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求人を出したら「クレクレ星人」ばかり来た話 |スタッフを「管理」するのをやめて「推し活」してる社長のnote ep.1

この記事は最近の若いヤツは「義務も果たさず交換ばかり要求してくる」とお嘆きの会社の方へのヒントになるかもしれません。

なってくれたら嬉しいです。

どうも、失敗と本からしか学べない男、タルイです。

特技はやめること。
サウナとマッサージのお店を経営してます。


突然ですが、世の中の人手不足、深刻ですね。

まずこちらの図をご覧ください。

世の中全体で見れば、有効求人倍率は1.18倍(2026年3月時点)。以前に比べれば、少しずつ落ち着いてきています。

ところが、飲食・接客・サービス業だけは別格です。

サービス業だけが「異常な人手不足」のままなのです。


調理職は2.37倍、接客職は2.42倍。全体平均のほぼ2倍の激しさで、人材の奪い合いが続いています。

しかも、「集まらない」だけでは終わりません。

せっかく採用しても、辞めてしまう。

飲食・サービス業の離職率は約28〜30%。全産業平均(約15%)の2倍です。

新卒に至っては、宿泊・飲食サービス業では3年以内に約5〜6割が辞めていく。全業種で最悪の水準です。

集まらない。定着しない。この二重苦です。


では、どうするか。

「時給を上げる」「求人広告を出す」——これまでの定番の対策は、もう効きません。

どの店の求人も条件が似通ってしまい、求職者から見れば「どれも同じ」。

給与や勤務時間という「条件」で人を釣る競争は、体力のある大手が最後に勝つゲームです。

小さな店が、その土俵で戦い続けるのは無理があります。

私も、その無理を思い知った一人です。


先に結論から言います。私がたどり着いた答えは、これです。

スタッフを、管理する対象ではなく、応援する対象として扱う。

私はこの経営手法を『推し活経営™️と名付けました。

「推し活経営™️」とは何か

普通の会社では、スタッフは「活用すべき人材」です。採用して、教育して、評価して、できるだけ効率よく働いてもらう。

人事の世界では、人を「リソース(資源)」と呼びます。ヒューマン・リソース、略してHR。資源だから、うまく活用する。減らないように管理する。

私はこの考え方を、まるごとやめました。

うちでは、スタッフは「活用する資源」ではなく、「応援する人」です。

社長である私が、スタッフを推す。

スタッフが活躍できるように、裏で環境を整える。

スタッフが輝けば、それを見たお客様も一緒にスタッフを推してくれる。

その応援が、めぐりめぐって店全体に返ってくる。

これが「推し活経営™️です。


経営の本ではよく、人を「資産」と見るか「費用」と見るか、という話が出てきます。

費用としてのスタッフは、減らせば減らすほど利益が増える。だから管理して、コストを絞る。

一方、資産としてのスタッフは、投資すればするほど価値が増えていく。

どちらの目で人を見るかで、経営は正反対になります。

私はスタッフを「費用」ではなく「資産」——いや、それ以上の「推し」として見ることにしました。

なぜ「推し活」しようと思ったのか

そもそも、なぜ私がこんな変なことを始めたのか。

きっかけの一つは、求人でした。

お店を新しくオープンすることになり、一緒に働く仲間を探すことにしたのです。新規オープンですから、スタッフはゼロ。

「いい人に来てほしい」。ただただ、そう思っていました。

そこで私は、できるだけ魅力的な求人にしようと知恵を絞りました。時給はもちろん、福利厚生も手厚く。

そして目玉として打ち出したのが、これです。

「サウナ入り放題」。

サウナ店なのだから、スタッフはサウナに入り放題。なんて魅力的な特典だろう、と当時の私は得意げでした。

もちろん、「お客様の予約が入っていない時間に限る」という条件付きです。

これはいい人が集まるぞ、と。


ところがです…


求人を出したら、クレクレ星人ばかりだった

期待して求人を出した私を待っていたのは、ある種の人たちでした。

集まってきたのは、サウナに入りたい子たちだったのです。

面接で目を輝かせるのは、仕事の話ではなく、サウナの話。

「ここ、入り放題なんですよね?」

実際に働き始めると、案の定でした。「予約が入っていない時間に限る」という条件は、どこへやら。

仕事の合間にサウナに入るのではなく、サウナに入るために仕事に来ているような子ばかりが集まってしまった。

私はこの種の人たちを、クレクレ星人と呼んでいます。もう違う星の住人という認識です。


クレクレ星人は、口を開けば「ちょうだい」と言います。

時給をくれ。休みをくれ。マニュアルをくれ。正解をくれ。そして、サウナをくれ。

