.04mm程度だったという。
しかし、直近1~2年では、PCB、半導体、電池材料などの高度化を背景に、検査技術に対する要求は1μm、さらにはナノメートル領域へ向かっていると述べた。
これは中国の全製造業が一律にその精度を実現したという意味ではない。製品や検査対象によって要求水準は異なり、何氏自身も、蘇映視がこうした高精度化への技術開発を進めている段階だと説明している。
それでも、製造業の競争が製品を大量に作る能力だけでなく、微細な欠陥を発見し、製造工程を定量的に管理する能力へと広がっていることが分かる。