1匹の子豚|つながる寓話「笑いの調べ」第22話
三男のレンガの家で温かいスープを飲んだあの日から、次男の子豚は自分自身を許せずにいました。「次は、自分の力で」。彼はその決意を胸に、森の名工と名高い老いたキツツキの門を叩きました。
次男は持ち前の頭脳で、複雑な設計図を瞬く間に習得しました。しかし、いざ現場に立つと現実は残酷でした。
彼がノミを握れば木材は裂け、釘を打てば無慈悲に曲がります。三ヶ月が過ぎても、現場にあるのはゴミ同然の廃材の山だけ。壁一枚、柱一本すら立ち上がりません。次男はついに道具を投げ出し、泥の中に座り込みました。
「……もう限界だ。何一つ、成長していない。知識だけが増えて、肝心の手は三ヶ月前と同じように震えている。これじゃ、ただの時間の無駄だ」
そこへ、師匠のキツツキが音もなく降り立ちました。師匠は、次男が「失敗作」と呼んで放り出した、ガタガタの継ぎ手を見つめ、短く言いました。
「これは、ゴミではない。お前の投資だ」
次男は力なく笑いました。「投資? でも、何も形になっていません。僕は一歩も前に進んでいないんです」
師匠は次男の目をじっと見据え、静かに、けれど重みのある声で告げました。
「成長を測ろうとするな。お前が今すべきは、進歩を確認することではなく、目的地への試行錯誤を積み上げることだ。その無様な廃材こそが、お前が逃げなかった証だよ」
師匠はそれだけ言うと、新しいノミを一本置いて飛び去りました。
次男は、腫れ上がった自分の手を見つめました。
今、自分が上達しているという実感は、一ミリもありません。昨日よりも上手く打てる保証も、明日には家が完成する予兆も、どこにも見当たりませんでした。暗闇の中を、手探りで歩いているような感覚です。
けれど、彼は思いました。
「たとえ今は一歩も進んでいないように見えても、この無駄を積み重ねることだけが、いつか辿り着くための唯一の対価なのだ」と。
次男は、震える手で再びノミを拾い上げました。
上達したという手応えはないまま。ただ、自分が目指す「究極の家」という目的地だけを睨みつけ、彼は再び、歪な溝を刻み始めました。
その一打は、昨日と同じように鈍い音を立てましたが、次男の瞳から迷いは消えていました。
小さな問い
・あなたは子豚の次男をどう思いますか?
・努力しているのに変化が見えない時、それは成長でしょうか?
・あなたならこんな時、どうしますか?
