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『指示待ち社員』は、上司が育てている。 5つの禁止令と5つの許可 | スタッフを「管理」するのをやめて「推し活」してる社長のnote ep.9

指示待ち社員は能力ではなく、上司の「禁止令」と組織の構造が生み出していることを、心理学の視点から解説します。

どうも、本と失敗からしか学べない男タルイタケシです。

私についてはこちらをご覧ください。


突然ですが、あなたの職場に「指示待ち社員」はいますか。

パーソルキャリアのJob総研が2026年6月に公表した「上司と部下の意識調査」に、こんな数字があります。


上司の69.9%が部下について困りごとを抱えていて、その中身はというと。

1位は「主体性を感じにくい」で46.3%2位は「指示待ちが多い」で45.3%
でした。


ところが同じ調査を部下の側から見ると、景色が変わります。

部下の62.3%も困りごとを抱えていて、上司に求めるものの1位は「心理的安全性」でした。


上司は「自分で考え、自分で動いてほしい」と願っています。

一方で、部下は「安心して働ける場所でありたい」「失敗しても見捨てられない職場であってほしい」と願っています。

つまり、上司が求めているのは「自律」であり、部下が求めているのは「安心」です。

問題は、どちらかが悪いことではありません。

そもそも、お互いが求めているものが違うまま、同じ言葉で話をしていることなのです。


私はこのすれ違いを見て、心理学のある概念を思い出しました。


禁止令です。

禁止令とは何か?


人と人のあいだで何が交換されているかを見る交流分析という心理学に、禁止令という考え方があります。


親が子どもに向けて、言葉やそれ以外の方法で無意識に送り続けてしまう「〜するな」というメッセージのことです。


グールディング夫妻という臨床家が、13ほどの類型にまとめました。


たとえば「考えるな」「感じるな」「重要であるな」といったものです。

叱るときの表情や、話を聞いてもらえなかった記憶。

そういうものが積み重なって、子どもは「自分はこう生きるしかない」と決めてしまう。

これがのちの生き方を縛る、というのが理論の骨子です。


私はこの構造が、そっくりそのまま会社にあると思っています。

上司が部下に送り続ける禁止令が、5つあります。

[会社の5つの禁止令]

①「考えるな!」

「勝手なことをするな!」
「言われたことだけやればいい!」

こう言われ続けた人は、考えるのをやめます。
考えても採用されないなら、考えるだけ時間の無駄だからです。

②「行動するな!」

「余計なことをするな!」
「前例どおりでいい!」

改善を提案すると煙たがられ、挑戦すると責任だけ回ってくる。
だったら何もしないのがいちばん安全だ、と学習します。

③「成功するな!」

部下が成果を出すと、なぜか上司の機嫌が悪くなる。
手柄だけ持っていかれる。

こういう職場では「頑張るほど損をする」という空気が静かに広がります。

④「感じるな!」

「仕事なんだから我慢しろ!」
「気合が足りない!」

違和感を口にできない職場では、問題は誰にも見えないまま大きくなります。

そして人は、黙るか、辞めるかを選びます。

⑤「重要になるな!」

「お前の代わりはいくらでもいる!」
「新人は黙って聞いてろ!」

これを言われて当事者意識を持てる人は、いません。


以上をまとめると、

考えることを禁じ、行動を禁じ、成功を恐れさせ、感情を押し殺させ、存在価値まで否定する。

これを毎日やれば、指示待ち社員は簡単に出来上がります。

指示待ち社員は、採用されたのではありません。育てられたのです。


社則が「禁止令」に変わるとき

社則は、安全やコンプライアンスを守るために必要です。

しかし運用を誤ると、部下の主体性を奪う「禁止令」に変わります。

「必ず上司の承認を得る」は「考えるな」

「前例のないことは禁止」は「行動するな」というメッセージになります。

年功序列の評価は「成功するな」。

不満を封じる文化は「感じるな」。

人を代替可能な存在として扱う制度は「重要になるな」と伝わります。


問題はルールそのものではなく、必要以上に細かく許可を求めさせる運用です。

10万円以上の支出に承認を求めるのは合理的でも、コピー用紙まで許可制にすれば、社員は自分で判断しなくなります。

社則は会社を守るためにあります。

しかし、細かく管理しすぎれば、会社を守るどころか人の主体性を壊します。

ルールは最小限に、信頼は最大限に。


なぜ禁止令が生まれてしまうのか?