与えられることばかりを求めて、自分から何かを差し出す発想がない。

正直、うんざりしました。

接客業なのに、お客様を喜ばせることには興味がない。私が差し出した「特典」だけを、しっかり受け取っていく。

こんな人たちと、お客様を笑顔にする店なんて作れるのか。頭を抱えました。



クレクレ星人は、求人欄が育てている

ところが、クレクレ星人に腹を立てながら、ふと気づいたのです。

この人たちが「くれ」と言うのは、当たり前じゃないか。

求人媒体を、もう一度よく見てください。

そこに書いてあるのは、ほとんどが「もらえるもの」の一覧です。時給はいくら。休日は何日。交通費は支給。各種手当あり。

待遇、待遇、待遇。

私の求人で言えば、その筆頭が「サウナ入り放題」でした。

ここで、求人における私の最大の失敗を白状します。

私は「サウナ入り放題」を、ご褒美だと思っていました。来てくれたお礼に、ラッキーな特典をあげますよ、と。

でも、福利厚生の本質は、まったく違うのです。

福利厚生とは、社員のご機嫌をとるためのプレゼントではありません。本当の目的は、「いい仕事をしてもらうための、環境への投資」です。

家賃補助や健康診断があるのは、生活や健康の不安をなくして、安心して仕事に集中してほしいから。休暇やリフレッシュ施設があるのは、しっかり休んで、次の仕事でより高い価値を出してほしいから。

ご褒美ではなく、投資。もらって終わりではなく、いい仕事に返してもらうことが前提です。

ところが私は、それを「ご褒美」として打ち出してしまった。

「サウナに入れますよ」とだけ言って、「だから、いいサービスを返してくださいね」を言わなかった。

ご褒美として出せば、ご褒美目当ての人が来ます。サウナ目当ての子が集まったのは、当たり前だったのです。

つまり求人欄とは、「これだけのものがもらえますよ」という約束の一覧表です。

応募者は、それを見て応募してきます。働く前から「これがもらえる」と頭にインプットされた状態でやってくる。だから、入ってきて最初に言うのが「で、これはもらえますよね?」になる。

当然です。そう書いてあったのだから。

そして求人欄には、「義務を果たした、その後にもらえる」とは、どこにも書いていない。

お客様を笑顔にして、仲間と協力して、店に価値を生んで、その後で対価が返ってくる——という順番が、まるごと抜け落ちている。もらえるものだけが先に並び、果たすべきことは書かれていない。

そんな一覧表を見て応募してきた人がクレクレ星人になるのは、その人のせいではありません。

求人欄が、そう育てているのです。


なぜ、日本の会社はクレクレ星人だらけなのか

もう少し大きな話をします。

クレクレ星人は、私の求人欄だけが生んだのではありません。日本の会社そのものが、長いあいだクレクレ星人を育ててきたのではないか。

理由は、いくつも思い当たります。

一つは、減点主義です。

多くの会社は、「何をやったか」より「ミスをしなかったか」で人を見てきました。加点ではなく、減点。

すると、いちばん賢い生き方はこうなります。

「言われたことだけやる。余計なことはしない」。

自分から動けば、その分ミスのリスクも増える。だったら、動かないほうが得です。こうして、与える人ほど損をし、「指示をください」と待つ人が生き残っていく。

もう一つは、管理のしすぎです。

「人は放っておくとサボる」。その前提で、会社はルールを増やし、管理を重ねてきました。

でも、柵を増やせば増やすほど、人は柵の中でしか動かなくなります。管理されればされるほど、自分で考えることをやめていく。

そして、自分で考えなくなった人を見て、経営者はこう思うのです。

「やっぱり、もっと管理しないとダメだ」。

そしてまた、柵を一本増やす。

この悪循環が、何十年も回り続けてきた。クレクレ星人は、こうして大量生産されてきたのです。


でも、その求人欄を出したのは誰か

そこまで考えて、私は、もっと嫌なことに気づきました。

その求人欄を出したのは、私だ。

条件ばかりを並べた一覧表を世に出して、「いい人が来ない」と嘆いていた。

クレクレ星人を呼び寄せておいて、クレクレ星人にうんざりしていたのです。

原因は私がおじさん世代だからというのもあります。

おじさん世代が若かった頃は、会社との間に「先に頑張れば、あとで必ず返してもらえる」という約束がありました。終身雇用や年功序列がその約束です。だから「まず義務、権利はあと」が当たり前でした。ツケ払いのような感覚ですね。

今の若手は、その約束が壊れたあとの時代しか知りません。先に頑張っても、会社が報いてくれる保証はない。だったら「先に条件を確認してから働く」のは、わがままではなく身を守るための当然の行動です。いわば前払いの感覚です。

