
理想、700台のロボットでも「智能工場ではない」――感知・判断・実行・フィードバックで製造をAI化
[日刊]中国の自動車工場でロボットが働く光景は、もはや珍しくない。溶接、塗装、搬送、組み立ての自動化は各社が進めており、ロボットの台数や自動化率だけでは「スマート工場」の違いを説明しにくくなっている。
では、工場が本当に「賢くなる」とは何なのか。
理想汽車(Li Auto)が2026年9月24日に公開した、中国中央電視台(CCTV)の取材映像を通じて興味深い答えを示した。
常州スマート製造拠点には20本以上の自動化ラインがあり、700台以上のロボットが稼働する。人の姿がほとんど見えないほど自動化されている。
ところが、理想の工場担当者はこう説明する。
自動化率が高いことは、智能化を意味しない。それだけでは「Embodied AI」の工場でもない。
理想が「Embodied AI工場」と呼ぶ条件は、ロボットの数ではない。
感知し、判断し、実行し、その結果をフィードバックする。
この閉ループを工場そのものが持つことである。
そして興味深いことに、この構造は理想がAI Vehicle(AIV)に持ち込もうとしているAIの構造とほぼ同じである。
700台のロボットがあっても、それだけでは賢くない
常州工場の溶接工程には20本以上の自動化ラインと700台以上のロボットが配置されている。
たとえば一つの工程では、上下に配置された14台のロボットが協調し、1分間に68カ所のスポット溶接を行う。
高度な自動化工場であることは間違いない。しかし理想は、ここで「自動化」と「智能化」を明確に分ける。
あらかじめ決められた動作を、ロボットが高速かつ正確に繰り返すだけなら、それは自動化である。
理想がEmbodied AIと呼ぶためには、工場自身が周囲の状態を認識し、その情報から判断し、設備を動かし、その結果を再び取り込む必要がある。
感知→判断→実行→フィードバック。
人間やロボットだけではなく、工場全体を一つの知能システムとして扱おうとしている。
工場に5万以上の「感覚器官」
最初に必要になるのが「感知」である。
人間が目や耳、触覚によって周囲を認識するように、理想は工場内のセンサー、カメラ、製造設備を工場の感覚器官として扱う。
常州工場には5万以上のデータ収集点があり、2000台を超える設備から情報を取得する。
工場からアップロードされるデータ量は1日約1.3TBに達するという。
だが、大量のデータを集めるだけでは工場は賢くならない。
問題は、そのデータから何を理解し、次に何をするかである。
そこで登場するのが、理想が自社開発してきたスマート製造OS「Li-MOS」と、産業AI基盤「連山」である。
Li-MOSが工場全体を動かす
Li-MOSは、理想のスマート工場を動かすデジタル基盤である。
今回の取材では、研究開発から受注、部材供給、生産スケジュール、設備、物流までを横断して工場運営をつなぐ「頭脳」として説明された。
工場内を走る搬送車についても、どの部品を運ぶのか、どの生産ラインへ届けるのか、いつ届けるのか、といった工場内物流をLi-MOSが背後から動かす。
ここで重要なのは、工場内にある個々の設備を単独で自動化するのではなく、受注から生産、部品、物流、設備までを一つのシステムとして動かすことである。
ロボットが工場の「手足」なら、Li-MOSは工場運営を統合する「頭脳」に近い。
連山は「品質を理解するAI」
もう一つの中核が「連山」である。
理想は連山を、自社開発したデータサイエンス協業・産業智能プラットフォームと説明する。
製造ラインからデータを集めるだけではない。
データ収集から計算・分析、AIモデルの学習、配備、推論、トレーサビリティまでを一つのプラットフォーム上で処理する。
すでに外観検査、設備の予知保全、工程パラメータの推奨など、汎用的に利用できる能力を産業AIアプリとしてパッケージ化している。
さらに溶接や締結などを含む四大製造工程の26の主要工程へ連山を展開している。
役割を大まかに分ければ、Li-MOSは工場を動かし、連山は工場で起きていることを理解し、異常を見つけ、予測する、という関係になる。