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気づいた人がやる「名もなき仕事」をつくるのを、やめてみた| スタッフを「管理」するのをやめて「推し活」してる社長のnote ep.13

この文章は、職場で生じがちな「名もなき仕事」特定の人間に押し付けないための組織運営について述べています。

どうも、本と失敗からしか学べない男:タルイタケシです。
私の得意なことは「やめる」ことです。



突然ですが、あなたの職場に、

「これ、誰の仕事なんだろう」

という仕事はありませんか。

誰も返信していない問い合わせ。
期限が近づいている契約の更新。
先月から少しずつ落ちている数字。
まだ誰も返していない口コミ。


このような名前のついていない、小さな仕事です。


ラクスルが2026年に、中小企業の経営者・幹部300名を対象に行った調査によると。

「戦略立案や重要な意思決定に、理想通りの時間を割けているか」

この問いに、52.3%が「割けていない」と答えました。

事務・管理業務を「全部または大部分、自分でやっている」人は37.7%。

その業務に週10時間以上使っている人は39.6%。

負担を感じている人は60.9%。

さらに67.0%が、その負担によって新規事業や投資判断などの「攻めの施策」を先送りした経験があると答えています。

私はこの数字を見て、「これ、自分のことだな」と思いました。


一番おもしろかったのは「兼任」


この調査でもうひとつ気になったのが、担当者の置き方です。

マーケティングや営業に専任担当者がいる企業では、「戦略立案や重要な意思決定に時間を割けている」という割合が59.7%。

一方、「兼任担当者のみ」では34.4%。

3区分の中で最低でした。

もちろん、

「兼任にしたから悪くなった」

とは言えません。

でも、少なくとも分かることがあります。

誰かに担当という名前をつけただけでは、仕事はなくならないのです。

本業の横に仕事を置いただけなら、「誰の本業でもない仕事」は残ります。

だから私は、誰がやるかを決める前に、その仕事自体をなくせないか考えるようになりました。


ただ私は、「気づいた人がやる」という文化そのものを否定したいわけではありません。

助け合いのない現場は、たいてい冷たいです。

気づいて動ける人は、現場にとって大切です。

私がやめたのは、気づいた人に、その仕事がそのまま乗っかる仕組みです。

店にも「名もなき仕事」がある


ウチでは業務委託のセラピストを「推しメン」と呼んでいます。

推しメンは施術をして、その売上から報酬を得る。

これが彼女たちの仕事です。


では、これらは誰の仕事でしょうか。

・「今日空いていますか」というLINEに返事をする。
・消耗品が切れる前に発注をかける。
・来週の予約が少ないと気づいてSNSを書く。
・口コミに返事を書く。


どれも店には必要です。

でも担当が決まっていなければ、「誰かが気づいてやる仕事」になります。

家事に「名もなき家事」があるように、店にも「名もなき仕事」があります。


厄介なのは、これらが見えにくいことです。

やった人の努力は残らない。
やらなかった人の不作為も残らない。


だから問題になりにくいのです。

「気づく力」に税金をかけてはいけない


この仕組みの一番おかしなところは、能力が高い人ほど仕事が増えることです。




本来なら長所のはずの能力が、そのまま追加業務になって返ってくる。

私はこれを、「気づく力への課税」だと思っています。

しかも支払いは現物です。

施術をすれば報酬が発生する。でもタオルを発注しても、LINEを返しても、報酬が増えるとは限らない。

返ってくるのは、「ありがとう」「助かった」だけ。

感謝は大切です。

でも、感謝だけで仕事を制度化してはいけない。

一度やった人は、次から「やってくれる人」になります。

善意が役割になる。
役割が義務になる。


私は昔、それを「助け合い」だと思っていました。

コンサル時代、私は「サンクスカード」をよく勧めていました。

感謝が見える化され、職場の雰囲気もよくなる。成功施策だと思っていました。

でも今振り返ると、カードが集まるのはいつも同じ「よく気づく人」でした。

私はその人を表彰し、名もなき仕事が一人に集中している問題を、美談に変えていたのです。

しかもカードを書くこと自体も名もなき仕事です。

結局、気づく人ほど助け、感謝され、さらに感謝を配る役まで担っていました。

本来やるべきだったのは、表彰ではなく、

「なぜ、この人に仕事が集まるのか?」と仕組みを直すこと。

私は助け合いの文化を作ったつもりで、実は特定の人への負担を、褒めながら強化していたのです。

業務委託だからこそ、曖昧にしたくない


ワイルームSpaには店長がいません。

上から細かく指示命令する人を置かない設計です。

だから、

「暇だったらこれもやっておいて」
「気づいた人がLINE返して」
「空いている人が掃除して」


という運営にはしたくありません。

業務委託は、契約書の名前だけで決まるものではありません。

実際の働き方の中で、

仕事を断る自由があるか。
具体的なやり方を指示されているか。
時間や行動を拘束されているか。


そうした実態から判断されます。

だから、

「契約外だけど、気づいたらやって」

を積み重ねる運営は避けたい。

法律のためだけではありません。

自律して働く人が集まる店とも相性が悪いからです。

名もなき仕事は、4つに分ける


以前の私は、「スタッフに頼む」か、「自分でやる」の二択で考えていました。

でも今は違います。

名もなき仕事が見つかったら、4つに分けます。

1. 消す そもそも、その仕事は必要なのか。
2. 自動化する 予約、通知、集計、AIに任せられないか。
3. 有償の仕事にする 人に頼むなら、善意ではなく仕事として切り出す。
4. 経営者が引き取る 最後に残る責任は、私が持つ。