ここまでを読んで、
「ひどい上司がいるものだ」で終わらせると、たぶん何も変わりません。

私はコンサルタントとして20年、いろいろな会社を見てきました。

禁止令を出している上司の多くは、悪人ではありませんでした。

むしろ真面目で、責任感が強い人ほど、禁止令を連発していました。

その理由は簡単で、その人自身が管理される側でもあるからです。

部下が勝手に動いて失敗すれば、責任を問われるのは上司です。

部下が自分より評価されれば、自分の順位が下がります。

つまり管理型の組織では、禁止令を出すことが上司にとって合理的な行動になってしまう。

性格の問題ではなく、構造の問題です。


ここでもうひとつ、承認の話をさせてください。

同じく「交流分析」の心理学者であるクロード・スタイナー。

彼は、人が人に与える肯定的な関わりを「ストローク」と呼びました。

そしてこれは本来いくらでも作れるのに、「人為的に品薄にされている」と指摘しました。

品薄にすれば、配れる人の一言に値打ちが出るからです。

会社に置き換えると、褒め言葉も評価も機会も、上からしか出てこない貴重品になります。

そうなると部下にとって最も賢い戦略は、自分の考えを貫くことではなく、上を向いて期待に応えることです。

自分で考える人ではなく、上司の意図を察する人が育ちゃいます。つまり「忖度」


「自主性」と「主体性」はぜんぜん違う


ここで、言葉を一度整理させてください。

冒頭のアンケート調査では、上司の46.3%が部下から「主体性を感じにくい」と答えました。

そとそも、主体性とは何でしょうか。

教育者の工藤勇一さんは、自主性と主体性を分けて説明しています。


「自主性」は、自ら進んで行うこと。

ただしこの言葉には、大人がやってほしいことを察して進んで行う姿も含まれます。

つまり、言われる前にやる、というのは「自主性」です。


で、一方の主体性は、自分で考え、判断し、決定して行動すること。

工藤さんの定義で大事なのは後半です。

考えた結果「それはやらない」と決めた姿も、主体的な行動のひとつだとしている点です。

この後半が急所です。

管理型の組織で「考えましたが、それはやりません」と上司に言える人が、どれだけいるでしょうか?


評価も最終判断も上にある以上、言えるはずがありません。

つまりその組織では、主体性という言葉の定義そのものが、はじめから成り立っていないのです。


そう考えると、冒頭の調査の見え方も変わってきます。

上司の46.3%が「主体性を感じにくい」と答えていました。

けれど、その人たちが本当に求めているのは、主体性ではなく自主性ではないでしょうか。


言われる前に動いてほしい。

でも、こちらの意に沿わないことを勝手にやられては困る。

それは、主体性ではありません。

上司が「主体性を持て」と願えば願うほど、部下は「主体的に見える行動」を学んでいきます。

問題は、主体性のない部下ではありません。

主体性が育たない仕組みのほうです。


【解決策】禁止令の反対は、命令ではなく許可


では、どうするか。

禁止令の反対は、上手な命令ではありません。

許可です。


考えていいんです。

答えをすぐに渡さず、「あなたならどうする」と返す。
考える機会を奪わなければ、判断力は勝手に育ちます。

やってみてもいい。

「まずやってみよう」の一言で、職場の空気は本当に変わります。

失敗はします。

それでも、何もしなかった失敗より、やってみた失敗のほうが次に使えます。

もちろん成功していい。

部下が自分を追い越すことを、恐れない。
組織が強くなるのは上司が優秀なときではなく、部下が育ったときです。

感じていいんです。

「何か引っかかってる?」と聞ける関係をつくる。
違和感は事故を防ぎ、不満は改善のヒントになります。


あなたが必要です。

感情には情報があります。
「この仕事は、あなただから任せたい」
「ありがとう、助かった」

人は評価されたい以上に、必要とされたいと思っている生き物です。


と、ここまで書いておいて、ちゃぶ台返しなことを言います。

ただし、許可を出せる立場は危うい


許可は、言葉だけでは渡せません。

「考えていいよ」と言った同じ人が、人事評価をつける権限を持っている。

その状態で渡された許可は、部下にとっては新しい命令に聞こえます。

「自分で考えていいよ」は、うっかりすると「自分で考えたことにして、私の望む答えを出してね」という試験になる。


私はこれを、自分がコンサルタント時代にさんざんやってしまった側です。



だから私は、自分の店では許可を出す立場そのものをやめました。

私は、サウナとマッサージを経営してますが、店長を置いていません。

一緒に働く人たちは業務委託で、私は彼女たちをスタッフではなく推しメンと呼んでいます。

評価制度もありません。

指示命令の代わりにあるのは、依頼と信任だけです。


それでも「これ、やってもいいですか」と聞かれることは、あります。

そのとき私は、できるだけこう答えます。


「もちろん。」


たった四文字ですが、この言葉には「あなたを信頼しています」という意味を込めています。

そしてこれを繰り返していると、そのうち聞かれなくなります。

それでいいと思っています。

人は、許可されるから育つのではありません。

許可を取らなくても大丈夫だ、と信頼されたときに、自律し始めるのです。

許可を出す人がいない場所では、そもそも許可が要らなくなる。

これがいちばん確実な方法でした。


【まとめ】指示待ち社員は、生まれつきではありません。


考えるな、行動するな、成功するな、感じるな、重要になるな。

この5つを毎日浴びれば、誰でもそうなります。

そして反対に、
考えていい、やってみていい、成功していい、感じていい、あなたが必要だ。

この5つが揃った場所では、人は命令されなくても動き始めます。

ただ、許可を言葉で配っているうちは、まだ管理の続きです。

本当に効くのは、許可を出す立場をなくしてしまうことでした。

もし部下が指示待ちばかりだとしたら、問い直すべきなのは部下の能力ではないのかもしれません。

自分が毎日出している禁止令と、それを出せてしまう自分の立場のほうです。


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