
中国乗用車市場、2027年は2%増の小幅回復へ――崔東樹氏が初の具体予測、2026年は1,850万台まで急減
[無料]中国の乗用車市場は、2026年の大幅な販売減少を経て、2027年に小幅な回復へ転じる可能性がある。
中国乗用車市場情報聯席会(乗聯会)の崔東樹秘書長は2026年10月26日、2027年の中国国内乗用車小売販売について、前年比0~5%増、中心値2%増との見通しを示した。
今回確認できた範囲では、崔氏が2027年の国内小売市場について具体的な成長率を示した初めての予測とみられる。
一方、2026年の国内小売販売は約1,850万台にとどまると予測した。2025年の2,374万台から約22%減少し、新型コロナ禍の2020年の1,929万台も下回る水準である。
崔氏は、2026年の落ち込みを中国自動車市場の長期的な成長力が失われた結果ではなく、政策変更、原油価格の上昇、AI投資拡大に伴う部材価格の高騰、消費意欲の低下などが重なった一時的な異常状態と分析している。
2027年には、これらの影響が緩和され、新型車の投入や在庫調整の進展によって市場が持ち直すとみる。
ただし、前年比2%増は力強い回復を意味しない。2027年の販売台数は約1,887万台となり、引き続き2025年の水準を大きく下回る。
今回の予測は、乗聯会のメーカー予測チームによる検討に言及した崔氏個人の分析であり、乗聯会が正式に発表した2027年の市場予測と同一視することはできない。
2026年は約1,850万台、2025年から22%減少へ
崔氏によると、乗聯会のメーカー予測チームは2025年末の段階で、2026年の中国乗用車市場について比較的中立的な見通しを持っていた。
しかし、2026年に入ると、複数の予想外の要因が重なり、国内小売市場は当初の想定を大きく下回った。
今回示された2026年の国内小売販売予測は約1,850万台である。
過去の販売水準と比較すると、その落ち込みの大きさが分かる。
2015年:1,966万台
2020年:1,929万台
2025年:2,374万台
2026年予測:約1,850万台
2027年予測:約1,887万台(前年比2%増の場合)
2026年の予測販売台数は、2025年から524万台減少する計算となる。減少率は約22.1%であり、2020年の販売台数も79万台下回る。
崔氏は、中国の乗用車小売市場が過去10年間、おおむね一定の範囲内で増減を繰り返してきたと指摘する。
そのうえで、2026年の販売水準は従来の変動範囲を下回っており、長期的な市場構造の変化だけでは説明できない異常な落ち込みだと位置付けた。
なお、今回の文章では2026年の予測台数について、1,850万台と1,860万台の二つの数字が使われている。
本稿では、冒頭と結論に繰り返し記載された1,850万台を代表値として扱う。
買い替え補助と購入税優遇の変更、2026年初の需要を圧迫
崔氏が2026年の販売減少要因として最初に挙げたのは、自動車購入支援策の変更である。
中国では2024年以降、古い自動車を廃車にして新車へ買い替える消費者などを対象に、補助金による需要喚起策が実施されてきた。
2024年には大きな効果を発揮し、2025年も販売を支える重要な要因となった。
しかし、2026年には制度の重点が変化し、購入対象車の条件が厳しくなる一方、補助水準も引き下げられた。
特に価格の低いBEVでは、補助金の適用条件が販売に影響したと崔氏は分析している。
さらに、2025年末には新エネルギー車(NEV)購入税優遇制度の変更を控えた駆け込み需要が発生した。
本来2026年に購入する予定だった消費者の一部が、2025年中に購入を前倒ししたことで、2026年初の需要が弱くなったという見方である。
崔氏は、2025年末の需要先食いと2026年の政策変更が重なったことを、販売低迷の重要な要因と位置付けている。
原油価格上昇、ガソリン車の購入意欲を抑制
第二の要因は、国際原油価格の上昇である。
崔氏は、2026年3月の米国とイランの軍事衝突によって国際原油価格が高騰し、ガソリン車の使用コストが急上昇したと説明している。
ガソリン車市場は、NEVの普及によって以前から販売面で圧力を受けていた。
そこに燃料価格の上昇が重なり、購入を検討していた消費者の判断に影響したという分析である。
ただし、原油価格の上昇が中国国内のガソリン車販売をどの程度押し下げたかについて、今回の文章では定量的な分析は示されていない。
崔氏は、この影響を長期的な市場構造の変化ではなく、国際情勢に左右される一時的な外部要因と位置付けている。