一番やってはいけないのが、
5番目の、「誰か気づいた人がやって」です。

現在のところ、ほとんどの名もなき仕事は【1. 消す】【2. 自動化する】で消化できました。

特にエージェントAIのスキルは凄まじく優秀で、【AI店長】として活用してます。

店長は置かないのに、AI店長はいる


「店長を置かないと言っていたのに、AI店長はいるの?」

そう思うかもしれません。

私がなくしたいのは、店長という仕事ではなく、店長に集中していた権力です。

評価する。
指示する。
報酬を決める。
シフトを割り振る。

一方、店長がやっていた仕事には、権力とは関係ないものもたくさんあります。

在庫を見る。
予約状況を確認する。
売上をまとめる。
口コミに返信する。

これまで、この二つが同じ「店長」という役職に入っていました。

だから分けます。

力は人に持たせない。
作業はAIに渡す。

それが、AI店長です。

「気づく仕事」をAIに渡す

AI店長に任せたいのは、

予約が薄い日を知らせる。
在庫不足を知らせる。
売上をまとめる。
口コミ返信の下書きを作る。
キャンペーン案を考える。

つまり、

気づく。
思い出す。
まとめる。
下書きする。

こうした仕事です。

もちろんAIだけではできません。

予約システムや在庫データなどとの連携が必要です。

AI店長=AI+データ+システム。

そしてAIには手がありません。

タオルを運ぶ。
電球を替える。
掃除する。

こうした仕事は、人の仕事としてきちんと有償化します。


名もなき仕事で一番重いのは、作業時間よりも、「これ、誰もやってないよな」と気にし続けることです。


これまで課税されていたのは、動く力ではなく、気づく力でした。

だから「気づく」をAIが引き取るだけでも、現場は軽くなります。

AI店長は、人を管理しない

ここは大事です。

AI店長が管理するのは、人ではなく、仕事と事実です。

予約。売上。在庫。空き枠。問い合わせ。口コミ。

数字を使って、「誰が優秀か」「誰が頑張っていないか」と人を序列化することはしません。

数字は仕事を管理するために使う。
人を評価するためには使わない。

それをやったら、人間の店長をAIに置き換えただけです。


ただし、人を管理しないことと、店を管理しないことは違います。

安全、衛生、品質、予約、契約、顧客体験。

ここは経営者が責任を持ちます。

AI店長は、監視役ではありません。

裏方です。

そしてAIに渡せるのは、作業まで。

責任までは渡せません。

AIが間違えても、システムが止まっても、お客様に謝るのは私です。

AIに仕事は渡す。
責任は渡さない。

そこだけは、最後まで経営者の仕事です。

「余白」があるから、助け合える


ここで一冊、紹介したい本があります。

トム・デマルコの『ゆとりの法則』です。

原題は Slack。意味は「たるみ」「ゆとり」「遊び」。

この本が伝えているのは、効率を追いすぎた組織ほど、変化に弱くなるということです。

私もコンサルタント時代は、稼働率を上げ、手待ち時間を減らし、一人で何役もこなせる組織を目指していました。

でも余白を削りすぎると、突発的な仕事を吸収できません。

そこで生まれるのが、「気づいた人がやる」という善意頼みの仕事です。

だから目指すべきは、隙間ゼロの会社ではありません。

善意がなくても仕組みで回り、それでも誰かを助けられる余白がある会社。

本当の助け合いは、効率を極限まで高めた先ではなく、余白の中から生まれる。

『ゆとりの法則』は、そのことを改めて考えさせてくれる一冊です。

まとめ


「気づいた人がやる」は、一見するといい言葉です。
でも仕組みを作らないまま使えば、

一番気づく人。
一番責任感の強い人。
一番断れない人。


そこに、名もなき仕事が集まります。

だから私は、「気づいた人がやる仕事」をつくるのを、やめました。


仕事が生まれたら、

消せないか。
自動化できないか。
有償の仕事にできないか。


それでも残るなら、経営者が引き取る。


そしてAI店長には、人ではなく、仕事と事実を見てもらう。

目指しているのは、誰も何もしない会社ではありません。

気づいた人が引き受けなくても、店がちゃんと回る会社です。

そのうえで、誰かが自分から助けてくれたら、心から「ありがとう」と言える。

助け合いは、義務から生まれるのではなく、余白から生まれる。

そして、

「気づいた人がやる仕事」をつくるのをやめると、気づいた人が、やりたいことをやれるようになる。

いまは、そう思っています。

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