つまりどちらも「働いた分だけ受け取る」という同じ取引の考え方をしていて、支払いのタイミングの感覚だけがズレている。これが世代間のすれ違いの正体です。

だからこの対立は、どちらが正しいかを決めても解決しません。



◆だから、まず求人媒体をやめた

犯人が自分だとわかれば、やることは決まります。

私の得意なことはやめることです。まず、求人媒体をやめました。

なぜなら、求人媒体に広告を出すというのは、つまるところ「誰でもいいから来てください」と言っているのと同じだからです。

広く募集をかけて、たくさん集めて、その中から選ぶ。一見、まともなやり方に見えます。でも、「誰でもいい」と門を広げれば、当然、誰でも来ます。条件目当ての人も、来ます。


私が本当に一緒に働きたい人は、そういう人ではありませんでした。

目立たないところで、人のために動ける人。見返りを先に計算せず、まず相手に与えられる人。縁の下の力持ち——いわばアンサング・ヒーローです。

有名な『GIVE & TAKE』という本では、人を三つのタイプに分けています。


まず与える「ギバー」、まず受け取ろうとする「テイカー」、損得のバランスを取る「マッチャー」。

私が欲しかったのは、ギバーでした。

もっと言えば、私が推し活したいのは、シンデレラのような子です。テイカーだらけの家で、文句も言わず、見返りも求めず、黙々と働き続ける。

——もしかしたら、これを読んでいるあなたも、そうかもしれません。

朝、誰よりも早く来て、みんなが使う場所をそっと整えている人。

誰も見ていないのに、床に落ちたゴミを、当たり前のように拾える人。

自分がやった仕事なのに、「みんなのおかげです」と手柄を譲ってしまう人。

忙しそうな同僚に、頼まれてもいないのに「手伝おうか」と声をかけてしまう人。

そして——それだけのことをしても、誰からも気づかれず、感謝もされず、ときどき、ばかばかしくなる人。

「どうして自分ばかり」と、ため息をつく夜がある人。

それでも次の日には、また誰かのために動いてしまう人。

評価もされない。昇給もしない。名前も挙がらない。報われないとわかっていても、与えることをやめられない。

そういう人を、世の中はうまく扱えません。数字に表れないから、管理型の会社では評価のしようがない。だから、いちばん大切な人が、いちばん報われないまま、すり減っていく。

私は、そういう人にこそ、光を当てたい。

継母や義姉のような「クレクレ星人」に囲まれて、それでも腐らずに働いてきた、シンデレラのような人に。


ところが困ったことに、ギバーほど、求人欄には引っかかりません。


「もらえるもの」を前面に出した広告に、まっさきに反応するのは、テイカー——つまりクレクレ星人だからです。

ギバーを「誰でもいいから来てください」で探すこと自体が、そもそも間違っていたのです。

では、どうやってギバーと出会うのか。

入り口を、二つに切り替えました。

一つは、紹介です。

いまいるスタッフが、「この人と一緒に働きたい」と思える人を連れてくる。ギバーの周りには、ギバーがいます。条件ではなく、人と人のつながりで広がっていく。

もう一つは、お客様へのスカウトです。

うちのお店に通ってくれて、サービスの良さを身体で知っているお客様。通ううちに人柄が見えてきて、「この人なら」と思える方には、こちらから声をかけます。

考えてみれば、これ以上の出会い方はありません。

その人は店のファンで、何が心地いいかを誰よりも分かっている。しかもこちらは、相手の人となりをお客様として何度も見てきている。求人欄の一枚の応募書類より、よほど確かな情報です。

「もらえるもの」目当てに来る人ではなく、「あの人と働きたい」「この店が好きだ」と思って来てくれる人。

入り口を変えただけで、集まる人がまるで変わりました。


◆そして、雇用そのものをやめた

ただ、求人媒体をやめても、まだ残るものがありました。

「雇う人」と「雇われる人」という関係です。

待遇を差し出す側と、受け取る側。この関係が残っている限り、どこかでまた「もらう・もらえない」の話が顔を出す。

ならば、土壌ごと変えるしかない。

そう考えて、私はもう一段、思い切ったことを決めました。

雇用するのを、やめたのです。

雇うのをやめて、どうするのか。

スタッフを、雇われる人ではなく、自分の店を持つ「オーナー」にしていく。待遇をもらう人ではなく、価値を生み出す人になってもらう。

——その話は、長くなるので次回に書きます。

そしてもう一つ、次回に持ち越したい話があります。

クレクレ星人がいるということは、その反対側に、「やれ」と命じる人——いわばヤレヤレ星人がいるはずです。

そのヤレヤレ星人とは、いったい誰なのか。

実は、犯人は私自身だったのですが……その話は、また次回に。

ただ、ひとつだけ言えるのは。

管理をやめて推し活に振り切ったとたん、求人に来たあの人たちとは、まるで違う表情のスタッフが、私の隣で笑うようになったということです。




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