2027年には原油価格が落ち着き、ガソリン車の購入を先送りしていた需要の一部が戻ると予想する。
AI投資拡大が自動車の製造コストを押し上げ
第三の要因として崔氏が重視するのが、AI関連投資の急拡大による部材価格の上昇である。
AIデータセンターなどへの投資が増えることで、メモリーをはじめとする半導体の需要が拡大した。
さらに、AI関連設備の電力需要が増加し、銅などの素材価格にも上昇圧力がかかったと指摘する。
蓄電設備への投資拡大も、炭酸リチウム価格を押し上げる要因となったという。
崔氏は、こうした変化が自動車の製造コスト全体に波及したと分析している。
特にNEVでは、半導体、電池、金属材料など、幅広い部品の調達費用が上昇したことで、メーカーの利益確保が難しくなったとする。
中国の自動車市場では価格競争が続いており、メーカーが原価上昇分を販売価格へ転嫁することは容易ではない。
その結果、コスト上昇が新型車の投入計画や販売促進策にも影響したという見方である。
ただし、AI投資が個々の部材価格をどの程度押し上げたか、また自動車販売台数の減少にどれだけ寄与したかについて、今回の分析では個別の数値は示されていない。
AI投資の拡大を自動車市場低迷の要因とする点は、崔氏の分析上の特徴である。
買い替え補助の効果が低下、消費意欲も弱まる
第四の要因は、購入補助政策の効果が次第に弱まっていることである。
崔氏は、2024年の買い替え補助政策が最も大きな効果を発揮し、2025年にも一定の効果が続いたと分析している。
しかし、購入意欲の高い消費者が先に買い替えを済ませたことで、2026年には新たな需要を生み出す効果が弱くなったという。
加えて、家計の消費意欲そのものが低下していることも、国内需要の弱さを増幅したと指摘する。
この問題は、購入補助金の金額を増やすだけでは解決できない可能性がある。
すでに購入を前倒しした消費者は、短期間で再び新車を購入するとは限らない。
また、将来の収入や雇用に不安があれば、補助金があっても高額な自動車の購入を見送ることがある。
崔氏は2026年の販売減少について、政策による需要の前倒しと消費意欲の低下が重なった結果だと説明している。
2027年は0~5%増、中心値2%の小幅回復を予測
こうした2026年の低迷を踏まえ、崔氏は2027年の国内乗用車小売販売について、前年比0~5%増、中心値2%増と予測した。
2026年の販売台数を1,850万台とすると、2027年の販売規模は次のようになる。
前年比0%:1,850万台
前年比2%:1,887万台
前年比5%:約1,943万台
中心値の2%増でも、2025年の2,374万台を487万台下回る。
仮に予測レンジの上限となる5%増を達成しても、2025年の販売規模には届かない。
したがって、今回の見通しは2026年の急減からの反発を予想するものであり、過去の高水準への回復を意味するものではない。
崔氏自身も、2027年の市場について、力強い回復ではなく、底打ち後の緩やかな持ち直しになると説明している。
2027年の回復を支える六つの要因
崔氏は2027年の市場回復について、六つの要因を挙げている。
第一は、NEV購入税優遇制度の終了を控えた需要である。
中国ではNEVの購入税優遇が段階的に縮小されており、2027年は優遇期間の終盤に当たる。
崔氏は、優遇措置の終了を前に購入を前倒しする消費者が増え、2027年の販売を押し上げる可能性があるとみる。
第二は、春節の時期である。
2027年の春節は2026年より早く、2月上旬に迎える。
崔氏は、春節前の自動車購入需要が市場を支えると予想している。
第三は、国際原油価格の落ち着きである。
原油価格が下落すれば、ガソリン車の使用コストが低下し、購入を控えていた消費者の需要が戻る可能性がある。
第四は、炭酸リチウム価格の下落である。
崔氏によると、炭酸リチウム価格は2026年の高値から大きく下落し、10万元前後まで低下した。
電池材料の調達費用が下がれば、NEVメーカーの原価負担が軽減され、販売価格や商品競争力の改善につながる可能性がある。
第五は、在庫調整の一巡である。
2026年には販売店やメーカーが在庫削減を強く進めたため、メーカーから販売店への出荷が国内小売販売以上に抑制されたと崔氏はみる。
2027年に在庫削減の動きが弱まれば、メーカー出荷台数の伸び率は小売販売の伸び率を上回る可能性がある。
第六は、新型車投入の正常化である。
崔氏は、これを2027年の市場回復にとって特に重要な要因と位置付けている。
新型車投入の正常化が、回復の鍵に
