メインコンテンツへスキップ
見出し画像

中国工程院・鐘志華氏、運転席のない大型トラックを実証――有人車との協調で物流自動化を目指す

    [メンバーシップ限定]2026年10月21日、北京で開催された2026年世界スマートコネクテッドカー大会(WICV2026)で、中国工程院主席団メンバーの鐘志華氏が、運転席を持たない大型トラックの実証研究を紹介した。

    鐘氏が研究チームと進めているのは、有人車と無人車を組み合わせる「誘導型自動運転」である。

    講演では、運転席を設けない新しい車両プラットフォームを紹介。大型トラックによる物流輸送を対象に、有人車と無人車が協調して走行する方式を提案した。

    狙いは、すべての車両を一度に完全無人化することではない。

    運転者が乗る車両を残しながら、無人車両を組み合わせることで、輸送能力を維持・拡大しつつ、運転者の負担と運行コストを削減することである。

    鐘氏は、この方式について、既存の政策・法規制を大きく変更せずに普及を進められる可能性を重視していると説明した。

    ただし、実際の公道運行に必要な許認可が取得済みであることや、一般道路での商用運行が認められていることを示したわけではない。

    完全自動運転の普及を待たない選択肢

    鐘氏は講演で、自動運転技術の進歩を評価する一方、実際の事業への導入にはなお課題があると指摘した。

    技術的に自動運転が可能になっても、安全性、制度、運営コストなどの条件が整わなければ、大規模な普及にはつながらない。

    そこで同氏が注目しているのが、誘導型自動運転である。

    有人車を中心として、無人車を協調走行させる方式であれば、すべての車両に完全自律走行能力を求める場合とは異なる実用化の道筋を検討できる。

    鐘氏は、この方式によって安全性と経済性を両立させ、比較的早期に事業化できる可能性があると説明した。

    今回紹介した研究は、特に大型トラックによる物流輸送を対象としている。

    運転席そのものをなくした車両プラットフォーム

    講演で紹介された実証車両の特徴は、運転席が存在しないことである。

    従来の大型トラックでは、車両前部に運転席を備え、運転者が車両を操作することを前提としている。

    しかし、無人運転専用の車両では、必ずしも同じ構造を採用する必要はない。

    鐘氏は、研究チームが開発した新しいプラットフォームについて、運転席を持たない構成であると説明した。

    同氏によれば、チーム内では、この車両を重量物輸送向けのAGVと呼ぶこともあるという。

    AGVは、自動搬送車を意味する。

    一般的には工場や物流施設などで利用されるが、今回紹介された車両は大型トラック物流を対象としており、従来の工場内搬送車よりも広い運行環境を想定した研究である。

    重要なのは、既存の大型トラックから運転者を取り除くだけでなく、無人運転を前提に車両構造そのものを見直していることである。

    ただし、車両の積載能力、駆動方式、電池容量、センサー構成などの詳細な仕様は、講演の発言からは確認できない。

    海沿いの広い場所で実証、鉱山輸送も視野

    鐘氏は、実証の様子についても紹介した。

    研究チームは、海沿いの開けた場所で車両を走行させているという。

    その環境には粉じんもあり、鐘氏は大型トラック、特に鉱山用トラックが利用される環境との共通点を指摘した。

    鉱山などでは、一般道路とは異なり、車両の走行区域や作業内容を一定の範囲で管理できる。

    一方、粉じん、路面状態、車両の大きさなど、実際の運行には特有の難しさもある。

    鐘氏は、今回の実証を踏まえ、こうした用途への大規模な展開に自信を示した。

    ただし、今回の講演で確認できるのは、研究チームが実証を進めていることと、将来の大規模展開を目指していることである。

    鉱山での商用運行開始や、大規模な車両導入が完了したという発表ではない。

    2台の車両を1人の運転者で運用する構想

    鐘氏が説明した誘導型自動運転の具体的な構想は、有人車と無人車を組み合わせた協調運行である。

    同氏は、中国には2,000万人を超えるトラック運転者がいると説明し、長距離輸送における運転者の負担に言及した。

    講演では、長距離輸送で1台に2人の運転者を配置する場合があることを例に挙げた。

    これに対し、将来的には、運転者が乗る車両と無人車両を協調させることで、1人の運転者が2台の輸送に関わる形を目指すという。

    この構想が実現すれば、輸送能力を確保しながら、必要な運転者数を減らせる可能性がある。

    運転者にとっても、長距離輸送の負担を軽減できる余地がある。

    ただし、講演では、無人車が有人車の走行軌跡を単純に追従する方式なのか、独立した周辺認識・経路判断能力を持ちながら協調する方式なのかについて、詳細な技術構成は示されていない。

    また、2台の車両を1人で運用する方式について、一般道路での商用運行が認可されていることも確認できない。

    現段階では、研究チームが目指す運行モデルとして捉える必要がある。

    この記事はnoteマネーにピックアップされました

    noteマネーのバナー
     
     
    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

    あなたへのおすすめ