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配達員ろること2号 第10話『雨宿り』


第10話『雨宿り』

「雨宿りか?」

ろるこが振り返ると、2号がいた。

五分前。

「うわー!」

ろるこは慌てて自転車を止めた。

さっきまで晴れていた空が、急に真っ黒になったと思ったらこれだ。

バラバラバラ!

大粒の雨がアスファルトを叩く。

「聞いてない聞いてない聞いてない!」

ろるこは自転車を押してコンビニの軒下へ飛び込んだ。

髪が濡れる。

パーカーも濡れる。

最悪だった。

スマホを取り出す。

雨雲レーダーは真っ青だ。

しかも数時間前までは曇り予報だった。

「雨雲レーダー全然あてにならないじゃん!」

文句を言っても雨は止まない。

当然だ。

「雨宿りか?」

不意に後ろから声がした。

ろるこが振り返る。

2号が立っていた。

「2号さんこそ!」

ろるこは言った。

2号はびしょ濡れだった。

黒いTシャツが肌に張り付いている。

「……」

「雨宿りする配達員なんて私たちくらいなもんですよね」

ろるこは悪戯っぽく笑った。

「どうやろ」

意外な返事だった。

「え?」

「通り雨じゃ単価上がらんしな」

「そうなんですか?」

「濡れるだけ無駄や」

なるほど。

確かに言われてみればそうかもしれない。

雨の日は稼げる。

でも、それは雨が続く時の話だ。

通り雨程度なら注文も増えない。

ただ濡れるだけ。

「でも」

ろるこは2号を見た。

「2号さん、普通にめっちゃ濡れてますよね」

「……」

「雨宿り遅くないですか?」

「気付いたら降っとった」

「相変わらず無駄に濡れてるんですね」

「傘ささんからな」

思わず笑ってしまった。

2号も少しだけ鼻を鳴らした。

少し沈黙。

雨音だけが響く。

ろるこはぼんやりと2号を見た。

初めて会った日も、こんな感じだった気がする。

愛想がなくて。

何を考えているか分からなくて。

でも、話してみると案外そうでもない。

不思議なものだ。

十分後。

雨は止まなかった。

それどころか強くなっている気がする。

「てか、雨、全然止まないですね」

「しばらく降りそうやな」

ろるこは雨雲レーダーを確認した。

数秒後。

固まった。

「終わった」

「どうした」

「今日、深夜まで雨です」

「じゃあ行くか」

「え?」

「ん?」

「私、カッパないです」

「俺もない」

「2号さんもカッパ忘れたんですか? あ、だから濡れてるのか……」

「部屋に干してある」

そういえば昨日も深夜、雨だった。

2号さんは深夜も走ってたんだ。

「取りに帰るんですか?」

「いや」

「?」

「ここで買ってくわ」

「あ、じゃあ私も」

二人はコンビニでビニールカッパを買い、軒先で羽織った。

「ふふ、オソロですね」

「せやな」

「でも、2号さんもう濡れてるから意味なくないですか?」

「走ってたら乾くやろ」

ブブッ。

2号がスマホを見る。

「祭りや」

ろるこも慌ててアプリをオンラインにした。

すぐに鳴る。

「うわ、本当だ!」

「行くか」

「はい!」

二人は自転車とバイクに跨った。

雨は相変わらず強い。

さっきまで最悪だと思っていたのに。

不思議と今は、少しだけ楽しかった。

「2号さん!」

「なんや」

「競争です!」

「まだ早い」

即答だった。

ろるこは笑った。

次の瞬間。

二人は雨の街へ走り出した。


あとがき

シロクマ文芸部のお題「雨宿り」に参加させていただきました。

1年近く休載していたのに、まさかの3週連続投稿です(笑)

実はシロクマ文芸部のサブスクに入ると月初めにお題が見られるんですね。

そこで「これはろるにごを書くしかない!」と思っていました(笑)

洗濯機、水を飲む、雨宿り……。

全部配達員向けのお題でしょ!?

……あ、そうでもない?

一応、来週のお題はろるにごには繋げられなさそうなので、多分お休みです(笑)

というか、書きたいものが多すぎるんですよね。

『配達員はクジラの夢を見るか?』も早く完結させたいですし、他にもまだまだ書きたい話があります。

あと、ろるにごの8.5話も書かなきゃいけないのに、気付けば10話まで進んでしまいました(笑)

なので次に書くとしたら、少し遡って8.5話か9.5話になると思います。

さて、『雨宿り』ですが、天候的には夏っぽい雰囲気があるものの、時期としてはまだ5月〜6月頃のお話です。

書きながら思っていたんですが、2号ってTシャツで雨に濡れて寒くないんですかね(笑)

5月や6月の雨って、実際かなり冷たいんですよ。

僕もこの時期に雨稼働をしたことがありますが、寒いのが分かっていたのでユニクロの極暖を着て走っていました。

とてもじゃないけど、Tシャツ稼働なんて正気の沙汰とは思えません。

まあ、2号はかなり暑がりっぽいので、意外と平気なのかもしれませんね(笑)


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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