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【この一曲】 【ショート・彼視点】 雨のさんぽみち|Nフェス2026コトバ|

―― short story ――

「白血病……」

医者から告げられた言葉をおうむ返しに呟く。
検査結果を持つ手には、力が入らなかった。

「風邪の症状は軽いものですが、今後の治療について、ご家族とも相談しながら決めていきましょう」


夢があった。


――もう、叶わない。



玄関の鍵穴に鍵をさす。
中にいる人のことを考えると、口元を緩めた。
ドアノブを捻る。

「おかえりなさい」
「ただいま」

わざわざ玄関まで出てきてくれた。
そんなことだけで、胸が張り裂けそうになる。

「どうだった? やっぱり風邪?」
「……うん」

彼女を抱きしめると、温かい体温が俺を満たす。

「……ごめん、うつるね」

やわらかい笑い声が聞こえる。

「いいわよ」

そのまま引き寄せられた。


この幸せはどうなるのだろうか。


「そういえば、祐二が来てたよ」
「祐二が? 何しに」
「体調悪そうって心配してたよ」

笑いながら、インスタントコーヒーを淹れる。
窓の外を見ると、雨が降り出していた。
彼女は俺の前にコーヒーを置いて、横に座った。

「ありがとう」

彼女の髪に触れる。

「うん……雨になっちゃったね」

「散歩行く?」

「えー、雨だよ」

……そりゃ、そうか。

彼女の腰に手をやると、少し驚いた顔をした。

「……今日、甘えたさん?」

上目遣いに俺を見る彼女は心臓に悪い。

「そうだって言ったら」

彼女は嬉しそうに笑って、俺の胸に寄りかかった。


大学の講義を終えて外へ出たとき、体の重さを感じた。
冷や汗が止まらない。
肩で息をしながら、鞄を持ち上げる。

「誠二!」
「祐二」

肩に手を回される。

「お前、電話出ろよ」
「電話した?」
「したよ」
「わりぃ」
「どうせ、美沙といて気づかなかったんだろ」

祐二が睨む。

「まぁな。それより、俺いない間に美沙に会いに行った?」
「……人聞きの悪いこと言うなよ」

今度は俺が祐二を睨む。

「お前、美沙のこと好きだろ」
「……んなことねぇよ」

「おーい!清水兄弟」

振り返ると、サークルの部長が走ってくる。

「あー、どっちだ?祐二は」

祐二が手を挙げる。

「はい、はーい」

部長が大きくため息をつく。

「全く、見分けがつかんなぁ。ちょい、借りるぞ」

祐二と顔を見合わせ、同じタイミングで息を吐く。

「じゃあな」

祐二は俺の肩を叩くと、部長についていく。
ふと、振り返って言った。

「調子悪いなら、帰れよ。顔色悪りぃぞ」

思わず、口元がひきつる。
すぐに表情を取り繕い、笑った。

「……んなことねぇよ」

俺も背を向けると、遠回りをして帰った。

俺たちは双子だった。
祐二にはすぐバレるだろう。

俺がいなくなれば、祐二はきっと美沙に恋をする。
いや、もう、してる。

……あいつがいれば。


気がつけば、爪が食い込むほど手を強く握っていた。

俺が生きている間は、


——美沙は俺だけのものだ。


「少し歩こう」

美沙は浮かない顔をしていた。
でも、行きたかった。
見つめていると、美沙が仕方ないという風に立ち上がった。

外はすごく寒かった。
美沙がさした傘を静かに取り上げ、その肩を抱く。
頬を染める美沙は、
すごく愛おしかった。

公園に着くと、曇り空から太陽が顔を出す。

「お天気雨」

美沙は、病気のことを知ったらどうするだろうか。
俺から離れる?

それは、だめだ。

できるだけ長く、知られたくない。

……いつか。

俺がいなくなったあとも、
笑っていてほしい。

ずっと。



美沙がこちらを向いて笑う。

「きれいだ」

一つの傘の下で、俺は美沙を抱きしめた。









今回の作品は、私がnoteで初めて書いたショートショートを、彼の視点から描いた物語です。
すごくドキドキしながら投稿した、思い入れのある作品と対になる物語です。

2/16にnoteで自己紹介を書きました。
2/18に初めて『雨のさんぽみち』を投稿しました。

それから、ずっと連続投稿を頑張れています。

実は、以前からこの物語をイメージした曲を作りたいと思っていました。
ぜひ皆さんに聴いていただきたいと思い、【この一曲】に選びました。
歌はCOBITo StoriesのYuzukiちゃんが歌います。


noteで初めて書いたショートショートは、彼女の視点で描いています。
短いので、ぜひ、読んでみてください☺️
今回の彼視点を読んだあとには、また違った見え方がすると思います。

そして、いろいろな未熟さは歌が消してくれるはず……ゴニョゴニョ。
#なんのはなしですか

こちらの作品の完全版は、COBIToの力量不足により、まだ描けていません。医療と誠二くんの『夢』のお勉強が完了次第、取り掛かりたいと思います。長編な予感。汗
また、いつか。


けぶじんさん🌿


ひろみさん🌿

コトバフェスに参加させていただき、
ありがとうございます〜☺️

他の方の素敵な作品も見に行ってきます〜

Nフェスはこちらから。


それでは、また、どこかの物語で🌿




お読みいただき、ありがとうございます💐
読んだ記念に、COBIToの庭をひとつ育てていってね🌿

推し庭の説明はこちらから→はしゃもさんの推し庭

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