【幸せな手】町が恋を応援する—そんな奇跡、信じますか? :#幸手権現堂秋祭#シロクマ文芸部 ショートショート
「幸せな手」と書いて幸手市
宿場町の古民家カフェは、午後のやわらかな光に満たされていた。テーブルの向こうで、若い男女が楽しそうに笑い合っている。
<それはごくありふれた秋の午後のはずだった>
やがて彼らが帰り、休憩時間に店員がテーブルを片付け始めたその時、古びた椅子の下から一枚の四角い封筒がひらりと舞い落ちた。
「去年の秋、君と一緒に見た曼珠沙華の前で、僕の気持ちを伝えたい」
店長は目を輝かせた。これは”ラブレター”だ。
「早く届けてあげないと、たいへんだ」
その時、店長の娘、秋子が学校から帰って来た
「このラブレターを権現堂の曼珠沙華にいる青年に届けておくれ」と秋子に手紙を手渡した。
「よーし、私に任せて!恋のバトンは私が繋ぐ!」
秋子は手紙を持って、権現堂へ駆け出した。
宿場町は、まるで生きている迷路のようだった。家々の軒先をかすめ、曲がりくねった路地を滑るように走る。
息はもう限界に達し、肺が熱く焼けるようだった。それでも、立ち止まるわけにはいかない。見知らぬ二人の恋が、この手紙の行方にかかっている。
ー坂道で手紙が風に舞い上がった。
「しまった!」
すると、風に舞ったラブレターを猫のミケがくわえた。
「お願い!みんな!あの手紙を繋いで、青年に届けて!」
ー秋子は大声で叫んだー
「なんと、恋文を渡すか。わが命に代えても、成就させてみせる」
「若い二人のために、一肌脱ぐわよ!」
「わー、ドキドキする!届けー!」
「ニャにゃーん」
役場、商店街、神社、手紙は町中の人達の手で繋がれ、手紙は宿場町、神社の境内、神輿に乗って桜並木を走り、町を駆け抜けた。
◇
権現堂の曼珠沙華が古民家や石橋と調和し、水面が柔らかく輝く、静かで懐かしい秋景色。
夕日に染められた赤い曼珠沙華はひときわ深く輝いていた。
「大事な話って、何かな」
「あの、じつは…」
青年は、ポケットを探る。そこに、先ほどまで確かにあったはずの四角い封筒がない。右、左、胸ポケット、カバンの中…。
いくら探しても、その感触はどこにもなかった。
「どこにいったんだ…?」
ー青年の額に冷や汗がにじむー
「何?どうしたの?」
せっかくここまで来たのに。 やっと、やっと、君に想いを伝えられると思ったのに…
夕日に染まる曼珠沙華の赤が、まるで内なる焦燥を映し出すかのように、目に痛いほど鮮やかだった。
ーその時、小さな男の子が息を切らせながら駆け寄ったー

「これよんでください!」
男の子は両手で、彼女に手紙を差し出した。
「あら、私に?」
「えっ?」
ー青年は呆然としているー
「どういう状況? 可愛い挑戦者が来たよ」
彼女は手紙を慎重に受け取り、封を開けずに微笑む。封筒にはたくさんの応援のメッセージが書かれていた。
「がんばってね!みんな応援してるよ」
「勇気出して!後悔しないで伝えて!」
「恋が実りますように!」
彼女はしばらく手紙を見ながら、クスクスと笑いはじめた。
彼女はしゃがんで、男の子の頭をそっと撫でお礼を言った。
「もう空ける必要ないわ。このまま大切にするね」
そして、彼女は手紙を胸に当てて、青年に向かって笑いかけた。
「さあ、今日来た道を、もう一度、一緒に戻ろう」
彼女がゆっくりと手を差し出して、青年の手を握った。
かすかな風、石畳を踏む足音、遠くの鐘の音が聞こえた
少し照れたように歩き出した二人を、夕日に照らされた赤い曼珠沙華が包み込んでいた。
少し離れた坂道の上で「よーし!任務完了っ!」秋子が両手を口に当てて小さく叫んだ。

#幸手権現堂秋祭りコラボ企画3
ということで、またまた乗りかかった船のごとく、コラボ企画3に投稿します。今回は『小牧幸助』さんの企画【シロクマ文芸部】とのコラボ
「幸せな手」から始まるショートショートを書いてみました。
【シロクマ文芸部】の企画、今回初めて応募します。『小牧幸助』さんよろしくお願いします。
最後のあとがき
私の得意なジャンルで、応募3部作揃いました。
全力を尽くしました・・・感無量です。
1作目:歴史ロマン
2作目:童話・ファンタジー
3作目:劇場型 恋愛・人間ドラマ
以上3作で燃え尽きました。あとはスキ応援要員に徹します(笑)
一般公募に初めて挑戦しましたが、難しかったです。さらに私の世界観が受け入れられるのか?と思うと緊張しました。
自分の書いた作品が、地域の貢献に役立つ可能性があるなら…と考えると、もういいや、枯れ木も山の賑わいということで、いってやれーと(笑)
初めて参加する企画ばかりで不安でしたが、異なる分野のクリエーターの作品と出会えて勉強になりました。
#幸手権現堂秋祭を調べていくうちに、とても興味が湧いてきました。自分が書いた作品の舞台。一度は旅行で訪れたいですね!
PJさん、サポーターの皆様。お疲れ様です!最後まで応援しております!
スキ・コメント頂いた方々、ありがとうございました。
豊かな自然と風情に彩られた幸手権現堂秋祭りが大いに賑わい、幸手市がさらに発展していくことを心よりお祈り申し上げます。
出典:※本作品に使用した挿絵は、Cici AI(https://www.ciciai.com)により生成された画像です。物語の雰囲気を補うために使用しています
