メインコンテンツへスキップ
見出し画像

上海、EV・AI・蓄電池を脱炭素政策で一体化――2030年へ炭素データ5,000件、車両電動化40%超

    [メンバーシップ限定]中国・上海市が、EV、AI、蓄電池、電力網、資源リサイクルを一体的に発展させる新たな政策を打ち出した。

    上海市人民政府弁公庁は2026年10月13日、「上海市省エネ・脱炭素・循環経済発展第15次五カ年計画(十五五)」を公表した。対象期間は2026~2030年である。

    計画では、2030年までに乗用車の電動化率を40%超、新型蓄電設備の導入容量を300万kW、非化石エネルギー消費比率を21.5%とする目標を掲げた。

    さらに、自動車、鉄鋼、化学、電子産業などの製品カーボンフットプリントを算定するため、上海固有の背景データセットを5,000件整備する方針を示した。

    注目されるのは、これらが個別の環境対策としてではなく、相互に結び付いた産業政策として位置付けられていることである。

    EVは交通部門の脱炭素手段であると同時に、電力網と連携するエネルギー資源となる。蓄電池は電力システムを支え、AIはエネルギー消費の最適化に利用される。さらに、製造から廃棄・再利用までの炭素排出量をデータとして管理する。

    上海市は脱炭素政策を通じて、次世代の産業基盤そのものを構築しようとしている。

    上海市が第15次五カ年計画を公表、2030年の脱炭素目標を具体化

    今回の計画は、上海市政府の承認を受け、上海市人民政府弁公庁が9月28日付で発出したものである。10月13日に正式公開された。

    計画の基本目標は、2030年までにCO₂排出量のピークアウトを実現し、2060年までのカーボンニュートラルに向けた基盤を整備することである。主要な数値目標は次の通りである。

    • GDP当たりCO₂排出量:2026~2030年の5年間で18%削減

    • 非化石エネルギー消費比率:2025年の17.5%から2030年に21.5%へ

    • 生活ごみの回収・資源利用率:45.3%から50%へ

    • 主要資源生産性:5年間で16%向上

    GDP当たりCO₂排出量、非化石エネルギー比率、生活ごみ回収・資源利用率の3項目は、達成を求める拘束性指標として設定された。

    一方、主要資源生産性の向上は期待性指標である。

    注意したいのは、CO₂排出量18%削減という数字が、排出総量ではなくGDP当たり排出量の削減目標であることだ。

    経済成長に伴ってエネルギー需要が拡大すれば、排出原単位が改善しても排出総量が増える可能性はある。

    上海市は排出総量と排出原単位を同時に管理する制度への転換を掲げているが、今回の主要指標には2030年のCO₂排出総量の具体的な上限値は示されていない。

    EV電動化率40%超、公共車両は全面電動化へ

    交通分野では、2030年までに乗用車の電動化率を40%超とする目標を掲げた。

    同時に、都市の公共分野で使用する車両の全面電動化を推進する。

    物流配送車、環境衛生車両などの新エネルギー車への転換を加速し、新エネルギー大型トラックの大規模導入も進める。

    既存のガソリン乗用車については、新エネルギー車(NEV)への買い替えを奨励する。

    さらに、2030年までにガソリン乗用車の保有台数をピーク圏に移行させる方針を示した。

    これは、単に新車販売に占めるNEV比率を引き上げる政策ではない。

    既存のガソリン車を含む車両ストック全体を、段階的に電動化していく政策である。

    ただし、計画に示された「乗用車電動化率40%超」は、新車販売に占めるEV比率とは区別する必要がある。

    また、原文の「小客車電動化率」が具体的にどの範囲の車両を対象とし、どのように算定されるのかについては、今後の実施細則で確認する必要がある。

    EVを電力網につなぐ、車網連携とVPPを拡大

    今回の計画で重要なのは、EVが交通政策だけでなく、エネルギー政策にも登場することである。

    上海市は2030年までに新型蓄電設備の導入容量を300万kWとする目標を設定した。

    同時に、仮想発電所(VPP)の大規模発展を推進する。

    VPPとは、分散型発電設備、蓄電池、電力消費設備などをデジタル技術で統合し、あたかも一つの発電所のように制御する仕組みである。

    上海市はVPPに接続する対象として、分散型電源、調整可能な電力負荷、蓄電設備とともに、クルマと電力網の連携を明記した。

    例えば、電力需要が少ない時間帯にEVを充電したり、電力需給の状況に応じて充電電力を調整したりすることが考えられる。

    双方向給電に対応する車両であれば、車載電池から電力網へ電力を供給するV2Gも技術的な選択肢となる。

    ただし、今回の計画はVPPへのクルマと電力網の連携資源の接続拡大を掲げたものであり、V2Gの具体的な導入台数や供給電力量を定めたものではない。

    それでも、EVを単なる電力消費機器ではなく、電力システムを調整する資源として位置付けた点は重要である。

    蓄電設備300万kW、太陽光発電は500万kW以上を追加

    電力供給側でも、上海市は具体的な設備導入目標を示した。

    2026~2030年の5年間で、太陽光発電の新規設備容量を500万kW以上とする。

    洋上風力発電の開発を進めるほか、海上で風力発電と太陽光発電を組み合わせる構想も掲げた。

    さらに、スマートマイクログリッドや再生可能エネルギーの直接供給など、新しい電力供給方式を推進する。

    新型蓄電設備については、2030年までに300万kWの導入容量を目指す。

    ここでいう300万kWは設備の出力容量であり、蓄電できる電力量を示す300万kWhではない。

    実際にどの程度の時間、電力を供給できるかは、蓄電設備のエネルギー容量によって異なる。

    今回の計画では、蓄電設備の導入容量は明示されたものの、蓄電時間や総エネルギー容量の目標は示されていない。

    上海市は、再生可能エネルギーの導入、蓄電設備、VPP、EVとの連携を組み合わせ、電力システム全体の調整能力を高めようとしている。

    この記事はnoteマネーにピックアップされました

    noteマネーのバナー
     
     
    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

    あなたへのおすすめ