
何小鵬が清華大学で語ったPhysical AI――中国の強みは「データ、製造、人材」、成長は線形から指数へ
[メンバーシップ限定]小鵬汽車(XPENG)の何小鵬CEOは2026年9月21日、清華大学を訪れ、学生を前にPhysical AIについて講演した。
テーマは自動車だけではない。先進運転支援・自動運転、ロボット、空飛ぶクルマ、AIモデル、半導体までを、デジタル世界と物理世界をつなぐ一つの大きな産業変化として捉えている。
何氏は、中国にはPhysical AIを発展させるうえで、
豊富な利用シーンとデータ
製造業とサプライチェーン
人材
という3つの「システム的な優位性」があると指摘した。
そしてPhysical AIの成長は、従来型製造業のような単純な線形ではないという。
数年間はゆっくり進む。
しかし、ある時点から指数関数的に成長する。
「線形が指数へ変わるときが転換点であり、それが非常に大きな指数になれば、大きな転換点になる」
何氏は、Physical AIが人々の生活を変える速度についても「皆が想像しているより速い」とした。
今回の講演は清華大学の学生をXPENGへ呼び込む採用イベントでもあり、何氏自身も優秀な人材には「報酬の上限を設けない」と呼びかけた。
しかし、その背景にあるのは単なる採用競争ではない。
XPENGは現在、自動車会社としてだけでなく、自動運転、ロボット、空飛ぶクルマ、AIモデル、半導体、製造までを持つPhysical AI企業へ自らを再定義しようとしている。
今回の清華大学講演では、その理由がかなり明確に語られた。
XPENG、今年の採用の40%がPhysical AI関連
何氏はまず、XPENGと清華大学との関係を具体的な数字で紹介した。
2025年以降、XPENGが採用した清華大学出身者は100人を超える。
北京研究開発センターの基盤モデル関連部門では約10%、深圳研究開発センターの一部AI関連部門では約13%を清華大学出身者が占めるという。
特にロボット部門では高度人材への依存度が高い。何氏によれば、
修士・博士が98%
博士だけで18%
を占める。さらに重要なのが、現在XPENGが何に人を振り向けているかである。
2026年に募集するポストの40%がPhysical AI関連だという。対象はAIモデルだけではない。
ロボット
自動運転
半導体
製造
営業
グローバル事業
など幅広い。何氏によれば、XPENGのシリコンバレー研究開発拠点も200人近い規模に達している。
つまりPhysical AIは、XPENG内部の一つの研究テーマではなくなっている。
人材配置そのものが、会社の重心移動を示し始めている。
「天の時、地の利、人の和」より最後は自分の選択
今回の講演は学生向けということもあり、何氏は繰り返し「選択」の重要性を語った。
何氏の整理では、「人の和」より「地の利」。「地の利」より「天の時」。
そして最後には、それらよりも「どの時点で何を選択するか」が重要になる。
同じ能力を持っていても、どの時代に、どの都市で、どの産業を選び、どの企業へ入り、どんな仕事をするかによって、その後の人生は大きく変わる。
自身が学生だった頃、企業訪問でバスから降りて面接を受ける学生と、そこでは降りない学生がいたという経験も紹介した。
その瞬間には小さな判断に見える。
しかし10年後には、それが人生の大きな分岐点だったと分かることがある。
だから学生は、「未来のトレンドは何か」をまず考えるべきだとした。
何氏が現在、その「未来のトレンド」として強く提示しているのがPhysical AIである。
10年前はインターネット、今はPhysical AI
何氏は10年前の中国を振り返った。
当時、中国のBAT――Baidu、Alibaba、Tencentを中心とするインターネット産業は急速に成長していた。
そこで働く人々からは、「中国のインターネット企業はこれだけ成長し、世界でも競争できる。それでは中国の自動車産業はどこにいるのか」という声も聞かれたという。
現在、その関係は大きく変わった。
何氏は、清華大学で機械工学を学ぶ学生だけでなく、コンピューター、電子・通信、経済・経営などを学ぶ学生にも「新しい章」が始まっていると語った。
そして中国に訪れた機会を、よく使われる「カーブで追い越す」という表現とは区別している。
重要なのは「カーブで追い越す」のではなく、「別の車線へ移る」ことだという。
既存の競争軸で先行者を追い抜こうとするのではない。技術や産業そのものが変わるタイミングで、違う競争軸へ移る。
そこに新しい機会が生まれる。
中国のPhysical AIには「データ、製造、人材」がある
では、なぜPhysical AIで中国に機会があるのか。何氏は中国が持つ優位性として、大きく3つを挙げた。
1.シーンとデータ
Physical AIはデジタル空間だけで完結しない。
自動車なら道路を走る。ロボットなら工場、店舗、家庭などで動く。
現実世界で動きながらデータを集め、そのデータによってAIを改善する必要がある。
巨大な人口、都市、交通環境、製造現場を持つ中国では、多様な実環境へAIを投入できる。
2.製造とサプライチェーン
AIモデルだけでは、ロボットも自動車も作れない。
センサー。モーター。アクチュエーター。半導体。バッテリー。電子部品。機械加工。量産設備。
Physical AIでは、デジタルAI以上に現実世界の製造能力が重要になる。
何氏は中国の製造・エンジニアリング能力に強い自信を示した。
3.人材
AI研究者だけでも足りない。
機械。電子。ソフトウェア。AI。製造。事業開発。グローバル展開。
複数分野の人材を一つの産業へ集める必要がある。
何氏はこれらを、中国の「システム的な優位性」と位置付けている。
そのうえで、「物理世界とデジタル世界の融合は、今後数十年で最も大きな機会の一つになる」との認識を示した。