
ファーウェイ・地平線・Momenta、自動車メーカーとの役割分担を明示――部品供給から共同開発・収益分配まで
[メンバーシップ限定]2026年10月21日、北京で開催された2026年世界スマートコネクテッドカー大会(WICV2026)で、中国の自動運転技術を代表する3社のトップが、自動車メーカーとの関係について、それぞれの立場を明らかにした。
登壇したのは、華為(Huawei=ファーウェイ)高級副総裁兼引望CEOの靳玉志氏、地平線(Horizon Robotics)創業者兼CEOの余凱氏、Momenta創業者兼CEOの曹旭東氏である。
3人は、蔚来(NIO)、小鵬(XPENG)、BYDの経営幹部とともに、自動運転の実用化をテーマとする座談会に参加した。司会を務めた清華大学の趙福全氏は、技術の高度化と自動車メーカーによる自主開発が進むなかで、外部の技術企業はどのような役割を担い、事業を継続していくのかと問いかけた。
これに対し、3社は異なる事業モデルを示した。
引望が運営するブランド・ファーウェイ乾崑は、完成車メーカーと競争しない知能化部品の供給者としての立場を強調した。
地平線は、半導体と基盤ソフトウェアに集中するTier 2企業であり、車種プロジェクトの95%を協力企業経由で納入していると説明した。
一方、Momentaは、従来の技術供給から、自動車メーカーとの共同開発、さらに将来のサービス収益を共有する関係へ発展するとの見通しを示した。
同じ自動運転AI分野の有力企業でありながら、自動車メーカーとの境界線の引き方は同じではない。
ファーウェイ引望「われわれは電子部品の一つ」
ファーウェイ引望の靳玉志氏は、同社の役割を説明する際、自らを「電子部品の一つ」に例えた。
引望は設立当初から、スマートコネクテッドカーの時代に必要となる新しい知能化部品を供給する企業として位置付けているという。
靳氏は、自動車メーカーが優れた車を開発し、販売できるよう支援することが引望の役割であり、自ら完成車を製造したり、自動車メーカーと競争したりする考えはないと明言した。
この発言は、Huaweiが自動車産業で担う役割を考えるうえで重要である。
Huawei乾崑の運転支援技術は、中国の複数の自動車ブランドで採用されている。さらにHuaweiは、車室内システムや車両制御、通信など、運転支援以外にも幅広い知能化技術を展開している。
そのため、Huaweiの技術が車両の商品価値を大きく左右する場面も増えている。
しかし靳氏は、技術の提供範囲が広がっても、完成車メーカーそのものになるわけではないという立場を示した。
自動車の企画、製造、販売を担う企業と、それを支える知能化技術の供給企業を区別する考え方である。
ただし、引望が単純な部品メーカーにとどまるという意味ではない。
運転支援を中心とする知能化技術が車両の競争力を左右するようになれば、その技術を提供する企業が完成車の商品設計や開発工程に深く関与することも考えられる。
靳氏の発言は、そうした関与が拡大するなかでも、完成車メーカーとの競争関係を避けるという事業上の立場を改めて示したものといえる。
引望、車両メーカーとの協力から産業エコシステムへ
靳氏は、今後の協力関係について三つの方向性を示した。
第一は、より高品質で安全性の高い知能化技術を、より多くのユーザーに提供することである。
第二は、自動車メーカーとの協力を深めながら、連携先をさらに広げることである。
第三は、中国市場で実現した大規模な技術導入を基盤に、海外でも共同で価値を生み出すことである。
ここで注目されるのは、引望が協力対象を完成車メーカーだけに限定していない点である。
自動運転が高度化すれば、車両が自ら駐車場や充電施設へ移動するなど、車両の外部にあるサービスとの連携が重要になる。
靳氏は座談会で、自動運転によって駐車、充電、洗車などの利用方法も変化する可能性に言及した。
こうしたサービスを実現するには、完成車メーカーと運転支援技術企業だけでなく、充電・電池交換事業者、施設運営者、通信・クラウド事業者などとの協力が必要になる。
引望が目指すのは、完成車メーカーに知能化技術を提供する関係を維持しながら、その技術を利用するサービスや産業との連携を広げる方向である。
つまり、完成車メーカーと競争しないという境界線を維持する一方、技術を提供する対象と事業の範囲は広げていく。
地平線「われわれはTier 1ではなくTier 2」
地平線の余凱氏は、ファーウェイ引望よりも技術供給の範囲を明確に限定した。
同氏は、地平線が自動車を製造することも、自動運転サービスを運営することもないと説明した。
さらに、車両向けのソフトウェアとハードウェアを一括して完成品として納入する事業にも重点を置かないとした。
地平線が集中するのは、計算を支える半導体と、その基盤となるソフトウェアである。
余氏は、自動車産業には完成車メーカー、部品メーカー、技術企業など、それぞれ異なる強みを持つ企業が存在すると説明した。
地平線がすべての領域を自社で手掛けるよりも、各社が得意分野に集中した方が、産業全体として技術開発を速められるという考え方である。
そして、今回の座談会で具体的な数字を示した。
地平線が関与する車種プロジェクトの95%は、協力企業を通じて納入されているという。
余氏は、この供給構造を根拠に、地平線は典型的なTier 2企業であると説明した。
95%を協力企業経由で納入する意味
一般に自動車産業では、完成車メーカーに直接部品やシステムを納入する企業をTier 1、そのTier 1などに半導体や部品を供給する企業をTier 2と呼ぶ。
地平線は、自動運転向けの半導体と基盤ソフトウェアを開発する一方、それらを利用した車載システムの製品化や完成車メーカーへの納入では、協力企業を活用している。
今回示された95%という数字は、地平線の技術が完成車メーカーに広く採用されていても、納入の大部分を自社だけで完結させていないことを示している。
ただし、これは地平線の売上高の95%がTier 2取引によるものという意味ではない。余氏が説明したのは、車種プロジェクトの納入経路についてである。
この違いは重要である。
自動運転AI企業が技術的に優れていても、すべての車両制御システムを自社で開発し、各メーカーの車種に合わせて検証し、量産品質を保証するには、別の能力が必要になる。
地平線は、半導体と基盤ソフトウェアの開発に集中し、それ以外の領域では既存の自動車部品供給網を活用する道を選んでいる。
余氏は、自動車産業の長いサプライチェーンにおいて、一社があらゆる領域で高い競争力を持つことは容易ではないと説明した。
技術企業が完成車メーカーや既存の部品メーカーを置き換えるのではなく、それぞれの強みを組み合わせることが重要だという。