崔氏によると、2026年は部材価格の上昇や価格競争を巡る不透明感によって、多くの新型車の発売計画が影響を受けた。
消費者側でも、新型車の発売を待って購入を先送りする動きが広がったという。
このため、2027年に部材価格が落ち着き、メーカーが競争力のある新型車を投入できれば、2026年に抑えられた需要が実際の購入につながる可能性がある。
崔氏は、2026年に車両の大型化が急速に進んだことも指摘している。
原文では、全長5m以上の車種の比率が2024年の44%から2026年の79%へ上昇したとしている。
ただし、この比率については、対象となる市場や車種の範囲、販売台数ベースか車種数ベースかといった定義が示されていない。
中国乗用車市場全体の販売構成を表す数値として、そのまま使用することはできない。
一方、崔氏が強調しているのは、2026年に新型車の投入構造が変化し、幅広い価格帯での商品供給が十分ではなかったという点である。
2027年には、コスト低下を背景に、各価格帯で競争力のある新型車を投入できるかどうかが、市場回復の重要な条件になるとみる。
小売販売2%増でも、メーカー出荷はより大きく回復する可能性
今回の予測で注目したいのは、崔氏が国内小売販売とメーカー出荷を明確に区別していることである。
2026年には、販売店やメーカーが在庫削減を強く進めたと分析している。
販売店が在庫を減らす局面では、消費者への販売台数よりも、メーカーから販売店への出荷台数が少なくなる場合がある。
逆に、在庫調整が一巡すると、販売店は必要な在庫を確保するため、メーカーからの仕入れを増やす可能性がある。
そのため、2027年の国内小売販売が2%程度の増加にとどまっても、メーカーの国内出荷台数はそれを上回る伸び率になる可能性がある。
ただし、これは在庫調整の進展を前提とする予測である。
小売需要が想定ほど回復しなければ、メーカー出荷の増加が再び在庫の積み上がりにつながる可能性もある。
2027年の市場を評価する際には、小売販売台数だけでなく、メーカー卸売台数、販売店在庫、在庫回転期間を合わせて確認する必要がある。
2026年の急減は一時的か、それとも市場構造の変化か
今回の崔氏の分析で、最も重要なのは2026年の市場低迷をどう位置付けるかである。
崔氏は、2026年の大幅な販売減少について、長期的な市場規模の縮小ではなく、複数の短期的な要因が重なった結果と考えている。
購入支援策の変更、2025年末の需要先食い、原油価格の上昇、AI投資に伴う部材価格の高騰などが解消されれば、国内市場は本来の水準へ戻る余地があるという見方である。
ただし、この説明には検証すべき点がある。
例えば、補助金による購入の前倒しは、単に翌年の需要を減らすだけでなく、将来の買い替え周期にも影響する。
また、消費者の購入意欲の低下が所得や雇用、将来不安などに関係している場合、原油価格や電池材料価格が下がっただけでは需要が十分に回復しない可能性がある。
さらに、中国ではNEVの普及が進み、ガソリン車からBEV・REEV・PHEVへの需要移行も続いている。
市場全体の販売台数が回復するかどうかと、各メーカーや各動力方式の販売が回復するかどうかは、別の問題である。
崔氏も2027年について、市場全体は小幅に持ち直す一方、ブランド間の競争や市場の分化は一段と進むと予測している。
2027年の2%増は、回復の始まりにすぎない
崔東樹氏が今回示した2027年の国内乗用車小売販売予測は、前年比0~5%増、中心値2%増である。
2026年の販売台数を約1,850万台とすれば、2027年は約1,887万台となる。
これは2026年の急激な落ち込みからの小幅な反発であり、2025年の市場規模への回復ではない。
崔氏は、2026年の販売低迷を複数の短期的な要因が重なった異常な状態と位置付け、2027年には政策面、原価面、商品供給面の条件が改善すると予測する。
しかし、その見通しが実現するには、部材価格の下落だけでなく、消費者が購入したいと思える新型車の投入、販売店の在庫調整、家計の購入意欲の回復が必要になる。
また、メーカー出荷の伸び率が小売販売を上回った場合でも、それが最終需要の回復によるものなのか、在庫の積み増しによるものなのかを区別しなければならない。
2027年の中国自動車市場で問われるのは、販売台数が前年比プラスに戻るかどうかだけではない。2026年に失われた需要がどこまで戻り、補助金や在庫調整に依存せず、持続的な販売回復へつながるかである。
今回の2%増予測は、その検証の出発点となる。
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